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【完結】転生した悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!  作者: 木風


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第1話「西村涼子 享年29歳」

挿絵(By みてみん)

痛い……苦しい……


胸の奥が、ぎゅうっと張り裂けそうで、呼吸すらままならない。

息をするたび、胸骨の裏側を針で抉られているみたいに痛くて、喉の奥まで熱がこみあげる。


悲しい……辛い……

どうして、こんな……


もう、やめて……!


「……!!!やめて!!!」


掠れた叫びが勝手に口を突いて出る。涙が溢れて視界はぼやけ、ぼんやりと滲んだ光の向こうに伸ばした手は、空を掴むばかりで何も捉えられない。耳の奥で血の音がごうごうと響き、世界が遠のく。


「!お嬢様!意識が……!」

「すぐ医師と旦那様にご連絡を……!」


……医師は私だが?お嬢様?旦那様??

混乱する頭に意味不明な単語が突き刺さる。


「ちょ、まっ……!!!いってぇぇぇぇぇぇ!!!!!」


突如、後頭部に電撃のような痛みが走り、思わず頭を抱えた。

ずきずきと脈打つ痛みに涙がにじむ。


「お嬢様!いきなり起き上がってはいけません!」


慌てて支えてくれた人物の顔を見て、私は息を飲む。

栗色の髪がさらりと揺れ、翡翠のように透き通る緑の瞳。……めちゃくちゃ美人!!

え、え、外国人!?モデル!?ここどこ!?頭の中で疑問符が乱舞する。


混乱していると、バンッと勢いよくドアが開き、豪奢な衣装を纏った男女が駆け寄ってきた。


「あぁ!!アリエル!!」

「良かった……!もう目覚めないかと……!」


アリエル??今、私をそう呼んだよね??

しかも、目の前の二人、ハリウッド俳優と女優ですか?ってレベルの美貌なんですけど!?

女性の方なんて、涙まで流して心底喜んでる。


は?なにこれ??ドッキリ番組??隠しカメラどこ???


「先ほどから、混乱されてるようで……」

「とりあえず、医師の到着を待とう」


だから、医師は私だっつーの!!!


「待って……!」


声を振り絞って静止を無視し、再び身を起こした瞬間……バランスを崩して、そのままベッドからごろんと落ちた。


「アリエル!大丈夫か!?」

「い、いて……」

「お嬢様……ご無理をされては……」


痛みに顔をしかめながらも、ふと視線が部屋の隅にあった大きな鏡に吸い寄せられる。

そこに映っていたのは……私じゃない誰か。


見慣れた自分の姿とは似ても似つかない。

ひっつめ髪に、徹夜と激務で沈着したクマと肌荒れ。

サプリなんて全然効かない、ガサガサの肌。

ガリッガリの身体に、ブラも要らないまな板胸。

……それが、本来の姿の……はず……


けれど今、鏡の中にいるのは……


薄桃色を含んだ金髪が、腰までゆるやかに波打って流れ落ちている。

まるでビスクドール。まつ毛なんて、エクステ何百本つけたの?ってくらい長い。

大きな瞳は宝石のような紫で、きらきらと光を反射する。

唇は熟れた桃のようにほんのりピンクで、肌は雪みたいに白い。

……え、これマジですっぴん??詐欺レベルの美少女なんですけど!?


細い首筋、華奢な肩、しなやかな手足。そして……

目を下げれば、見慣れぬふくらみ。

メロンかってくらいでかい胸が、そこにどーんと鎮座していた。


さっきまで気にならなかったのに、意識した途端、重力をこれでもかと感じる。

こ、これ……豊胸じゃねーの……?え、持ち上げたら中身ばれる??


恐る恐る両手で抱え上げる。


「お嬢様!?」


ずしりと伝わる重み、柔らかい弾力、体温。……シリコンじゃない。本物だ。

その事実を脳が理解した瞬間、天を仰ぎ……再び意識が闇に落ちていった。


「アリエル!?アリエル!!」


遠ざかる呼び声を最後に、記憶の奥から自分の人生が鮮やかに蘇る。


……医者なんて、なるもんじゃない。


平々凡々な子供時代を終わらせようと、中学デビューを狙って惨敗。

外見磨きに必死になってダイエットした結果、骨と皮だけの鶏ガラ完成。

それでも勉強だけは、と食らいつき、日本最高峰の大学に合格。

医師免許を手にして研修医を経て、堂々と医師の仲間入り。


これだけのスペックなら……モテると思うだろ?全っ然!モテない!!

『俺より賢い女はちょっと』とか『将来開業して養って』とか。ふざけんな。

いや、こっちにも選ぶ権利あるからな!?


そもそも、私は誰かに寄りかかる人生を考えたことなんてなかった。

疲れて帰って、寝る前にマンガやラノベを読んでアニメ観てキュンとする。それで充分。

休みの日は数少ない友達と会って、また仕事漬けの毎日。

それでも……一人の人生も、悪くないと思っていた。


単身用のマンション買って、一生独身で気ままに仕事して……

そんな未来すら、悪くないと思ってた。


病院と自宅を往復し、三日三晩オペに立ち会い、食事は栄養補給食をエナドリで流し込む。

最後の日は、何本飲んだかすら覚えてない。

……そら死ぬわ。私が主治医ならめちゃくちゃ生活習慣の見直し提案するわ。

医者の不養生、ここに極まり過ぎだろ…


『医者になるもんじゃない』……そう言ったけど。

患者さんが元気になって、『ありがとう』と笑顔で退院していく姿。あれが嬉しくて、やりがいで。

救えない命もあったけれど、それでも、あの一言で生きていけた。


家族も、友人も、やりがいのある仕事もあったのに。

それでも……人生は、あっけなかった。


たった29年。短すぎる人生。


そうか。私は死んだのか。

西村涼子……享年29歳。

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魅力的な導入に引き込まれました。いま昼休みなので、また後で続きを読ませていただきます。
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