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俺の役柄は……村人A!?


朝、目が覚めたら猫耳が生えていました。 








なんて、面白くて愉快でまさに今自分が求めている非現実はそうそう起こるものじゃない。 


まぁ、実際「人体に猫耳」なんて萌え要素が現実になるのなら俺なんかじゃなく、絶世の美女、もしくは超絶可愛い女の子がいい。 

俺個人の意見とすると、断然後者。 



まぁ、そんな現実逃避をしているのにはちゃんと訳がある。 




顔に刺青の男とモヒカン腕刺青男に絶賛からまれているからである。 



はい、ここテストに出ますよー。 



「おい、てめぇ聞こえてんのか、あぁん!?」


「あり金出せって言ってんだろが、あぁん!?」










ああ、若干古いタイプの…それでいてありきたりな脅しだぁ。 


そんなこと言ったってお兄さん方、有り金は全部出したでしょーが。 



「で、ですから…そ、それで全部なんで」


す、と言う前にモヒカン君が「あぁん!?」と遮る。 


「てめ、五円だぞ、ご・え・ん!!」


「ガキか、これじゃ五円チョコだって買えねぇーよ!」



五円チョコ、ひとつ十円。 

「で、でも本当に…」



ほら、五円だって良いところはあるんですよー。 


五円、ごえん、ご縁。 


「札出せ、札!」


「諭吉だ! いや、野口でいいから出せや、ごらぁ!」 


あ。 

ちょっと譲歩してくれた。 譲歩ついでにどこかに行ってくれないかな。 


モヒカンが俺に、いよいよなぐりかかろうとした時に事件は起きた。 







ーー俺の下にあった地面が消えた。 


其処からのことは、本当に感覚しか覚えていない。

敢えて記すとするなら、


まっ逆さまに落ちていく感覚。 

空間が歪んで安定感もなくなる。 

おれは今、頭が下なのか、足が下なのか。

それすら分からなくなる空間。 

そんな感じかな。


そして。


ーーおれは、そのまま意識を失った。




(今からして思えば、あれは所謂「ワープ」というものに限りなく近い何かだったんじゃないだろうか。<俺日記第一巻:25ページより抜粋>) 








目が覚め時、俺はベッドで眠っていた。 

天井は木製で、木目が目に優しい。 

日差しも差し込み、いい感じの目覚め… 



「ッ!?」


いやいやいやいや! 

何優雅に目覚めてるんだ、俺!! 

さっきの空間が捻れて自分ゆら歪んでいるような気にさせた感覚。 

確かに残るそれは、ユメというには、あまりにー 


「…くそ…。」


あまりにリアルだった。 

とにかく俺の置かれている状況を把握せねば。

あんな不思議体験、普通でないことは確かだ。

それか夢。

俺はベッドから起き上がり、とりあえず部屋を見渡す。 

この時点で分かった事は2つある。 

ひとつは悪い方で、ひとつは良い方だ。 


俺は良い方から言う、若しくは確かめる質なので良い方から確認しようかな。 


良い方:さっきのお兄さん方の家ではない。 


悪い方:俺の家、知人の家ではない。 



というか。 


「日本…じゃない?」


暖炉があって、木の机があって、木のイスがあって…。 

あぁ、昔見た事ある気が… 

「あぁ、アルプスの…」


は…ハイジだったか。 

そう! 

まさにあの家にそっくりだ。 

しかし。 

自分がいるベッドも、また布団も、ハイジの家にはなかった気がする。 



じゃあ、一体…。 


「目覚めたかの。お若いの。」


老人の声。 

声の先に視線を移すと老人は男性であることがはっきり分かった。 

長くて白い髭が顔を覆うように生えていたからだ。 

おいおい。 

何年剃ってないんだ、じぃさん。 



「もうかれこれ…50年くらいかのう。」


「ッ心を読むな!」


じぃさんは「ほっほっほっ」と軽く笑ってから俺に話しかけてきた。 


「お主、名はなんという?」


「お、おれ? ……じぃさん、疑って悪いけど…じぃさんの素性も知らずにひょいひょい教えられねぇよ。 個人情報保護ってやつさ。」


「わしか。わしの名はダッド。村人Gじゃ。」



… 


…… 


……… 


「む、村人G? 」 


「あぁ、村人Gじゃ。 ダッドの名はほぼ使わん。 使えんわい。」 


「え、つ、使えない? なんで…」 



「わしの素性などこの程度。 お主の素性を聞かせてくれぬか?」 


「俺の素性? 名前…ってことか? 」 


じぃさんは首を縦にふり肯定の意を示す。 


「名前は、宮村 健吾。 公立高校に通ってる。 あとは…高2だってことくらいかな。」 


「相分かった。 主は村人Aじゃな?」 


ん? 


