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少女はデブの愉快な仲間たちに飲み込まれてしまうようです...

 そしてまた地獄の1日が始まった。酒瓶で殴られたアザを隠して登校し、ゴミ箱に捨てられた上履きを回収し、散らかされた机の上を片付け、授業を受けた。もう何も見たく無い。もう何も聞きたく無い。全てをシャットダウンして放課後を迎えた。後者を出るとでかいデブがいた。野田さんだ。でも少しがっかりした。何故なら結構な数の友達と談笑していたからである。冷静に考えればそうだ。別に不遇な家庭環境で頭がおかしいからといって学校で独りなんて限らない。それどころか変わった形とはいえ、私にも手を差し伸べてくれた。友達がいっぱいいても妥当だろう。なんて事考えながらトコトコ歩いていたら野田さんの友達の一人が「なあ光輝、お前ずっと女の子につけられてるぞ?」と言った。なんと言う事だろう。かなりの距離をつけていたようだ。思わず顔を赤らめた。その様子を見てニヤニヤしながら友達は続けた。

「もしかしてこの娘お前の彼女⁉︎めっちゃ可愛いやん。羨ましいわぁ。」

「んえぇ、この娘は太る見込みがあるからスカウトしただけだよぉ?」

おいマジか。普通に嫌なんだけど。何が悲しくて肥らないといけないの?情報過多な上に様々な感情が混ざりうまく喋れなかった。

「え・・・あの・・・え・・・うえ⁉︎」

「ンンン?やっぱりデブは嫌いかい?」

いやまあそうじゃ無いけど・・・特段デブに恨みがある訳じゃ無いけど・・・でも自分は見た目のせいで学校でいじめられている。それならそれを失うデブになるならば・・・ そんなことを考えてるうちにとんでもないことを言ってしまった。

「デブは大好きです。デブになりたいです。」

「おぉん。嬉しいよぉ‼︎」

光輝さんは嬉しそうだった。いつの間にかたくさんいた友達は遠くに行き、ニヤニヤしながら話していた。私たちは何か始まったようだ。

 それから私たちは武庫川の方へと歩いて行った。梅雨も明け、本格的に暑くなってきたせいか、夕方六時でも陽炎が登っていた。私たちは河原に腰掛けることにした。ぼーっと川を眺めていると光輝さんがぼそっと「武庫川は鮎が取れる。嗚呼鮎の塩焼きが食べたいなぁ。」と呟いた。

「光輝‼︎飲み物はいるかぁ‼︎」

声のする方を向くと、光輝さんの友達の一人の黒マスクの美形の男がいた。

「いるぅ!ちょうだい!」

「ほーい」

そう言って光輝さんに野菜ジュース、私に牛乳を手渡してきた。

「おい恭介ぇ、なんで僕に野菜ジュースなんだよぉ。体型を見なさいよ体型を。それなのになんで綾ちゃんは牛乳なの?おかしいでしょぉ⁉︎」

すると男はニヤニヤしながら言った。

「え、お前太ってるからダイエットしようとしてるんじゃ無いん?え、綾ちゃん?なんか豚バラ牛乳好きそうな顔してるやん(笑)」

は?どういうこと?私が豚バラ牛乳好きそうってどういう意味?私が豚とでも言いたいの?しかもこれ豚バラ牛乳じゃなくて白バラ牛乳だし。にしてもこいつのニヤニヤした顔がムカつく。言動もムカつくがこの顔でもっとムカつく。煽ってんのかこいつ。

「綾ちゃんが豚バラ牛乳好きそうってどういうことよ。普通逆でしょう⁉︎」そう言い、光輝さんは飲み出した・・・ってなんと、手に持っていたのはその白バラ牛乳‼︎いつのまに取り替えていたのだろう。私はいつのまにか持ち替えられた野菜ジュースを飲み始めた。でもこれでいいのか?私を太らせなくてもいいのだろうか。にしてもこの恭介という男ムカつく。大変ムカつく。男性器みたいな髪型しよって。

