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彗星世代



 エクスペインの冒険者ギルドには大きく分けて2つの施設がある。


 1つ目は1階の依頼斡旋所。

 悠斗が普段利用しているこの施設は駆け出しからベテランまで多くの冒険者たちが利用している場所である。

 

 2つ目は2階の会議室。

 今回足を踏み入れたこの施設は、緊急クエストの発生時や、高ランク冒険者が利用する場所だった。



「知らなかった……。冒険者ギルドの中にこんな立派な施設があるんですね……」


「そうか。悠斗くんは特別会議室に来るのは初めてだったな」



 中でも2階の特別会議室は、冒険者たちにとって特別な意味を持っていた。


 この部屋に入ることが許されているのは、冒険者たちの中でもシルバーランク以上の資格を持っている者たちに限定されている。


 ギルド屈指のVIPルームというだけあって備え付けの家具は、貴族が使用するものと同ランクの高級品であった。



「おや~。おやおや~! そこにいるのはデカ尻ラッセンちゃんじゃねぇの!」



 黒宝の指輪@レア度 ☆☆☆☆☆☆☆

(他人が所持する《魔眼》スキルの効果を無力化する)



 悠斗がソファのフカフカ具合に驚いていると、全身に包帯が巻かれたミイラのような風貌の男が声をかけていた。


 黒宝装備により情報が伏せられているが、その異様な風貌から只者でないことは分かった。



「もしも~し! ちょっと~! 無視は酷いんじゃない? オイラってばラッセンちゃんのデカ尻の大ファンなんですけど~!」


「ギリィ。アタシの尻を見ながら会話するんじゃない。次に舐めた真似をしてみろ。その異臭を放つ口の中に銃口をぶち込んでやる」


「うひょ~! こえ~! でもまぁ、デカ尻ラッセンちゃんの罵倒はオイラにとっちゃ御褒美なんだけどな!」



 ギリィと呼ばれる謎の男は、口元を緩ませながらも渋々と引き下がる。


 席に着いてからもギリィは、ラッセンに対して下卑た視線を送っていた。



「あの人は?」


「やつの名前は『百面相ギリィ』。冒険者としての実力は確かだが、見ての通りスケベ心丸出しで女性冒険者に対するセクハラが酷い。ギルドからは問題児扱いされている」


「……女性に対するセクハラですか。個人的には1番許せないタイプです。反吐が出ますね」


「…………」



 自分のことを全力で棚に上げる悠斗に対して、ラッセンは冷ややかな視線を送っていた。



「あ、あの! お久しぶりです! ユートさん!」



 ルナ・ホーネック

 種族:ケットシー

 職業:冒険者

 固有能力:隠密


 隠密@レア度 ☆☆☆

(自らの気配を遮断するスキル)



 声のした方に目を向けると、見知った顔がそこにあった。


 猫耳の忍者娘――ルナ・ホーナックは悠斗と同じエクスペインの街に活動拠点を置く冒険者である。

 小柄な女性でありながらも『武神』と称されているルナは、冒険者として目覚ましい実績を上げていた。



「あれ。ちょっと雰囲気が変わったか?」



 以前に見た時と比べると、着ている服の露出度が僅かに上がったような気がした。



「ええ。少しだけ装備を変えてみました。おかしいでしょうか?」


「いや。そんなことないよ。普通に色っぽいと思う」


「色っぽい!? そ、それはラッセン先輩ではなく私に対して言ったのですか!?」


「当たり前だろ……。どうしてそこで間違えるんだよ」


「だだだ、だってその……私そういう風に言われたの初めてで……どういう反応をすれば良いのか分からなくて」



 悠斗に褒められたルナは分かりやすく動揺しているようであった。


 史上最悪のネームドモンスター《不死王タナトス》との戦闘で窮地に陥っているところを助けてもらったルナは、悠斗に対して底知れない恩義を感じていた。


 当初は悠斗のことを気嫌いしていたルナであったが、今では幼馴染のリリナに向けているものと同じくらい悠斗に対して愛情を向けるようになっていた。



「あれれ~? なんだよ。今日はロビンのオッサン来てねぇじゃん」


「知らないのか? 『掃除人ロビン』ならローナス平原に出現したダンジョン攻略クエスト以来、行方不明になったそうだ」


「なんだよそれ~。あのオッサンをイジめてやるのがオレっちの唯一の楽しみだったのに」


「まぁ、そう言うな。元よりアヤツは他人の手柄を横取りすることでランクを上げた男。遅かれ早かれこうなる運命だったのさ」



 ジンバー・ルッカス

 種族:レプラコーン

 職業:冒険者

 固有能力:昆虫操作


 昆虫操作@レア度 ☆☆☆☆☆☆

(昆虫を操るスキル)



