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忍び寄る影



 一方その頃。

 時刻は悠斗が武術トーナメントの予選を突破してから半日程後に進むことになる。


 ここはエクスペインの街から西方に10キロほど離れた街道である。

 この街道はゴブリン・スライムと言った低級モンスターしか出現しないため、駆け出し冒険者にとっては格好の狩場となっていた。


 しかし、今現在。

 この街道には平和なエリアには相応しくない2人の魔王の姿があった。



「おい。レヴィア。本当にここで待っていればマモンを殺った『怪物』っちゅーのは来るんだろうな?」



 男の名前はベルフェゴール。

 怠惰の魔王の地位に付く七つの大罪の中心人物の1人である。


 何事に対しても無気力なのが珠に傷であるが―—。 

 引き受けた依頼に関しては絶対に失敗することはない。


 その能力に関してはルシファーから絶大な信頼を得ていた。



「当然でしょ。私の能力を疑う気? マモンを殺したやつは凄いスピードでエクスペインの街に向かっているわ。まるで何か『好物の獲物』を見つけた獣のようにね」



 女の名前はレヴィアタン。

 七つの大罪の中では決して武闘派タイプではないが、その能力の特性から情報収集の任務を任されることが多かった。



「私の固有能力、《運命の出会スナイプ・いは恣意的にストーキング》に間違いはないわ。忌々しい赤い糸は直ぐそこまで来ているはずよ」


「ぶはは。相変わらず気持ちの悪い能力だな。まぁ、今回ばかりはお前の能力には助けられたわ」



運命の出会スナイプ・いは恣意的にストーキング レア度@詳細不明

(対象の肉体の一部を体内に取り入れることで運命の赤い糸を紡ぐ能力)



 四獣の塔で発見されたマモンの死体は、何者かに食い散らかされた跡のように白骨化していた。


 レヴィアタンは遺体から何者かの『唾液』を体内に取り入れることで、マモンを殺した犯人と赤い糸で繋がることに成功していたのであった。



「ん。なんだ? 急に降り出してきたな……」



 突如として降り始めた雨は嘘のように勢いを増して行く。


 ゴロゴロッ。

 バリバリバリバリッ。


 激しい落雷が2人の近く降りかかる。 


 それはまるで――これから起こり得る不吉を表しているかのようであった。

 やがて赤い糸の先は透明な『何か』に繋がれたまま2人の前に現れる。



「気をつけて!? そこに……その地面の中に何かいるわ!?」



 最初に異変に気付いたのはレヴィアタンであった。



「どうした? 何があった!?」


「分からない。急に赤い糸が切れたの。こんなことは初めてよ……! 固有能力が全く発動しなくなったの!」


「なんだと……?」



 ベルフェゴールは試しに固有能力の発動を試みる。



 ――が、やはり同じように全く発動する気配がない。



 まるで何者かに能力を吸い取られているかのようであった。



 完全無敵の搾精パーフェクト・ドレイン レア度@詳細不明

(視界に入った生物の固有能力を無効化する力)



 今回の不可解な出来事が、近衛愛菜という少女が保有する《完全無敵の搾精》という能力にあることは2人とって知る由もないことであった。



「私は槍……砥がれた槍」



 何者かの声が聞こえたかと思うと、突如としてベルフェゴールの脇腹に鋭い痛みが走った。



「……グハッ!」


「ベルフェゴール!?」



 内臓の一部を痛めたのだろう。

 ベルフェゴールの口からは鮮血が湧き上がる。 



(バカな……! こんな……こんな小娘が……マモンの死肉を貪ったというのか……!?)



 意外というより他はなかった。


 死体の状況からマモンを殺した犯人を『怪物』と断定していたのだが――。

 そこにいたのは黒髪黒眼をした――外見だけで判断するなら見目麗しい美少女であったからである。


 異世界に召喚された直後の愛菜は悠斗を失った悲しみから食を断ち、骨と皮だけが印象に残るみすぼらしい姿をしていた。


 だがしかし。

 四獣の塔で殺した魔族の死肉を貪り食らった愛菜は、すっかりと栄養状態を回復させていたのである。



「驚きました。殺すつもりで攻撃をしたはずなのですが……」



 体を半分だけ影の中に隠した愛菜はポツリとそんな言葉を口にする。

 愛菜の取得している《心葬流》という武術は、現代日本において《近衛流體術》と双璧を成すかのように稀有な性質を有するものであった。



 心葬流の性質を一言で表現するのならば――『思い込み』の武術である。



 愛菜は自分を影であると思い込むことによって、周囲から身を隠すことを可能にしていた。



「ふんっ。悪いがオレの麦酒ビール腹は、嬢ちゃんのような小娘に突破されるほど柔じゃないんでね」



 その言葉はベルフェゴールにとっての精一杯の強がりであった。


 四獣たちが手も足も出なかったのは頷ける。

 固有能力に頼った戦い方しか出来ない四獣では、この少女の相手は務まらないだろう。


 

「レヴィア。今直ぐオレを置いて逃げろ。ルシファーの旦那に今回のことを伝えるんだ」


「え……?」


「こいつは……この怪物はヤバイ……! 七つの大罪の総力を挙げて戦わないと相手にならん」


「わ、分かった! 絶対に伝えるわ! だからアンタも……絶対に生きて帰りなさいよ!」



 ベルフェゴールの忠告を受けたレヴィアタンは、背中を向けて全速力で愛菜の元から離れていく。



「なるほど。自分を犠牲にして女性を先に逃がすとは……見上げた人格者ですね。またまた驚きました」



 これまでに出会った雑魚たちとは明らかに格が違う。

 ベルフェゴールの能力を目にした愛菜は素直に感心していた。



「良いでしょう。貴方に敬意を表して……私の最大奥義を見せてあげます」



 愛菜の中には一度殺意を向けてきた相手を『見逃す』という選択肢はなかった。

 戦闘において『出来ることなら殺したくない』と考える悠斗とは違って、愛菜はどこまでも非情な選択を取ることが出来るのである。

 


「私はお兄さま……親愛なるお兄さま……」


「こ、こいつは……!?」



 次にベルフェゴールが見た驚愕の光景は、彼を更なる絶望に叩き落とすのであった。



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