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意外な抜け道



 ダンジョンの地下2Fに足を進めた悠斗たちは、次なる地下階段を探していた。



「ユート君。ストップだ」



 悠斗はラッセンの言葉に従い歩みを止める。

 主人の後ろを歩いていたスピカとシルフィアもそれに倣って動きを止めた。


「この先にはおそらくトラップが仕掛けられている。あそこの床のタイルを見てみろ。僅かにだが、周囲のものと色合いが違うだろう」


「……本当だ。あそこだけ新しい感じがしますね」


 ラッセンはそこでバッグの中から鉄鉤の括りつけられた縄を取り出すと、色の違う床に向かって勢い良くそれを投げつける。


 その直後。

 ぶつかった鉄鉤に反応して、床にポッカリと穴が開いた。


「やはり落とし穴があったか。やれやれ。アタシが付いてきて本当に良かったよ」


「……ありがとうございます。ラッセンさんがいてくれて助かりましたよ」


「ふふふ。やはりこういう時にものを言うのは経験だな。気をつけろよ。ユートくん。この先には同じようなトラップが幾つもあるみたいだからな」


 先輩冒険者としての威厳を取り戻すことが出来たのか、ラッセンは得意顔であった。


「あ! 良いこと閃きました! あの落とし穴の中に入れば、階段を使わないでも下の階に行けるんじゃないでしょうか?」


 悠斗の発言を聞いたラッセンはジト目になる。


「……もしかしてキミはアホなのか? ダンジョンの落とし穴がそう都合よく下の階に繋がっているはずがないだろう」


「そうですか。なら床の壁を拳でぶち破って、下の階に移動するっていうアイデアはどうですか?」



「何を無茶なことを。そんなバカなことが出来るわけ……えええええぇぇぇ!?」



 バキリッという凄まじい音が響いたかと思うと、悠斗の拳はダンジョンの床を粉々に砕き大きな穴を作っていた。


 ラッセンは自らの眼を疑った。


 実を言うと、ダンジョンの壁を壊して探索する実験は、以前から国が総力を挙げて取り組んできた課題でもあったのだ。


 けれども。

 ダンジョンを構成する物質はその難易度に応じて、強力な硬度と再生力を有しており、労力に見合った成果を上げることは叶わなかった。


 先程のサラマンダーとの戦いからも窺える。

 悠斗の戦闘能力はラッセンの眼から見て、常識の範囲を逸脱した規格外のものであった。


「……ま、まぁ、古典的ではあるが、悪くはない手段だな。アタシも今しがたそれを試そうと思っていたところだ」


 額から汗を流しながらもラッセンは頷く。

 せっかく先輩気分を浸っていたのに、台無しにされた気分であった。



「えーっと。この床、放っておくと、どんどん再生して行くみたいなんですけど。ボーッとしていると先に行きますよ?」



 ポッカリと開いた床の穴から顔を出して悠斗は言う。



「ま、待つのだ! アタシを置いてかないでくれたまえっ! 置いてかないでくれたまえ! ユートくんっ!?」



 ここで悠斗の姿を見失ってしまうと、最悪の場合は命を落としかねない。


 そう判断したラッセンは、恥を忍んで悠斗たちの後を追う。


 半ば裏ワザとも呼べる手段を得た悠斗は、驚異的なスピードでダンジョンの深部に進んで行くのであった。



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