 ドルトン・ヒューマッハ

 種族:ハーピィー

 職業:冒険者

 固有能力:重量変化


 重量変化@レア度 ☆☆☆☆☆☆

(物体の重さを変化させるスキル)



 ルナの後に入ってきたのは、やたらと身長差のある冒険者コンビであった。



「あの2人は『蟲使いジンバー』に『鳥人ドルトル』。2人とも悠斗くんより一足早く、シルバーランクに昇進した期待のルーキーだ」


「……なるほど。独特のオーラがありますね」



 どうやらシルバーランクともなると、固有能力を持った冒険者が多くなってくるらしい。


 特に黒宝装備を身に着けたギリィに関しては、どんな能力を持っているのか分からない以上、警戒する必要がありそうだった。



「それにしてもシルバーランクの冒険者っていうのは、それぞれ通り名みたいなものがあるんですね。ルナなんか《武神》とかいう恰好いい名前で呼ばれているみたいだし」


「そ、それを言わないで下さいよ! ユートさんがいる手前で『武神』を名乗るなんて恥ずかしいです……」


「む。もしかしてユートくんは知らないのか? シルバーランクになるとギルドから二つ名がもらえるようになる。キミの場合もギルドカードの裏面に書かれていると思うぞ」


「初耳ですよ!?」



 悠斗はそこで取り出したカードの裏面を注意深く確認してみる。



【彗星のユウト】



 よくよく見ると、カードの隅にはそんな言葉が書かれていた。



「あの……この『彗星のユウト』ってどういう意味なのでしょうか?」


「「…………!?」」



 悠斗の言葉を聞いた次の瞬間。

 ラッセン&ルナの表情に戦慄が走る。



「これは驚いた。ユートくんに対するギルドの期待は、我々が思っている以上のものであったということか」


「凄いです! ユートさん! まさか『彗星』の通り名を与えられるなんて……凄すぎます!」


「いや。だからどういう意味なんですか!?」



 これは後になって知る話になるのだが――。


 エクスペインの冒険者ギルド設立以来、悠斗たちの代の若手冒険者は、かつてないほど粒揃いという評価を受けていた。


 その偶然はおよそ1000年に1度あるかないかの確率なのではないかということで、悠斗たち若手冒険者は何時しか『彗星世代』と呼ばれるようになっていた。


 ギルドが悠斗に『彗星』の通り名を与えたのは、悠斗こそが『彗星世代』の中心人物であると認めたからに他ならなかった。



「失礼いたします」


 エミリア・ガートネット

 種族:ヒューマ

 職業:ギルド職員

 固有能力:破壊神の怪腕



 破壊神の怪腕@レア度 ☆☆☆☆☆☆☆

(左手で触れた物体の魔力を問答無用で打ち消すスキル)



 最後に部屋に入ってきたのは、受付嬢のエミリアであった。


 悠斗と視線が合うとエミリアは、ニコリと愛嬌たっぷりの笑顔を浮かべる。



「驚いた。まさかエミリア嬢が直々に説明にやってくるとはな。これは思っていたよりもハードな仕事になりそうだ」


「エミリアさんのことを知っているんですか?」


「――『狂犬エミリア』。それが冒険者時代の彼女の通り名だよ。今は一線を引いて、ギルドの職員の仕事をしているが、昔の彼女は数多の偉業を達成した冒険者だったらしい」


「さ、流石にそれは何かの間違いだと思いますけど……」



 普段の清楚なイメージがあって、エミリアが『狂犬』と呼ばれている場面を想像することができない。


 保有している固有能力こそ物騒であるが、外見だけで判断すると、エミリアは全ての男の理想を突き込んだかのような淑やかな美少女だった。



「時間になりました。それでは緊急クエストの内容を説明したいと思います。今回の呼びかけに集まって下さった方は、『情報屋ラッセン』・『彗星のユウト』・『百面相ギリィ』・『武神ルナ』・『蟲使いジンバー』・『鳥人ドルトル』。以上、6名で間違いありませんね」



 エミリアはそう前置きすると、今回の招集の理由について説明を始めるのであった。


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