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エピローグ ~ こうして俺は異世界で暮らすことを決めた ~



 チュンチュンチュン。

 耳を澄ませば窓からは、小鳥たちの囀りが聞こえてくる。


 激動の戦いが終わり日常が戻ってきた。

 闘技場での連戦により疲労が蓄積されていたのだろう。


 愛菜との決別が終わってから悠斗はバタリとその場に倒れ込んだ。


 愛菜が元の世界に帰ったことにより――。

 悠斗は憤怒の魔王、サタンを倒した英雄としてロードランド領の人間たちから褒め称えられることになる。


 ギルド局長のオスワンから『王都の凱旋パレードに出席してくれないか?』と打診を受けた悠斗であったが――。

 その提案については謹んで断わりを入れることにした。


 パレードに出席することよりも今は、身近にいる女の子たちとイチャイチャすることを優先したかったからである。


 現代日本から続く妹との因縁に決着がついたことにより、元の世界に対する未練は立ち消えた。

 つまりそれは異世界の女の子たちを好きなだけ愛する資格を得ることが出来たという意味でもある。



「ご主人さまぁ……。んちゅっ……ちゅっ……」



 そういう訳で悠斗はついに朝から晩まで常時『キス』を解禁することにした。


 海外ドラマで家族同士がするライトなものとは訳が違う。

 唾液の交換を目的とした濃厚なものである。



「ズ、ズルイぞ! スピカ殿! 私も主君ともっと接吻を交わしたい……」


「分かった。次はシルフィアの番だな」



 結論から言うと、キスを解禁したのは大正解だったらしい。

 今では朝から女の子たちが悠斗を巡ってキスの順番待ちの行列を作るくらいである。



「ユート! オレの方も……我慢できねぇよ……」


「ふにゅ~。サーニャも! サーニャもお兄ちゃんともっとチューしたいのです!」



 どうやらシルフィアが終わった後は、フォレスティ姉妹の番らしい。



「ご主人さま。リリナさんとサーニャちゃんが終わったら次は私の番ですからね?」


「無限ループかよ……」



 今朝は何ラウンド相手にすれば解放されることになるのだろうか。

 日によっては女の子たちとキスしているだけで午前が過ぎてしまうこともザラにあった。



「……それにしても主君。どうして我々とキスをする気になったのだ? 今までは魔法の訓練と称して夜な夜な卑猥なことをしても……キチンとそこは線引きしていたはずなのだが……」