「いやいやいやいや! じぃさん話し聞いてたか!? み・や・む・ら! 俺の名前は村人Aじゃないし! だいたい、」 


そのあとに続くはずの突っ込みは残念ながら口から出る事なく喉のあたりで消滅した。 

何故なら、 



何故なら、じぃさんの頭の上にテロップが見えたから。 


「え、ちょ、ま、えぇ…!?」


現代人なら誰もがゲームで見た事があるアレが生身の人間の真上でチカチカ光っているのだ。 



(テロップ:要するに、RPGで「どく」とか「名前」とか書いてある部分のこと。〈俺的辞書,258ページ〉)



よくよく見れば、じぃさんのテロップにはHpや特性、名前に、特技、独身(恋人募集中)の文字が書いてある。 

しかもむだにファミコン仕様。 

全てカタカナで書かれていて読みにくい。 


「村人A、どうした。若さの秘訣でも知りたいのか。」


「いや、俺まだわけぇし。」


落ち着け、落ち着け俺!


突っ込みたいことはいっぱいあるが、とりあえず落ち着け! 


一番優先すべき疑問! 


それは! 


「ここは、日本…なのか?」


そこが一番重要だ。 

テロップとか、村人AとかGとか、なんで名前使えないとか、いろいろ言いたい事はあるけれど、今後の自分にとっても最も重要視すべきことだ。


「日本? あぁ、そういえばリアルワールドにそんな地名もあったのう。 残念じゃが村人Aよ。 ここは日本ではない。 もっと言えば地球でもないかの。」

さらりと告発された事実。 


地球、じゃ…ない? 


「主も体験したじゃろーて。

 ワームを通ったじゃろ?」 


「わ、ワーム?」


じぃさんは話を続ける。 

「空間をねじ曲げてあちらとこちらを繋ぐ通路じゃ。 お主はその歪みにはまったのじゃよ。」 


え、あ。 


「じゃ、じゃあなにか。もしかして此処は異次元で、魔王とかに支配されてて、勇者を彼方の世界から連れて来て「勇者殿、どうかこの世界を救って下さい!」とか言いだすオチか。」

ありがちなシナリオを口にしながら、これではまるで自分がゲームの主人公みたいじゃないかと心のどこかで期待していた。 


「ほっほっほっ。

 主は面白いが「勇者」



ではないわい。 言ったじゃろ? 主は村人Aじゃと。」

そう告げるとじぃさんはまた軽く笑った。 


「それに、勇者ならおるのじゃ。この¨魔王に支配された村A¨の勇者。…名を¨ジョーカー¨という。」


なんだ…すでに勇者はいたのか。 


「…今¨魔王に支配された村A¨と言ったな? なら、他にもある、ってことか?」


「ただの阿呆かと思っておったが…そうでもないのじゃな。」

じぃさんは一拍置いてから話始めた。 


「確かに、主の言う通り。この世界には¨魔王¨が存在しておる。そして、各村に一体という形で支配しとおってのう。まぁ、支配と言っても近年では統治、と言ったほうが正しいかの。

暴君と言われて恐れられた魔王など存在せん。」


なんだ…。 

じぃさんには悪いが少しがっかりしてしまった。 

だってせっかく異世界に来て魔王までいるのに勇者までいるのに、ごくごく平和だなんて。 


「へぇー。」


俺の生返事に気を悪くするでもなくじぃさんは続けた。 


「おぉ、そうじゃ。せっかくじゃから勇者にでも会ってきたらどうじゃ? なーに。危険などありはしないし、皆お主を知っておる上に、見学がてら見てくるといいわい。」 


なんか、

なんか勇者が動物園のパンダみたいな扱いされてる気がするんだが…。 


「ひとつだけ、これだけは守ってもらわないかん事がある。 それは、」 


「そ、それは?」

「自己紹介する時は¨村人A¨と名乗る事。 決して名前を名乗ってはいかんからの。」 


あぁ、この世界の訳分からんルール発動か。 


まぁ、その程度なら別にいいか。 

ペンネームみたいなものだと思えばいい。 


「了解。好きに見て回っていいのか?」


「かまわん、かまわん。」

じぃさんは既に俺に興味は失せたようでベッドから遠ざかって行く。 


そしてドアの前であ。と呟き俺の方に振り向いた。 

「言い忘れておったわ。お主の家は今日から此処じゃから好きにしてかまわん。 家賃も何もないが火も水も電気もないから後は自力でなんとかすることじゃ。



 どーしても何ともならん時はワシの家が村の最北端に位置しとるから訪ねるといい。 じゃ、後は村人達に聞いてなんとか生きていくことじゃ。 ほっほっほっ。」 


…。 



(こうして、俺の村人Aとしての¨異世界に来たのに一般人¨設定の凡人による凡人のための物語は幕を開けるのだ。〈俺日記301ページより抜粋〉)



とりあえず…勇者に会いに行こうかな。


どー…でしたでしょーか…;

よく見るRPG物の敢えて逆を捕えてみました! 

異世界に落ちても行き着く先は此方と同じような役柄に当てはまる事もあるんじゃないか、むしろその方が自然じゃないか? という、作者の暴走… 

あ、この話は一応オチも考えています! 

ので、安心して読んでいただけると嬉しいです! 



では、またお会い出来る事を期待しております!

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