第16話 謁見で、俺とハクは国王に気に入られたみたいだ
「ヤマト様。うちでもケーキはございますし、紅茶も良いものを取りそろえておりますが」
「嘘だよ。昨日もそのケーキ出て来たけど、食べるとお腹壊すよ。三日くらい前のでしょ、それ。紅茶も美味しくなかった。だから買わないよ。肉とかも見たけど、とても食べられる代物じゃなかった。だから何も買わなかったんだ、昨日も」
「ええ? それは。失礼します」
俺の前にあったケーキを臭って、顔を背けた。
「これは。とんでもないものを! すぐに商品を撤去させなさい。全てお菓子系は廃棄です、いいですね!」
はい、と男性は静かに出ていった。
「じゃあ、とりあえず、このまま冒険者ギルドに向かいます。これ以上、商品がなくならないようにしてくださいね。時間がないので、精算は後日させてもらいます。残りをどうするかも、それまでに決めておきますね」
申し訳ないと頭を下げる会頭を見て、部屋を出た。
じゃあ、と冒険者ギルドに引き返す。
くだらないもめ事ばかりだな、今日も。ほんと、疲れるよ。
ギルドに戻ってギルマスの部屋に向かえば、ソファを進められる。そして旨いパンケーキとミルクが出てきた。
イリアは、ヒラリさんに連絡してくれるって。できれば引き取りに来てもらえば楽だろといってくれた。
うん、楽だね~
俺はパンケーキをガッツリ食ってます、ミルクを飲みながら。
旨いんだよ、これが。
「なんだか、とんでもない事になってるらしいな。で、商人ギルドが貴族の名前をいわないって?」
「うん。なぜか、いわな、いんら~」
「ふむ。だいたい予想はつくがな。で、お前はどうしたいんだ」
「おへは、(ゴックン!)俺は、適正価格で買い取りしてくれればと思ったんだけどね。でも、貴族の名前をいわないのが気に入らない。だって、そうでしょ。買取も終わってない商品を売れっていうなんて、信じられないよ。そこまで勝手ができる人でしょ、その貴族」
「まあ、そうだな。俺の想像通りの人間なら。それで、商人ギルドの会頭はなんて?」
「一応、適正価格で買い取りたいって。他にも剣とかあるし、別の国に行ってもいいからって言ったんだけどね、是非、買い取りたいって。だから魔剣とかいろいろあるって言うのはいった」
「魔剣もあるのか?」
「うん。詳しくは見てないけど、あるみたい。荷物にならないから別にいいんだけどね。でも、それって、国としてどうなのって思った。俺は基本的に国とかのやり方は大嫌いなんだ。だから、その貴族がそのままなのも許せない。できれば聞いてみたいよね、その辺りを国王に」
「本当に、お前は規格外だな。冒険者にならないと言い張るが、それ以上の実力だし、どうしたものか」
そう言いながら、水晶をとりだし連絡を始めた。
相手はどうやら宰相らしいね。
イリアからは、すぐに取りに来てくれると聞いた。その時にケーキと紅茶をもってきてくれるそうだ。マジックバッグに入れてくれるらしいので、大丈夫だろう。
「宰相が話したいそうだ。陛下と俺と宰相もガキの頃からの馴染みなんだよ」
ふうん。でも、なんで俺と宰相が話すの?
「変わりました、タケル・ヤマトです」
『ヤマト殿、この度は我が国の貴族がご迷惑をかけたようで、申し訳ない。それで、名前はわかりましたか?』
「いえ。副会頭が言わないんです。会頭は昨日の段階で、俺の鑑定のことは報告されてなくて知らなかったそうです」
『なるほど。そういうことですか。おそらくですが、よくやっていたのでしょうね、そのようなことを。それで、あなたはどうしたいですか?』
「買取は別の国にいってもいいと思います。でも、俺も盗賊の中に、従魔と二人で乗り込んで始末するんです。それなりに大変ですよ。従魔ができるまでは、木を切りながらアジトに行ってたし。なので、その貴族には、きちんとごめんなさいを言って欲しい。どうせ自分が欲しいから、先によこせ的な話じゃないかと思うんです。でも、それは正当じゃない」
『その通りですね。では、商人ギルドの会頭と副会頭を呼びましょう。そして、あなたもギルマスと共に登城してください。目撃者は、そこにいる冒険者ですか。あなたも一緒にお願いします』
「はあ? いつですか?」
『できればすぐに。陛下もお忙しいので、急で申し訳ない』
「ええと、ギルマスは大丈夫? イリアは?」
二人とも、大丈夫らしい。それなら、と受け入れた。商人ギルドには宰相が連絡してくれるって。「じゃあ、後ほど」と通信を切った。
ドアが鳴り、ちょうど来てくれたのはヒラリさんだ。
「お忙しそうですね、タケル様。それで、ワイバーンの皮とサーペントの皮、マナバイソンの角、サーペントの目玉ですが」
これです、と目の前に置けば、ありがたいと大喜びだ。
じゃあ、と俺はケーキを山ほど受け取り、紅茶は缶でいくつか受け取って、金を払う。明細とおつりを渡された。そのあとは、素材の買取のお金をもらうと、素材はケーキが入っていたマジックバッグに入れた。
忙しそうだから、と後日注文品を取りに行くときにゆっくり話すことにして、戻っていった。
「お前の買い物はデカいな。ケーキもあれほど買うか」
「うん。いつもそうだよ。じゃあ、お願いします」
おう、と立ち上がって、買取カウンターを経由してできあがってた肉を手にして残りは明日、と精算せずに伝票だけもらってギルドを出た。
