第14話 ドワーフの店でやっと短剣を買ったぞ
「じゃあ、タケルとの再会を祝して、乾杯!」
かんぱ~い! と皆がジョッキを掲げる。
あ~、うまい、と笑ってるんだけど、これってエールってことはビールだよな。
そっと近寄って、イリアのジョッキを冷却してみた。
ゴクッ!
「なんだ、これ。冷えてるぞ、旨いな。タケルの仕業か、どうやったんだ、これ」
「冷やした方が美味いんじゃないかと思ってやってみた。冷却したんだよ、魔法で」
「それ、こっちも頼む」
俺も私も、と大騒ぎだよ。
ハクは我関せずでいろいろ食いまくってる。
今日買った、コロッケが気に入ったらしく、ミンチの串も抜いてやれば大喜びで食べてる。当然、椅子の上に置いたデカいボウルでね。
水も魔法で入れてやれば旨いというし、パンを出せというので、注文すれば、美味しそうに食べてる。
俺はオレンジジュースを飲んでいる。この世界ではオーランジというらしいけど。
次々注文するので、次々出てくる料理に舌鼓を打ちながら夜は更けていった。
キリがないので、終わりにしたんだけど、そろそろイリアたちの制御がヤバくなってきたから、夜九時くらいまでで終了とした。約三時間。よく飲み食いしたもんだなぁ。
翌朝で会計は大丈夫だといってくれたので、皆を追い出すことを優先する。
主人に詫びて、明日の朝金を払うと伝えて階段を上がった。
★★★
朝食を終えて、金を払う。
昨夜の飲み食いの金をとりあえず払わないとね。
飲み物だけでなく、料理も旨かったので皆、そこそこくってたよ。こんな料理は普段食えないんだといいながらね。
賑やかにしてしまって、申し訳ないと謝れば、問題ないですと言ってくれたので、ギルドを目指した。
ギルドの中はとんでもなく混み合ってて、どうにもならない。でも、買取カウンターは今は暇なはずだ。
「おう、来たか。できてるぞ。その前に、獲物を出せ。こっちだ」
はいはい、と場長についていけば、奥には解体場があった。いくつもあるデカいテーブルに順番に出せと言われる。とりあえず、オークとワイバーンをメインに出した。まだまだあるけどね。
できあがり次第、水晶で連絡をくれると言うので、ギルドを出た。
まず、果実水の店に行き、木箱で買う。冷えているのも二十本ほど買った。明日も持って来てくれるというので、お願いしておいた。どれだけでも欲しいんだよ、旨いし。
次は肉串屋のオヤジさんが三十本ずつ焼いてくれているらしいので、任せておいて、隣を見ればいろいろ揚げてくれている。ジャガイモのコロッケを指さして、これはたくさんプラスしてもらうよう頼んだ。
『主、そのコロッケ、ほしいんだけど』と念話で送ってくるハク。
そう言うので、その場で五個もらい、大きく口をあげて待っているハクに、揚げたてのコロッケを放り込む。熱そうにしながらも幸せそうに尻尾を振る姿は、とても伝説の霊獣には見えない。
その隣りには、ミンチを焼いてるお兄さんがいる。既に二十五本は俺を見て袋に入れてくれた。もう少しできるらしいので、頼んでおきましょう。
再び、受け取り金を払い、何度か繰り返しになった。まあ、旨いものは確保だからな。
今日は十五分と少しで肉串屋さんで合計八十本、揚げ物屋さんで百二十個、ミンチ屋さんで九十本ゲットした。
イリアは依頼を見に行って戻ってきたので、どうだったと問えば、いい依頼はないって。まあ、Sランクだし、あまり大きな依頼もないのかもしれないね。
じゃあ、と武器屋につれていってもらう。
ギルドから四軒先が武器屋さんだった。
おお、ドワーフの店か。
聞いたことはあったけど、結局いってないし。
こんちは~と入って行くイリアは常連なんだろうな。
「おう、イリアか。修理か?」
「いや。オヤジさんの武器はそうそう壊れないから心配ねえよ。今日は、こいつがナイフが欲しいって。で、連れてきた」
「ふむ。冒険者か?」
「違うよ。でも、普通のナイフは便利だし」
「なるほど、まあ、そうだな。冒険者でないのに、その装備とそのイチモツか。それ、見せてくれないか?」
いいよ、と刀を渡した。
普通はやらないけど、この人は大丈夫だ。鑑定でも素晴らしい職人だって。
「これは。魔道具だな、こりゃ。所有者として登録されてるし、持ち主の考えで形が変わる。それにしても、とんでもないもの使ってやがる。俺たちじゃ材料が揃わねえ。どこで手に入れたと聞いても、言えないんだろうしな。その防具も服も。一式魔道具だな。お前何者だ? 金には換算できねえぞ、これは」
ふふふ、ととりあえず笑っておく。
「まあ、出所は言えないよな。王宮の宝物庫にあるレベルの代物だ。すごいとしかいいようがない。それなのに、俺の作ったナイフでいいのか?」
「うん。オヤジさんの腕は確かだよ。だから使いやすいのがいい。短剣は普段使わないけど、重さが戦い向きだから」
「オヤジさん、こいつ。冒険者登録はしてないけど、俺以上の腕前だぜ。面倒なんだと、ランクだなんだと。もったいない話だよ」
