激突!!怨念の野郎!!
その通知を見ると
『お前に相続権はない。そのオンボロ部屋もだ。再来週の日曜日にそっちへと向かう。それまでにこの部屋から出ていけ!この無能女の忌み子が!』
と書かれていた。余りにも酷すぎる。確かに未成年の光輝さんは法的にグレー、なんならブラックだろう。でもそれは問題を作った母親の責任だ。それに光輝さんの母親は責任感からその遺産を全部残していった。今の光輝さんにとってそれは生命線だ。それを今更奪うことに怒りを覚えた。しかも文面からして母親のものではない。恐らく母親の不倫相手だ。母親が奪うならまだしも不倫相手には奪う筋合いもない。
「こんなの・・・こんなの許される訳ないですよね⁉︎」
私は半ば絶叫した。みんなは静かに項垂れ、奥村さんが
「これは対策を立てんとあかんよな・・・この様子だと野田くんに脅迫をかけてきた奴は止まる感じもないしな。ほいでそいつが来るまであと二週間あるか・・・それならテストが終わってからでもまだ時間があるな。とりあえずテストはちゃんと頑張って、そこから対策を立てていこうか。」
と言った。みんなは深く頷き、光輝さんが
「僕の家のことなのにみんな悪いねぇ・・・美味しいもの食べて気を紛らわすよ。」
と言って、音雨さんが
「それじゃあ帰りましょうか。」
と言って今までで一番胸糞の悪い帰路についた。
そしてそこから一週間は飛ぶように過ぎた。奥村さんに教えてもらいながらしっかりと勉強をした。そしてテストも終わりそのテストも帰ってきた金曜日、光輝さんちにみんな集合した。
「さぁて・・・みんな成績どうだった・・・?」
と音雨さんが聞くと
「俺三位やったで〜」
と橋本がいつものテンションで気怠げに「一八七人中三位」の成績を見せてきた。
「こいつマジでなんでこんな成績高いん?うち割と頑張ったけど四七位だったし」
と音雨さんが不満げに言った。
「俺は三九位やったで。」
「ボクは八位だったよ。橋本はなんでそんな点数高いんやろね。」
と元山さんと奥村さんがそれぞれ言うと
「負けたし。」
と音雨さんが不貞腐れた。
「僕は一六八位だったよぉ‼︎よかったね‼︎」
と光輝さんは得意げに言った。
「野田くんはもう・・・うん。」
と音雨さんは言葉を失ってしまった。
「そういや綾ちゃんはどうだったのぉ?」
と光輝さんが聞いてきた。
「私は・・・七二位でした・・・でもでも、前回九五位なので順位は上がりました‼︎」
「おぉ、いいねぇ!順位あがってるよぉ?」
「・・・でさ、例の件どうしようか?」
奥村さんがゆっくりと口に出した。場の空気が深刻になった。
「役所に行くのは?」
と音雨さんが言った。
「役所は土日休業やぞ。」
と元山さんが言った。
「じゃあ警察は?」
と音雨さんが言った。
「せやね。じゃあもう行くか。」
と奥村さんが言い、交番ではなく警察署へと向かった。警察署に行き、事務の人に話しかけると少し業務をした後
「分かりました。対処の目処が立ったら、ご連絡いたしますね。」
と言われて私たちは安心して帰宅した。
しかし翌日、いつまで経っても連絡が来ない。昼になっても一向に連絡が来ず『「ほんまに大丈夫なんか?』
奥村さんが午後にぽつんとグループメッセージで呟いても誰も返事しなかった。警察に見捨てられたのだろうか。
『ちょっと連絡入れてみるわ。』
夕方になって元山さんがグループメッセージで呟いた。みんな「うん」とか同調する発言をし、それを見た元山さんが
『おけ』
とだけ言い、しばらくそこから離れた。そして戻ってくると衝撃的なことを言った。
『【我々そのような案件は調査してません、これ以上その様な『イタズラ』をするようなら業務妨害で捕まえます。】と言われた。』
と言われた。つまり最悪の事態、完全に公権力から見放されて完全に自力で解決するしかしょうがなくなくなってしまったのだ。そして私たちは翌日の朝から光輝さんちに集合することで合意した。
翌朝、朝ごはんもそこそこにすぐ光輝さんちに向かった。光輝さんちには光輝
さんの他、音雨さんと元山さんが来ていた。
「奥村はもうすぐ来る。橋本は・・・まだ寝てる。」
と元山さんが言った。流石は橋本である。
「野田くん・・・そいつはいつ来るん?」
「わからないなぁ・・・というかぁ、出ていけだからもう僕はいたらいけないということだから教えてくれないやろうなぁ・・・あと相手がどんなのか分からないよぅ・・・。」
光輝さんはかなり神経を消耗しているようだった。当然の話であろう。得体の知れない人の心を持たない化け物と対峙するのだから。
しばらくして、奥村さんがやって来た。
「遅くなってごめん。橋本は・・・いつも通りやね。じゃあもう対策考えるか・・・とりあえず分かることはー・・・話の通じそうな相手じゃないってとこ
かな?」
みんなこくりと頷いた。
「ということはあんましたくないし細っこいボクが言うのもなんやけど・・・フィジカルで対処するしかないようやね。元山くんに頑張ってもらうか・・・」
