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転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!  作者: 木風


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第24話「花火の光よりも、まだ頬の熱が冷めない」

あまりにも一瞬のできごとに瞬きもできず……

数秒の沈黙が流れる。

周りは花火が上がるたびに大歓声があがるけれど、触れられた耳が熱を持って……

熱過ぎて、何も全然耳に入らない。


額が触れる距離で目が合い、視線が交差する。逸らそうと思っても、まぶたは言うことを聞かない。

光の粒が降り注ぎ、祭りの喧騒すら一瞬止まったように感じた。


夜風が髪を揺らし、火薬の匂いが鼻先を掠める。

一瞬、エドの視線が揺らぎ、残光に照らされながら、再度ゆっくりと近づいてくる影。

名前を呼ばれた気がして、思わず息を飲み、瞼を閉じる。


ドンッ、と花火の音と振動が胸の奥に響く。

……胸の鼓動と花火の轟きが重なり合い、もうどちらの音かわからなかった。


息が止まる。

唇が触れて、世界が音と光だけになる。

最初のキスよりも少し長く、深く……


唇が離れても、まだ熱は残っていた。

夜風が頬を撫でていくのに、火照りはまるで冷めない。

胸の奥では、花火と同じように鼓動が暴れ続けている。

呼吸は浅く、息を整えようとしても喉が震えて言葉にならない。


「……っ」


花火の残光がまぶたの裏にちらつき、瞬きするたびに世界がまた弾ける。

ただ隣に立つ彼の温もりだけが、現実をつなぎとめていた。


気が付けば、離れていた手は、どちらからともなく、再びぎゅっと固く繋がれていた。

花火を見る間も、そのまま屋敷に戻る間も。ずっと手は離れることなく。

一言も言葉を交わすこともなく。

繋いでいた手が離れた瞬間、どうしようもなく名残惜しく感じた。


フラフラと部屋に戻り、お風呂に入り、いつも通りネグリジェに着替える。


「お嬢様、収穫祭はいかがでしたか?」

「あぁ……疲れたから、このまま寝る」


ベッドに倒れ込んだ途端、さっき自分の身に起きたことが一気に現実になる。


……待って。さっきの、ほんとにキス……だよね?

いやいやいや、人工呼吸なら数えきれないくらいやってきたけど!?!?

あれとこれ、全然違うんだが???!!!


しかも私、全然口エチケットとか考えてなかったぁぁぁぁぁ!!!

歯磨きはしたけど、果実酒とか串焼きとか、しこたま食って飲んだ!!!

うわぁぁぁぁぁぁ!!!終わったぁぁぁぁ!!!


枕に顔を埋めると、無意識に足がバタバタ動いてしまう。

29年分のファーストキスがぁぁぁぁ!!!

心臓もたない!!!


でも、嫌じゃなかった気がする。なんなら嬉しかった、かも?

は??嬉しい??私いま嬉しいって思った???私が???


「嬉しいわけあるかぁぁぁ!!!」


思わず抱えていた枕を壁に向かって投げつけると、心配したワンワンが「くぅん」と寄って来る。


「はぁっ、はぁっ……ワンワン、おいで」


白くて大きくてふわふわで…抱きしめるとちょっと落ち着く。

あぁ、癒やされる。この毛並み最高……


『だって、こんなに綺麗で、大きくて堂々として……』

『エドにそっくりじゃないですか♡』


あああああぁぁぁ!!なんでエドに似てるとか言った犬を抱きしめて落ち着いてんの!!!

もうこれ、ワンワン抱きしめただけでエドのこと思い出しちゃうじゃん!!


しかも……確かに、ベッドで抱きしめられた時の、髪の毛のふわふわ感は似てるような気がするけど!!

って、何改めて思い出してんだ!!!私のバカぁぁぁぁ!!!




