深淵の予感
「うーん完全に死んでそうやね・・・」
奥村さんが男の首元に手を当てて言った。
「どうするんこれ?」
と元山さん。
「とりあえず何かあるかもしれないからポケットとか漁ってみようよ。」
と奥村さん。
「何かって?」
と音雨さん。
「例えばさ、今になって野田くんの家に押し寄せた理由の手がかりがさ、もしかしたら掴めるかもしれないやん?やから探る意味はあるとは思うんよ。」
「なるほどね。」
「エロ画像も保存してるかもしれんしな‼︎」
と橋本。音雨さんがもの凄い形相で橋本を睨んだ。
「んーと、なんだこれ・・・」
見ると、三八四件のメッセージが届いていた。
『おいカズキ‼︎金返さんかワレェ‼︎』
『お前の家のもん全部差し押さえするぞ‼︎』
『マジでお前殺すぞ?』
このメッセージを見て音雨さんが
「うわぁ・・・怖いね・・・」
と言った。
『ガキに奪われたカネ巻き戻すってほんまなんやろうな?』
「・・・これって光輝さんのこと?」
『お前の居場所ずっと見てるからな。』
「・・・」
どうやら、事件は想像よりはるかに複雑な様だった。そう、何故ならこれはまだまだ序章に過ぎないからである。
その後、すぐにこの「カズキ」なる男の処理について話し合い出した。
「臭いものには蓋した方がええやろ。そろそろ臭くなるし。」
と橋本が言った。
「ちょっと言い方よ・・・でも最早見つかってもしょうがないしなぁ。」
と音雨さんも賛同気味だった。
「もういっそ大阪湾に沈めちゃうか。しょうがない。」
と奥村さんが悍ましいことを言った。でも実際、それくらいしか選択肢は残されていなかった。自分たちを見捨てた公的機関も頼りにできないし、かと言ってここに放置するわけにもいかないのだから。
「ただどうやって運ぶん?」
光輝さんが言った。確かに重要な問題だ。
「え、お前の腹に入れるんやったらあかんの?お前の腹なら誤差やろ。」
橋本が言った。何食えばこの様な発想になるのだろうか。
「ちょっとぉ、僕デブだからってこれは無理だよぉ〜!」
と光輝さんが言った。逆に言えば体型がいければやるのだろうか?
「酔っ払い運ぶみたいな感じで夜に担いで歩けばいいんじゃない?」
奥村さんが言った。それが妥当だと思った。
「私もそれがいいと思います。」
私もそれに賛同した。
「元山くん厳ついし行けるんじゃない?」
クスクス笑いながら音雨さんが言った。
「どういうことやねん!まあいいけど。」
そして私達は日が暮れるまで待って、武庫川へと向かった。
「この辺でええやろか?」
先に現場へと着いていた私たちに元山さんは洞穴っぽくなってる河岸の窪みを指していった。
「雑草もボーボーだしここが妥当なんじゃない?」
奥村さんが言った。そしてそこへ男を葬り去った。ただし、真相究明のためのスマホと、橋本がお小遣い欲しいと言って抜き去った財布を除いて。
「みんな疲れたやろぉ?帰って寝ようね・・・」
と光輝さんが言った。私は少しの違和感を覚えた。何故なら光輝さんなら必ず「美味しいものを食べよう」というからである。ことの重大さがここからひしひしと伝わってきた。
終業式、少し早めに行って遊ぼうと言われたので早めに学校へ行った。が、あまりに早かったようで誰も居なかった。退屈なので、学校の敷地を散策することにした。体育館の裏へ行くと橋本がうずくまっていた。
「何してるん?」
私は橋本に言った。橋本は
「うんちしてる。」
と言って立ち上がって自分のうんちを落ちてる石ですり潰しだした。えーっと・・・うんちをしてる?理解できない。死体遺棄してる私たちが言えたことじゃ
ないがもろ公然猥褻罪である。というか汚い。ひたすらに汚い。こいつの衛生感覚はどうなってるんだろうか。
「汚い・・・」
私がそう呟くと、橋本は
「そう。」
とだけ言ってニヤニヤし始めた。まあこんな橋本といても気まずいので私は散歩を再開しだした。
しばらくすると、登校してきた音雨さんに会った。
「おはよ〜綾ちゃん!」
「おはようございます音雨さん。」
「なんか顔白いけどなんかあった?」
「いや・・・ちょっと・・・うん。」
「何よ〜なんでも言っていいのよ。」
そこでさっきの橋本のことを言った。
「あー・・・うん。まあ橋本だから・・・あはは・・・行きましょうね。」
そう言って音雨さんと一緒にいつもの場所へ行った。部屋に入ると、珍しく光輝さんがいた。
「おひゃよ〜」
ポテチを食べながら光輝さんが話しかけた。
「もーだらしないねぇ!」
音雨さんが言った。
「みんなおはよう!」
奥村さんがやってきた。
「例のスマホなんだけど、ボクのお姉ちゃんの彼氏が電子系の学科行ってて。
それでスマホの内容を調査して貰おうと思うんだけどどう思う?」
奥村さんは早速重要な話を切り出してきた。
「いいんじゃない?原因究明になるんだったら。」
と音雨さん。
「でもそのお姉さんの彼氏?に理由がバレたら不味くない?もっと言えばそのお姉さんにも。」
といつの間にか部屋に入っていた元山さんが言った。
「うーん、それはボクがなんとかしてみるわ。」
「大丈夫かぁ?」
元山さんと一緒に来たと思われる橋本が言った。
「お前だけには言われたくねぇ。」
と奥村さんが睨んだ。橋本はニヤニヤしていた。
「それじゃあ終業式終わったら聞いてみるわ。」
奥村さんが言った。
「ごめんねぇ・・・よろしく。」
光輝さんが言った。