あれほどのマナバイソンは食うほどあるなぁと、ギルマスは大笑いだ。
まあ、確かにね。食うほどあるよ、これなら。でも、それほど長持ちはしないんだよね~
早足で進めば、王宮の前に到着した。
王宮に入る前に、俺は武器類をすべてアイテムボックスに入れた。ギルマスとイリアのものも預かったよ。そうでないと面倒なことになるんだって。
なるほど、国王の前に武器を持ったやつはダメだということだね。ひとつ勉強になったよ。
で、俺たちは今、謁見の間と言う所にいるんだけど。とても綺麗な、というかケバい部屋ですよ。絨毯はふわふわで気持ちいいけど。
「皆のもの、面を上げよ」
優しそうだけど、重みのある声が聞こえる。
ふうん、この人が国王陛下か。
鑑定してもいい人みたいだね。周りにいるやつらは、多少問題ありって人もいるけど。
それからは、話の内容を商人ギルドの会頭と確認して、今は副会頭が問われている。
ここまでくれば、いうしかないでしょうよ。
どうやら、冒険者ギルドのギルマスが想像した人だったらしいね。
で、その貴族、伯爵らしいけど、その人が言い訳を並べてますよ。でも、それに対して会頭のマリアさんは一歩も引かない。
確かにその話を聞いて売った職員に問題はあるけど、それを強要した伯爵はどうなのかと。かなり強気だけど、聞けば、マリアさんは侯爵家の次女らしく、伯爵より上なんだって。
いろいろと文句を言って言い訳していた伯爵だけど、最終的には己の非を認めた。
国王の出した判決は、無期限の謹慎。罰金として、商人ギルドにそれなりの金を払い、俺にも謝罪金を払うことになった。
はあ、やっと終わったか。
『主。戻る所だけど、どこに向かえばいい?』
『ハク、お帰り。少し待ってくれるか、すぐに折り返す』
わかった、と念話を終えて、ギルマスに問う。
どれくらいで戻るのかと。ハクが狩りから戻ったと言えば、何事かと国王に聞かれた。
実は、とハクのことを話せば、ここのテラスに戻ればいいといってくれるんだが。一応、ギルマスに視線を送れば、見たいんだろうと笑ってる。
じゃあ、そうするかな。
『ハク。俺の居場所はわかるか?』
『うん、わかるけど、王宮なの??』
『そうなんだよ。そこにいる。謁見の間にテラスがあるんだけど、そこに降りてくれないか。国王がお前の姿をみたいらしい』
『わかった。でも、私かなり汚いんだ。浄化してくれる?』
『わかった。テラスに出てるからね』
テラスに出たいと開けてもらった。
そこに出た瞬間、ハクが転移して来た。
一瞬、王宮の近衛騎士たちが武器を構えかけたが、その圧倒的な神々しさに気圧されて動けなくなる。浄化される前の泥汚れすら、激戦を物語る勲章のように見えた。
「うわっ、結構汚れたね」
『うん。森の中を駆けたから。奥に湖があったんだ。だから魚も捕ってきた。主は好きでしょ、魚』
「うん。大好きだよ。どうして?」
『以前、稀人は魚が好きだと聞いたことがあったから』
なるほどね。それでか。
じゃあ、浄化するよ。
シュルシュルと綺麗になったね、ハク。
「タケル殿。陛下が従魔をこちらにと仰せでございます」
いいんですか?
あ、いいんだ。じゃあ、入るか、ハク。
掃き出し窓、だっけ? かなり大きいけど、何とか入れたね。
「それが其方の従魔か。見たことのない魔物だと聞いたが、特殊個体であるらしい、他にもいろいろあるのか?」
「そうですね。いろいろありますが、一番は私とは念話で話しができることでしょうか」
「なに?! 人の語を話すのか。どれ、名はなんと言う?」
「ハクです。陛下、念話ですので、私にしか聞こえません」
「そうなのだな。それは残念。できれば話しをしたがったが」
国王は興味津々だな。
首輪は、特注品かと聞かれたので、知り合いの商会で買ったと正直に話した。ヒヒイロカネだといえば驚いてたけどね。
「それは素晴らしいの。して、ハクは魔物を狩りに行っておったのか?」
「そうですね。街にいると、運動量が足りないようです」
「そうか。何がおった、変わった魔物はおったのか?」
『それほど珍しいものはいなかったよ。ただ、肉の旨いもの、素材の高額なものを狩っただけ』
そのまま伝えたんだけど。
「何がおったか。王都に被害のでそうな魔物はおったか?」
ふむ、ちゃんと国内のことを心配してるのかな。
『強い魔物はそれなりにいたけど、わざわざ王都まで来ることはないと思うよ。キマイラもいたし、ひとつ目もいた。ドラゴンとは話をしただけで戻った。「人間は騒がしいから嫌いだ」なんて言ってたけど、「私の主は面白いよ」って自慢したら、鼻を鳴らして笑ってた。良いやつだったよ。森を守る使命を神からいただいてるらしいから、間違えても、ドラゴン討伐の依頼など出さないでね。神の使者としているんだから』
ドラゴンか、とハクの言葉を正直に伝える。
「それは。すばらしい、ドラゴンとそのような話をしたのか。では、宰相、被害を与えるドラゴン以外、我が国の守護神であるドラゴン討伐の依頼は禁止といたせ。ただし、はぐれがおるであろうから、それについては別である。ハクよ、我が国のドラゴンはどのようなものであったか?」
『普通のドラゴンだよ、レッドドラゴンだった。王都に降りることはないといってたね。ただし、はぐれや他国からのドラゴンに対しては対応するって』
そう伝えれば、「なるほど、理解した」と国王はご満悦だ。
ギルマスとイリアは呆れてたけど。




