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勘違い



 サラマンダーを倒した悠斗は、自らのステータスを確認していた。



 近衛悠斗

 固有能力: 能力略奪 隷属契約 魔眼 透過 警鐘 成長促進

 魔法  : 火魔法 LV4(12/40)

       水魔法 LV6(10/60)

       風魔法 LV5(4/50)

       聖魔法 LV2(5/20)

       呪魔法 LV3(12/30)

 特性  : 火耐性 LV3(19/30)

       水耐性 LV3(0/30)

       風耐性 LV4(6/40)



 火魔法の熟練度が一気に20ポイントも上昇している。

 脅威レベルが24の魔物ともなると、獲得できるスキルのポイントが桁違いになっているようだ。


「さて。ユートくん。まずは我々が置かれている状況を整理してみようか」


 先輩冒険者に相応しい落ち着いた口調でラッセンは続ける。


「まず、我々が入ったダンジョンについてだが、冒険者ギルドでは難易度はE1。つまりは下から2番目であるという説明を受けたことを覚えているね?」


「はい。そういう風に聞いていました」


「ダンジョンの難易度はその建物の大きさに比例して上がって行くとされている。今回ローナス平原に出現したダンジョンは、比較的、小さな規模なものだったからギルドの査定も低かったのだろう。……ところが、あそこを見たまえ」


 ラッセンが指をさす方向には、地下に続く階段があった。


「あれ。このダンジョンって地下に降りて行くタイプのものだったんですね。俺はてっきり登っていく感じのものだと思っていましたよ」


「……ああ。ここに我々の誤算があった。つまりアタシの推測はこうだ。我々が外側から見ていたものは、実はピラミッド型の建物のほんの先っぽの部分に過ぎなかったのだろう。

 本体の大部分は地中の深くに埋まっていたのだとすると、今回の不可解な現象についても色々と説明が付く」


「つまりギルド側がダンジョンの難易度を計り間違えたいたのですか?」


「そういうことになる。アタシの見たところによると、今回のダンジョンの難易度はB2からB1クラスはある。本来ならばゴールドランク、プラチナランクの冒険者が束になってようやくクリアできるかという難易度のものだ」


「…………」


 入口で大量の死人を発見したときから何かがおかしいと思っていた。


 ラッセンの言う通り。

 ダンジョンの難易度がギルド側が提示したものと比較して格段に高かったとすれば、これほどの死者が出ることにも説明がつく。


「……しかし、ギルドが難易度を計り間違えるなんてことが有り得るのですか? 少し調べれば直ぐに分かると思うのですが」


「滅多なことでは起こらないな。通常であればギルドの担当者が中に入って調査するのが規則とされている。

 けれども、我々の業界では、有り得ないということは有り得ないのだよ。何処の組織にも仕事で手を抜きたがる輩というものはいるものさ」


「…………」


 ラッセンの言葉からは、これまで彼女が経験してきた冒険者という仕事の苦労が甲斐見えた。



「さて。ここまで説明したところで我々には2つの選択肢がある。ここに止まって助けが来るのを待つか、先に進むかだ。

 幸いなことにこのフロアにいた魔物たちの殲滅は既に終わっている。この階で待機していれば、暫くの間は身の安全を確保できるだろう」


「……仮に待ったとして、助けに来るまでにかかる時間はどれくらいですか?」


「これはアタシの推測になるが……。おそらく1週間か、それ以上の時間は要するだろうな。

 不幸なことに今回のダンジョンには、入口閉鎖トラップが仕掛けられている。我々には、このダンジョンのガーディアンを討伐する以外に外に出る手段がない。中の危機が外に伝わるまでには相当な時間がかかるだろう」


「なるほど」


 そこまで聞いたところで悠斗の中で答えは固まっていた。


 悠斗にとって今回のクエストは、元の世界に戻るための情報を得るための最大のチャンスと言っても過言ではないものである。


 従って、難易度が想定していたものと違っていたとしてもやることは変わらない。


「それなら俺は先に進むことにしますよ。そのガーディアンってやつを倒せば、外にも出れて、クエスト報酬も貰える。一石二鳥じゃないですか」


「……はい? いや、しかしだな!」


 悠斗の脳天気な発言を受けて、ラッセンは困惑していた。


 普通に考えれば此処は助けが来るのを待つのが、最善の策であると言えた。


 今回のクエストを受諾する際に冒険者ギルドから受け取ったアイテムの中には、簡易的な寝具や携帯食料などが含まれている。


 食事の配分を考えれば、1週間くらいの滞在は不可能ではない。



「……キミたちはそれでも構わないのか? 最悪の場合は命を落とすことになるんだぞ」


 

 そこでラッセンは、悠斗の後ろにいたスピカとシルフィアにも意見を尋ねることにした。


「えーっと。もちろん私はそのつもりでいました」


「愚問だな。主君の無理に付き合わされることは何時ものことだ」


 ラッセンの保有する固有能力《読心》は、対象の心の状態を視覚で捉えることを可能にするスキルである。


 スピカとシルフィアの心からは動揺の色が視られない。

 主人に全幅の信頼を寄せ、運命を共にすることを覚悟した様子であった。



(……なるほど。彼はそれほどまでに信頼の置ける人物なのか)



 ラッセンは暫く何事かを考えていたかと思うと、やがて、何かを決意したような眼差しで。


「……よし。そういうことならアタシもユートくんに付いていくことにしよう」


「その……大丈夫ですか? 無理に俺に付き合わなくても良いんですよ」


「……勘違いするな。こういう不測の事態に陥った時は、バラバラに行動する方が危険なのだ。アタシはアタシの身の安全を守るためにキミについて行くことを決めたに過ぎない」


「分かりました。そういうことでしたら、よろしくお願いします」


 なんだか言葉にトゲが含まれているのが気になるが――。

 そこは彼女の照れ隠しであると信じることにしよう。

 

 こうして新しい仲間に加えた悠斗は、ダンジョンの地下2階へと歩みを進めるのであった。




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