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VS レジェンドブラッド1



 一方、同刻。

 ダンジョンの地下6Fで勃発した魔王と勇者の戦いは、ワンサイドゲームと呼ぶに相応しい展開を迎えていた。



「ハハッ! 意外と呆気ないもんだったなぁ。暴食の魔王と言ってもこんなものか。500年前の俺たちはこんなやつらに支配される立場だったのか。情けねえ」



 今現在。

 ベルゼバブはミカエルの作り出した巨大な氷の柱によって磔にされていた。


 氷の枷によって手足を封じられたベルゼバブは、身動きを取ることができないでいた。

 自らの体温を根こそぎ奪われた少女は、徐々に意識を朦朧とさせていく。


「ラヴ! アタシのことを助けなさいよ! お願いだから!」


「…………」


 ベルゼバブの必死の呼び出しにもかかわらず――。

 魔神ラヴは沈黙を貫いていた。


「ククッ。固有能力を使おうとしても無駄だぜ。言ったろ? この部屋にはお前の能力を封じ込める結界を設置しているって」


「……ッ」


 結界とは魔法石に特殊な刻印を施すことで作り出すことが出来るトラップのようなものである。


 時間さえかければミカエルにとって相手の固有能力を封じ込める結界を作るのは造作もないことであった。


 魔族を総べる長である『魔王』という存在は、強力な固有能力を所持しているケースが多い。


 勇者の子孫であるミカエルは、魔王を討伐するために必要な結界を張るための技術を幼い頃から学んできたのであった。


 ミカエルが戦いの場に選んだ今回のダンジョンの一室を選んだ理由は2つある。


 1つ、この部屋が相手の固有能力を封じ込める結界を設置するのに手頃な広さであったこと。


 2つ、ダンジョンの深部ならば他人の目を気にすることなく全力で魔法を放つことができるからだ。



「そんじゃま。一思いに殺っちまうか。それが俺から愛しいキミに出来る最大限の優しさってやつだ」



 次の瞬間。

 ミカエルが放ったのは水属性魔法の中でも最上級の取得難易度を誇るとされている《ウォーターストーム》という魔法であった。


 水属性の基本魔法ウォーターの強化版とも言えるこの魔法は、一撃で巨竜をも屠る殺傷能力を有していた。


 ミカエルの杖から召喚された巨大な氷の刃がベルゼバブの体に向けて飛来する。


 その質量は優に10トンにも達しようかというサイズである。

 これほどの一撃が直撃すれば、魔族であっても即死は間逃れない。


「ラヴ! どうして!? どうして出てきてくれないのよ!」


「…………」


 ベルゼバブの敗因を挙げるのならば、彼女が生まれながらにして強力過ぎる固有能力を持ってしまったことにあった。


 彼女は生まれてから只の1度も戦闘の訓練を行ったことなどなかった。


 何故ならば――。

 相手がどんな手練れであっても、《悪食》のスキルを使用すれば、紙屑のように蹴散らすことができたからだ。


 固有能力を封じられたベルゼバブの戦闘能力は、他の魔族と比べても大きく劣るものである。


 故に彼女は、命の危機に瀕しても呼び出すことのできない魔神の力に頼ることしかできなかった。



(どうして! なんで!? アタシ……こんなところで死んじゃうの!?)



 自らの敗北を悟ったベルゼバブが、そっと瞼を閉じようとした瞬間であった。


 ベルゼバブの背後から『野球ボール』サイズの氷塊がジャイロ回転で飛来する。


 氷塊は勢い良くミカエルの作り出した氷の刃にぶつかり、強引にその軌道を捻じ曲げる。

 

 直後。

 質量10トンを超える氷の刃は、大きく軌道をズラしてベルゼバブの体の横を通り抜けた。



「なんだ……? いま何が起こった?」



 氷の刃の軌道が逸れた原因は、明らかに外部から飛んできた攻撃によるものだ。

 

 けれども、腑に落ちない。

 相手の放った魔法は、ミカエルのウォーターストームで作った氷の刃と比べて一万分の一にも満たないサイズのものである。


 一体どれほどパワーを込めて魔法を放てば、自分の魔法の軌道をズラすことが出来るというのだろうか?


 ミカエルは2体目の魔王の出現を警戒しながらも、魔法が飛んできた方角に目を向ける。



「よぉ。なんか楽しそうなことをしているじゃねーか。俺も交ぜてくれよ」



 けれども、ミカエルの予想に反して――。

 彼の視界に飛び込んできたのは、不敵に笑う1人の少年の姿であった。






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