「俺は筋トレはしているが・・・まだまだ標準体重割り込んどるで。戦って耐えれる気せん。」
「んじゃあ武器も作らんとあかんか。」
奥村さんが呟くと、音雨さんが
「うち武器作りたい‼︎」
と言った。
「僕は正面から突っ込むよぉ!この巨体を支えてる訳だし・・・フィジカルは大丈夫だと思うよ〜お‼︎」
と光輝さんが言った。元山さんも
「俺もそうだと思う。」
と言った。
「それじゃあさっさと取り掛かろうよ‼︎いつ来るかわからんのやし‼︎んでうちは散弾銃作る‼︎」
音雨さんが言った。すると奥村さんが
「そんなもん作るな。殺す気か。」
と半笑いで言った。
「私は・・・何すればいいですかね?」
と私が言うと、光輝さんは
「綾ちゃんは卵でも投げつけて食べ物の大切さわからせてあげて。」
と言った。全くもって意味が分からない。けど一応うなずいておいた。そしてそれからそれぞれがそれぞれの武装を作り出した。
しかし奴が来るのは思いの外早かった。取り掛かってから僅か三分くらいで玄関が勢いよく開いた。そして四十手前くらいの女が
「キャア‼︎」
と言って転がり込んできた。おそらく光輝さんの母親だろう。
「ガキの教育どうなってんだこのクソ女‼︎なんでまだガキおるんや・・・しかも連れがようけおるし・・・なんや?俺が悪いって言いたいんかワレェ‼︎」
そう怒鳴って女と同年代くらいの男が入ってきた。不倫相手のようだ。
「ちょっと、ここは野田くんの家よ‼︎あんたの家じゃない‼︎」
そう言いながら音雨さんが前に出た。
「うっせえメスガキ如きに何が分かる‼︎」
そう言って男は音雨さんを殴り飛ばした。
「おいおいおい何やっとんや。」
そう言い元山さんが男に掴み掛かった。しかし男は
「調子乗んなクソガキが‼︎殺すぞ‼︎」
と言いあっさり元山さんを投げ飛ばした。
「調子乗ってんのは貴様じゃ‼︎こんなことしたくないけど・・・」
そう言い奥村さんが包丁で襲い掛かろうとした。
「奥村くん‼︎それだけはしちゃダメ‼︎」
と音雨さんが叫んだ。
「え?」
と奥村さんが立ち止まった。しかしそれが不味かった。男は奥村さんに強烈な蹴りを入れて、包丁を奪った。そして、男は私の方を見て笑みを浮かべ
「中学そこらのガキにもエロいのんがおるもんやな。お前なら行けるわ。貸せ!」
と言って私の方へ手を差し出そうとした。
「やめんが‼︎」
ずっとたじたじしていた光輝さんがついに動いた。百キロは裕にあるであろうその超巨体で全力で男にぶち当たった。男はかなり巨漢だったが、光輝さんの超巨体の前では無力で、ぶっ倒された。
「お前ェ・・・‼︎お前だけはぶっ殺す‼︎」
そう言い男は光輝さんの胸ぐらを掴み殴りだした。
「やめて・・・お願い・・・光輝さんを殺さないで・・・」
私は泣きながら男を止めようとした。
「失せろ肉便器‼︎」
男は手を止めようとしなかった。その時だ。
「光輝〜‼︎豚バラ牛乳いるぅ⁉︎」
橋本が呑気にやってきて、男を押し除けながら光輝さんの元へ近寄った。
「あれ?なんで光輝顔膨れてるん?あ、元々か!」
光輝さんはニヤニヤしながら話しかけた。
「何しとんじゃワレェ殺されたいんか‼︎」
そう言い男は橋本の胸ぐらを掴んだ。すると橋本の手に持っていたジュースが男にふっかかった。
「おい〜、乗んでたのにぃ・・・まあいいや、えい。」
橋本はそう言い残りのジュースも全部ふっかけた。
「舐めとんかぁ・・・‼︎ワレェ・・・‼︎」
そう言い男は橋本を壁に押し付けて持ち上げた。
「え、俺なんか悪いことした?」
と、橋本が言った。流石は橋本だ。この状況下でもブレない。
「うあああああああ‼︎」
男はそう言い橋本の首を締め出した。
「え、ちょ、痛い痛い、ごめん、ごめんって言ってるやん‼︎」
と、光輝さんの方を見ながら言った。最早何がしたいのかよく分からない。その時、男の手は急に弱まり橋本を手放し、倒れた。口から泡を吹き、鼻血を出して倒れた。
「わーお、どうなったんや?」
と元村さんが言った。
「一応救急車呼んでおいた方がいいかな?」
と奥村さん。
「こんな奴に救急車は要らんわ。」
と音雨さん。
「せやな。」
と元山さん。
「じゃあしばらく見てみるか。」
と奥村さんが言った。
「そういやさっきおばさんが走って行ってたけどあれ誰やったん?」
と橋本が言うと、元の明るさを取り戻しかけていた光輝さんがまた表情を暗め
「あれは母さん・・・いや、もう母さんじゃないな。また僕をおいて逃げたんだよ。」
と言った。雰囲気がまた暗くなった。
「ま、まあ解決できたことだしとりあえずさぁ、お腹空いたし昼にせん?」
と音雨さんが気を使いわざと明るめで言った。
「腹減った‼︎」
この一言で光輝さんが完全に元の明るさを取り戻した。こうして私たちは昼飯を食い、夕方までゲームするなり外に行くなりして過ごした。