「ほう。まあ、それは自由だしな。じゃあ、ナイフはこの辺りだが、どうだ?」
うん、どれもいいものだね。
でも、俺に適してるのは……
それぞれ、握って見る。切れ味はどれも同じレベルだな。ただ、にぎり具合がいいのは。
うん、これだ。これがいい。
「オヤジさん、これがいい。手に吸い付くように握れるよ」
「やはりな。それを選ぶと思ってた。それは俺が丹精込めて作った。普通のものと並べて置いてあるのはわざとだ。そのにぎりが気に入ってくれたなら、お前は本物だな」
いくらかと問えば、大金貨一枚と金貨七枚だった。
即決で買いましたよ。
それなら、とナイフの鞘とケースを付けてくれた。ベルトに通せばすぐに使えるから。
金を払って店を出た。
おもいきりため息が聞こえたけど。
次はどこだと問われて、ヒラリに聞いてみると水晶を取り出せば、瞬間繋がった。
『タケル。すぐに来い。次を出せ!』
わかった、とイリアとハクと一緒に駆け出す。
はや過ぎるだろうよ、オヤジさん。
その間に、イリアにヒラリさんに聞いてもらうことにして、水晶を渡した。
「お待たせ、場長。どこにだす?」
「ああ、この裏のテーブルに出せ。それと、さっき渡してなかったサイクロプスとオークキングだ。持って帰れ」
うん。とりあえず、裏に行く。
場長が腕を振るうので、サーペントを全部出すことになった。
これは早いからな、と聞いて、イリアに向き直ると、皮が手に入ったからと伝える。
それなら、一度来て欲しいらしい。
「場長、一時間くらいはいい?」
「そうだな。二時間後に来い」
わかった、とサイクロプスの皮とオークキングの皮と肉を全て収納し、買取明細を手にギルドに入った。
ここで金をもらうんだとイリアに教えてもらい、書類を見せる。
冒険者じゃないのかと聞かれて、違うといえば、解体料が二割高いらしい。でも、それでいいですとサイクロプスの肉と素材、オークキングの素材の買取金額をもらった。そこそこになったので驚いた。
それから、イリアと一緒に肉体強化をかけて走る。ハクは小型化して付いてくるんだ、デカいと危険だから。
王宮の前を通り過ぎで、すぐに店に到着した。
「お待たせしました、ヒラリさん」
「こちらこそです、タケルさん。それで、もう皮が入ったとか」
「はい。これです」
そう言い、サイクロプスの皮とオークの皮を取り出せば、職人さんが来ていたらしく、確認してから最高の素材だと褒めてくれた。
ついでに、ブラシを持って来てくれたらしいので、受け取った。
「それで、ですが。店として買取をしたいのは、魔道具と皮ですね。魔道具も大型冷蔵を一台、あとは風呂桶を全て、風呂の給水魔道具、トイレが一台。あとは魔道キチンの大型を一台です。それ以外でしたら、ワイバーンの皮、サーペントの皮、亜竜の皮、などでしょうか。あとは革の防具を何セットかですが、いかがですか?」
「それはいいですけど、お見積もりはありますか?」
はい、と受け取り確認する。俺の鑑定魔法で見た金額と大きな差がなければ売ってもいいと思ってる。
うん、まあ、そこそこだね。
「では、皮は解体した後を見てもらうことにして。それ以外はいいですよ。まだいろいろあるので、商人ギルドにも売りますから」
「そうですか。ありがとうございます。では、商品を」
裏の倉庫に行って、商品を次々取り出す。
全て揃って、買取の支払いをしてもらうことにした。
それほど期待していなかったけど、白金貨十二枚と大金貨が六枚、金貨四枚、銀貨九枚だった。
これってどうなんだよ。白金貨一枚なら、そこそこの家が建つと言われるのに、これだけの枚数が並ぶとさすがに壮観だな。ヒラリさんも手も震えているように思えるんだが。
じゃあ、と後は何か忘れてるような気がしたけど、とりあえず、時間がなくて、商人ギルドまで駆けた。
ギルドカードを見せて、買取の査定を頼むことにした。
副会頭が出て来て、買取の試算する人と一緒に商品を確認してくれる。大きな部屋で取り出したけど。思ってたより部屋が狭かった。
魔道具を出しただけで半分以上になり、あとは貴族の為の洋服など、革製品、革の防具等をとりだし、あとは武器を取り出した。
長剣は半分以上残った。短剣も大剣も同じ。
「まだそれほどお持ちですか。それは失礼致しました。では、追加で……」
「とりあえず、この辺りで見積もりをお願いします。それで剣などの値段を見て売るかどうか決めます。一応、俺も鑑定して売値を決めていますので」
「な、なるほど。では、明細をお渡ししますので、少しお時間をください」
「じゃあ、買い物しますね」
売り場に出て、さて、と考える。
用意してもらう間に、とりあえず、肉を見てみようか。うーん、これはダメだね。ケーキとかも少し古いな。
ここで買うものはないかな。
野菜とか欲しかったけど、どうするかな。それなら、とイリアが自分の出身地の村で買ってくれといってくれたので、明日行くことにした。
あ、そうだ。ひらりの店のケーキだよ。それと紅茶。あれが欲しかったんだ。




