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VS グレータデーモン



(おー。今度のやつは少しはまともそうだな)


 グレータデーモンの姿を目の当たりにした悠斗はそんな感想を抱いた。


 体長3メートルを超える巨躯を誇るグレータデーモンからは強者のオーラが感じられる。

 固有能力を3つ持っているのは悠斗にとって何かと都合が良い。


 この魔族を倒せば《能力略奪》が発動して、相手の固有能力を1つ奪うことが出来るだろう。



「おいおい。あれってグレータデーモンさんじゃないか?」


「嘘だろ……!? どうしてそんなビッグネームがこんな所に……」



 3つの固有能力を巧みに操り、王国の騎士団100人を無傷のまま虐殺したこともあるグレータデーモンの名は魔族たちの間でも広く知られているものであった。



「小僧。悪いが俺は出し惜しみするのが嫌いでな。最初から全力でいかせてもらう!」



 グレータデーモンはそう前置きすると、自身の固有能力である《巨大化》を発動。

 

 直後。

 グレータデーモンの体はみるみると膨張して10メートルにも達するようになる。



「死にさらせぇっ!」



 更に自身の固有能力である《魔力圧縮》と《身体強化》を同時に発動させたグレータデーモンは悠斗の体を踏みつける。



「うぐっ……」



 攻撃を正面から受け止めた悠斗の体は、ジリジリと地面にめり込んで行くことになる。


 グレータデーモンの強さは決して固有能力の数だけではない。

 真に恐るべきは、保有する3つの固有能力が全て直接的な攻撃能力を上げる方向に統一されていることにあるのあった。



「主君!」



 今にも踏み潰されそうになっている主人の姿を目の当たりにしたシルフィアは、悠斗の元に駆け付けようとする。



「ダメだ! シルフィアくん! 今出て行ったらキミまで命を落とすことになるのだぞ!」


「~~~~っ!」



 ラッセンは決してシルフィアの力を過小評価してはいない。


 彼女は強い。


 だがしかし。

 あくまでそれは人間レベルでの話である。


 どんなに修行を積み重ねたところで――。

 今回のような人外レベルの戦闘においては、シルフィアが無力であることをラッセンは悟っていたのであった。



「主君! 生きてくれ!」



 ラッセンの忠告を受けたシルフィアは、悔しさで唇を噛み締めながらも悠斗を応援することにした。

 彼女の声援はグレータデーモンの足元にいる悠斗の耳にも確かに届くことになる。



(可愛い女の子に心配されて負けるわけにはいかないよな!)



 悠斗はそこで自身の切り札である《鬼拳》を発動。


 連戦のことを考えると、《鬼拳》を発動しないで勝利するのが最善であったのだが――。

 そこまで考えていられるだけの余裕はなかった。



「な、なにッ!? 押し返されただと……!?」



 その直後。

 悠斗の怪力によってグレータデーモンの体は僅かにだが、押し戻されることになった。


 グレータデーモンとしては踏み潰したはずのアリが自分の体を持ち上げられている気分である。



「クソッ! くたばり損ないが!」



 グレータデーモンは《魔力圧縮》のスキルで足元に力を入れると、悠斗の体をグリグリと踏みつける。


 だがしかし。

 正面からの力比べでは《鬼拳》のギアを最大まで上げた悠斗には敵わなかった。



「おりゃぁぁぁ!」



 悠斗は体長10メートルを超えるグレーターデーモンの体を持ち上げて宙に浮かせると、すかさず反撃を開始する。



《破鬼》。



 鬼拳により身体能力を上げた状態で破拳を打つというこの技は、単純な威力だけで考えれば悠斗の所持する技のだけで最大と言っても過言ではないものである。


 悠斗は高速で拳を打ち出しながらも、インパクトの瞬間に腕全体に対してスクリューのように回転させて、グレータデーモンの体内にその衝撃を拡散させる。



「ぐばあああああああああああああああっ!」



 どうやら今回の相手に《破鬼》はオーバーキル気味だったらしい。

 悠斗の《破鬼》を受けたグレータデーモンは、ミキサーにかけられたかのようにその体を肉片に変えていく。



「うわあああああああああ!」


「なんだよあの化物……話が違うじゃねーか!」


 

 悠斗の戦いを目の当たりにした魔族たちは、そのあまりに理不尽な強さに戦慄していた。


 自分たち下級魔族では100人、1000人が束になったところで絶対に勝つことが出来はしない。


 絶望的な戦力差を悟った魔族たちは、蜘蛛の子を散らすようにして逃げだしていく。



「さぁ……。残るのはお前1人のようだな……」


「す、すまなかった! 俺っちの負けだ! だから命だけは……命だけは助けくれ!」



 この状況では逆転の手段がないことを悟ったアマルダは、頭を地面にこすりつけて土下座をする。



「安心しろ。命まで取りはしねーよ。ただ約束は守ってもらうぜ」


「ああ。何でも言ってくれ。俺が知っていることなら全て話す!」


「お前はマモンという魔族を知らないか? 故あって俺はマモンっていうやつを探している。居場所を知っているなら教えて欲しい」



 悠斗の質問を受けたアマルダは頭を悩ませる。


 アマルダはマモンの居場所を知っていた。

 

 だがしかし。

 仮にマモンの情報を人間に売ったことがバレることになれば自分の命はない。


 そう判断したアマルダは、悠斗に対して嘘を吐くことにした。



「マモン? だ、誰だそいつは……。俺はそんな名前の魔族は知らないぜ。他を当たってくれよ」


「…………」



 返事を聞いた悠斗はガックリと肩を落とす。


 アマルダが嘘を吐いている可能性も考慮したが、結局のところ悠斗にはその真偽を確かめる術がない。


 かと言って戦意のない相手に拷問をかけるような行為は、悠斗の美学に反するものであった。



「その男は嘘をついている」



 途方に暮れる悠斗を前にして、ラッセンはそんな言葉を口にする。



「テメェ! 女! コラ! 何を適当なことを言ってやがる!」


「ご愁傷さま。アタシに嘘は通用しない。アタシの《読心》のスキルがあれば貴様の考えていることなどお見通しだ」



 読心@レア度 ☆☆☆☆☆☆

(対象の心の状態を視覚で捉えることを可能にするスキル)



 他人の嘘を見破る《読心》の固有能力の存在は、アマルダも知っていたことであった。


 自らの命の危機を感じ取ったアマルダの表情は蒼白いものになっていく。



「そうか。お前……俺に嘘を吐いていたのか」


「ははは……。嫌だなぁ。今のは俺っちの小粋なジョークですよ……ぎゃばああああああっ!」



 このまま許すのは相手を調子付けせてしまうだけだろう。

 そう判断した悠斗は、アマルダの鼻ピアスを引き千切ることにした。



「次にテキトーなこと言ったらお前の体についているピアスを全て千切るから覚悟しておけよ」


「…………」



 次に嘘を吐いたことがバレると命が危ない。

 そう判断したアマルダは、自らの上司であるマモンの居場所を洗いざらい喋るのであった。





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