外に出てみました。
じいさんが去ってから俺は早速勇者を見物しにいこうと腰を上げた。
「しかし…現実の勇者ってどんなのだ?」
ゲームの影響か、映画の影響かは謎だが俺の中で勇者はでかい剣を背中に背負ってごつい鎧を着てていかつい男。
そんなイメージだ。
だがしかし、イメージに関して言うならば俺自身…つまり「村人A」の服装だってこんな現代的なモノではないことは確かだ。
「ま、見れば分かるか〜」
ドアの取っ手を掴んで押す。
当然だが目の前には外の風景が広がっていた。
だがしかし、電線や電信柱、コンクリートの家なんてものは見当たらない。
あるのは真っ青な空と土と、木で出来たどこか暖かな家のみ。
あとは村人達。
「へー…」
キョロキョロと辺りを見渡せば、色々な人がいるのが分かる。
例えば、パンを籠に入れて優雅に歩くご夫婦や、大根を掲げて大声を上げる男性、走り回るくそガ…子供達。
なるほど、ここだけ見れば「RPGの最初の街」っていう感じだ。
だが、それらに共通しているのは彼らは全員「現代的」服装なこと。
「まぁ、俺も他人のこと言えないか。」
誰か適当な人でも捕まえて「勇者様のご自宅」の場所でも聞かねばならないな。
「ん? 見ない顔だなぁ?」
そんな事を考えている時、見知らぬ(まぁ当然か。)青年が話し掛けて来た。
「あ! もしかして、チキチキ爺が言ってた<新入り>ってお前だな?」
ようこそ! 歓迎するぜ? と言いながら見知らぬ(馴れ馴れしい)青年は嬉しそうに握手してきた。
「そのチキ爺ってのが誰か知らないけどよ、お前誰?」
と聞くと青年は目を丸くして、ははっと笑いだした。
「お前面白いな! 気に入ったぜ! 俺は商人の息子A! 普通はここまでしか名乗ったらいけねーんだけど、お前面白いし、みんなには内緒にしてな? 俺の名前は[佐井 翔]。お前は?」
「…、俺は…村人A。名前…」
「あ? 信用出来ないなら、別にそこまででいいぜ? 俺が気に入っただけだしな!」
カラカラと笑って商人の息子Aは俺の肩をバシバシ叩いた。
「何か困った事とか分からない事あったら俺に聞けよ! 家も実はご近所だしな!」
「あ、あぁ。助かるよ。あー…それで、」
何て呼べばいいのか悩んでいると商人の息子Aは、それに気付いたのか、
「あぁ、表通り…つまりココとか人がいる所では[商人の息子]、いない所だったら[翔]って呼んでくれ!」
「じゃあ…[商人の息子]さん、勇者様の家とか分かる?」
「勇者? あぁ、ジョーカーか? あいつの家なんか行ってどーすんの?」
すごく不思議だと言わんばかりに首を傾けられてしまったが、俺には特にする事もない。
「別に? あ、[商人の息子]さんさ、今暇なら案内してくれないか? この世界について教えてくれよ。」
と提案すれば[商人の息子A]はパアッと表情を輝かせ、任せろ! と意気揚々と答え、
「こっちだ! 着いて来いよ、[村人A]!」
と先を歩き始めた。
奴…いや、彼が発した[俺の名前]に若干…いや、大分違和感を感じたが知らぬフリをして彼の後に続いた。
読んでいただきありがとうございました(^ω^)
次回は勇者に会わせて、この世界について書こうと思ってます!
またお越し下さると嬉しいです!
ては、see you again!