「う~ん。男としてキチンと責任を取れるようになったからかな? 元の世界に戻るための《帰還の魔石》を妹に対して使っちまったんだ」


「えっ。あのアイテム……使ってしまったのですか? ご主人さまがずっと探していたものだったじゃないですか!?」


「……良かったのか? これでもう……主君が元の世界に戻る手段はなくなってしまったのだろう?」


「これで良かったんだよ。俺にはお前たちがいる。愛する女を残したまま1人で帰れるはずがないだろう」


「ご主人さま……!」


「主君……!」



 周囲にいた少女たちは主人からの頼もしい発言を受けて眼に感動の涙を滲ませる。


 悠斗の放った一言により――。 

 その日のキス大会は一層激しさを増すのであった。



 ~~~~~~~~~~~~ 



 一方その頃。

 トライワイドから地球に逆召喚された愛菜は、以前に住んでいたアパートの中で目を覚ますことになる。



「私は……一体何を……?」



 ここに至るまでの記憶を上手く思い出すことが出来ない。


 何か――。

 何か重要なことが記憶から抜け落ちているかのようであったが、愛菜にはそれが何のか思い出すことは出来なかった。



「これは一体……?」



 そこで愛菜が注目したのは、《隷属契約》のスキルにより手の甲に刻まれた《呪印》である。

 呪印を眺めていた愛菜の脳裏には、忘れていた記憶の一部が蘇る。



「私としたことが……どうしてお兄さまのことを!?」



 愛菜は愕然としていた。


 何故ならば――。

 世界で一番大切にしていたはずの悠斗との記憶を忘却するなど愛菜にとっては、天地が入れ替わることより有りえないことだったからである。



「――――ッ!」



 その時、愛菜の全身に激痛が走る。

 隷属契約によって悠斗が下した命令は、『俺のことは忘れて幸せに生きてくれ』であった。



 この痛みは命令違反によるペナルティによるものである。



 悠斗のことを覚えている間は、この痛みが体を蝕み続けるのであった。



「……クッ」



 少しでも気が抜けば、悠斗に関する記憶が頭の中から全て抜け落ちてしまうかのようであった。


 この記憶だけは――。

 世界で1番大切なこの記憶だけは絶対に忘れるわけにはいかない。



 ビチャリ。

 ビチャリ。ビチャリ。



 愛菜は自らの台所から持ってきた包丁により自らの腹を掻き切った。



「これで……これなら……」



 アパートの壁に自らの血で書いていくのは、悠斗に対する愛の言葉である。




 好き。大好き。お兄さま。大好き。好き。愛している。お兄さま。愛している。好き。大好き。愛している。好き。お兄さま。大好き。好き。好き。大好き。お兄さま。大好き。好き。愛している。お兄さま。愛している。好き。大好き。愛している。好き。お兄さま。大好き。好き。好き。大好き。お兄さま。大好き。好き。愛している。お兄さま。愛している。好き。大好き。愛している。好き。お兄さま。大好き。好き。愛している。好き。好き。好き。愛している。大好きなの。お兄さま。お兄さま。お兄さま。お兄さま。お兄さま。お兄さま。お兄さま。




 言葉を書き綴っていく度、命令違反のペナルティによる痛みが強くなっていくのが分かる。


 しかし、愛菜は止まらなかった。

 痛みが送られてきた分だけ悠斗の存在を感じることが出来る。



(この痛みは……お兄さまが愛菜にくれる『愛の証』です)



 壁の表面が血文字で一杯になった頃には、流石の愛菜もフラフラであった。

 貧血を起こして、思わずアパートの床に倒れ込むことになる。



「……私はお兄さまの思惑には従いません。お兄さまを諦めることをとっくに諦めているのですよ」



 その言葉は愛菜にとっての精一杯の強がりであった。

 不意に愛菜の瞳からは、とめどなく涙が溢れ出る。



「ふぇ……。ふえええええぇぇ」



 その日、愛菜は涙が枯れるまで泣いた。

 大粒の真珠のような涙がポロポロと頬を伝う。



「うぅぅ……。お兄さま……。愛菜は……愛菜はぁ……」



 どんなに泣いたところで手を差し伸べてくれる最愛の人は、もうこの世界にはいない。

 そのことを考えると余計に悲しくなって、涙を止めることができなかった。



 一体どれくらいの間、泣き続けただろうか?



 涙で瞼を赤く腫らした愛菜の意識は、やがて、ゆっくりと闇の中に落ちていく。



 それから。

 愛菜が悠斗のことを思い出すことは2度となかった。




●お知らせ


 これにてスキルテイカーの5章が終了です。

 5章は途中から好き勝手に書き過ぎて申し訳ありません。


 6章からは暫く平常運転のスキルテイカーに戻っていく予定です。


 愛菜がその後、どうなったのか? が気になる人は、

 小説5巻の書き下ろし短編『愛菜のその後』を読んで頂ければと思います。

 

 もはや、どれくらいいるか分からないのですが、愛菜好きだった人は必見です。


 それでは次話より6章です。

 

 評価/ブクマ入れて頂いた方はありがとうございます。


 今後とも応援よろしくお願いします。

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●ウェブトゥーン化のお知らせ



異世界支配のスキルテイカーがウェブトゥーンで復活しました!! こちらもよろしくお願いします!


異世界支配のスキルテイカー 

https://manga.line.me/book/viewer?id=B00165415107#/page=1

― 新着の感想 ―
[一言] 愛菜のその後を、番外編で記載してください。
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