朝の光がカーテン越しに差し込み、鳥の声で目が覚めた。

まだ頭がぼんやりしていて、昨夜の記憶が現実なのか夢なのか判然としない。


「……夢、だったんじゃないの……?」


ぼそっと呟き、枕を抱きしめる。

花火、花束、あの距離感、そして……キス。

いやいや、現実なわけない。だって私だよ?そんな少女漫画展開、あるわけ……


ふらりと立ち上がり、ドレッサーの鏡に映った自分の顔を見て、固まった。

頬が赤い。寝起きの火照りにしては、どう考えてもおかしい。

触れてみると、指先にじんわり熱が伝わる。


「……っっ!?」


一瞬で昨夜の映像がフラッシュバックする。

額が触れる距離、息が混ざった瞬間、唇の感触。


「無理。やっぱ夢じゃない……」


鏡の前で崩れ落ちそうになり、慌てて椅子に座り込む。

心臓がまた暴れだし、深呼吸しても全然落ち着かない。


「やばいやばいやばい……!」


侍女が朝食の用意を告げに来るノックの音で、慌てて背筋を伸ばす。

昨夜のことを知られたら死ぬほど恥ずかしい。

顔を冷やそうと水差しに手を伸ばしながら、心の中で必死に唱える。


「落ち着け、私。これはただのイベント。花火の雰囲気。そう、雰囲気に流されただけ……」


そう言い聞かせても、胸の奥に残る熱だけはどうしても否定できなかった。


「お嬢様、明日のドレスが届きました」


明日……

ついに、明日国中に婚約が発表される。


数々の打ち合わせに、終わりの見えない礼儀作法やら笑顔のレッスン。

終わる頃にはグッタリで本を読む時間も取れずに寝落ちする日々……


それが!!!明日!!!

明日を乗り越えればやっと解放される!!!!!


小躍りしたい気持ちをぐっとこらえ、ドレスの確認を待つ……待つ……待つ……


「ねぇ……これ、いつ着終わるの?」


運ばれてきたのは、エドから送られた紫色のストールと同じ色が差し色として施されたドレス。

一見シンプルかと思ったけれど、施された刺繍の繊細さと、ところどころに散りばめられた宝石。

今まで見たどのドレスとも比べ物にならないくらい豪華で、そして何より……重い!!!


「これ、歩ける気がしない。むしろ歩けなくて中止になるんじゃないか……?」


後ろに長く引きずるトレーンは、私の体重の半分くらいありそう。

豪華すぎて、着ているだけで体力ゲージがゴリゴリ削られていく。


さらに、侍女たちが次々に並べていくアクセサリー。


「待って、ティアラ以外のアクセサリーは真珠で良いって言った……よね?」

「はい、すべて真珠でございます」


うん、確かに真珠なんだろうけど……でかすぎない?

大粒っていうか、もうビー玉。ラムネ瓶に入ってるやつと同じサイズなんだけど!?

しかももちろんフェイクじゃなくて本物。

いったい何個の貝を犠牲にしたのよ……

どっちかっていうと、その貝を食べる係になりたいんだけど。


侍女たちにがっちり囲まれて、ドレスを着せられ、宝石をつけられ、髪を引っ張られ……

やっと全身仕上がったと思ったら、鏡の中には完璧な未来の王太子妃が映っていた。


でも、中身はもう息絶え絶え。


「……はい、立って歩いてみてください」

「……お座りください」

「お辞儀を」


HPゲージが真っ赤のまま、さらにゴリゴリ削られていく……


「確認できましたので、お脱ぎくださいませ」


ドレスを脱がせてもらい、その瞬間、速攻でベッドに倒れ込む。


「ごめん。次の予定まで……お昼寝させて……」


苦行。苦行すぎる……

昼食も食べる気にならない。

まだ前日だぞ。午後からは明日の流れの説明……

『歩くだけじゃないの?』って言いたいけど、絶対長くて細かいに決まってる。

もう……何も……考えたくない……


「……様……お嬢様!お時間です……!」

「……!?嘘!?もうそんな時間??」


誰か私に全麻でも打った?

全身麻酔やる前って、絶対『私は麻酔に耐えてやる!』って思うのに、カウント始まるとすぐ落ちて、気が付いたら手術終わっててびっくりするんだよな……


そんな感じで寝落ちしていたらしい私の目の前には、再びドレスを抱えた侍女の姿。

ダメ元で聞いてみる。


「……このまま、ネグリジェじゃダメ……?」

「ダメですね」


ですよね。聞いた私がアホでした……


あぁぁぁ……私のお布団……ネグリジェ……

今、何と一番結婚したいかって聞かれたら、布団って答える自信ある……

エド?あんなやつ知るか!!


どうせ今頃、私がこんなに苦労してるなんて知らずに、なんか公務?とかしてるんだろ!!

くそ!!お前が私の代わりにドレス着ろよ!!

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