「そういや連絡先交換しておかない?こっちの方が便利だしさぁ。」

光輝さんは言った。確かに不便だ。今日みたいなことがずっとあるとは限らない。学校でもちゃんと連絡を取っておきたい。だがうちの中学は他校と同じくスマホの持ち込みは厳禁である。使用するものなら生徒指導部行きは免れない。だから私は持っていってなかった。

「ごめんなさい・・・持ってきていないです・・・」

「ぐぉおん⁉︎マジかぁ。真面目だなぁ。」

マジかって持ってきてたのか⁉︎嘘でしょ・・・私を虐めてくるクソ女どもも押し倒してくるクソ男どもも持ってきていないのにこの間抜け面・・・この太っちょはスマホを持ってくるのか。いやでもそんなものかも知れない。光輝さんの方が器がでかい。その程度じゃ怯えないのだろう。

「はい書いたよ。ここにあるのが僕のアカウントと電話番号ね。」

えーっと・・・アカウント名はHamburger2929fat・・・流石過ぎる。

家に帰って早く見たいと思った。

 その後家に帰り、親のDVを耐え抜き寝静まった深夜、スマホでこのHamburger2929fatを調べた。すると案の定食べ物の写真の投稿で構成されていた。その量はもう凄まじく、逆にこの体型で留まってて凄いとさえ思える量だった。そしてそっと閉じて私は寝た。

 またなんでもない朝が来た。そして登校すると三年二組の教室で恭介がすらっとした背丈の美人が恭介を叱っていた。

「ちょっと、来たでしょ?ちゃんとこの子に謝りなさい‼︎」

「だからごめんって言ってるやん‼︎」

恭介ははその美人に向かって言った。

「なんで私に向かって言ってんのよ・・・ってどこに行ってんのよ‼︎おい‼︎帰ってこい‼︎おい‼︎橋本‼︎」

私は美人に向かって話しかけた。

「あの・・・ありがとうございます。」

「ん、ええんよ。悪いのはあのカスなんやから。貴女が綾ちゃん?野田くんから聞いてるよ。」

「はい・・・ありがとうございます!えっと・・・お名前は?」

「うち?うちは鳥山音雨よ。よろしくね‼︎好きなように呼んでいいよ‼︎」

「じゃあ音雨さん・・・よろしくお願いします‼︎」

「おう!元気いいね‼︎あ、野田くん来たよ‼︎」

「んえぇ、おはよう・・・パンケーキ食べたい・・・」

学校の行きに食ってたのだろう、空のポテチの袋を抱えていた。

「もう・・・あんた病期になるよ?ほら、捨てた捨てた‼︎」

「あぁ、僕のポテチ‼︎」

「じゃあ行きましょう、いつもの場所へ。」

「そうだねぇ綾ちゃんは初めてだよね?」

そう2人はいい学校の裏へと歩き出した。え?もしかしてこの人たち不良?確かに今思えば深夜徘徊して声をかけてくるわクラスの連中でさえ忌避する学内のスマホ平気だわ・・・いや不良にしてはやってることが弱いな?

でも何考えてるか分からないし隠してるだけかもしれない。とにかく怖い。すると様子を察した音雨さんが話しかけてくれた。

「うちらは不良じゃないよー。寧ろその逆。陰キャでどうしようもなくなった、成れの果てだよー。あんな教室なんか怖いよ。あとこれでも成績いい奴はいるよ?例えばあの橋本とか。授業中寝てるし宿題うちらの写してる癖にテストの点は学年の首位層。もう分かんないよね(笑)」

確かにそうだ。教室は怖い。できればあんなところいたくない。けど成績は取りたいので行くしかなかった。けどここはみんな受け入れてくれる。いや橋本はよく分からないが。

「ここだよ〜。ここが僕らの居場所さ。」

そこは螺旋階段の横にある小さな扉だった。その中は物置になっていた。こんなところあったんだ。知らなかった。

「ここがうちらの居場所。野田くんはおやつ食べてるし橋本はスマホで漫画読んでるし私はMMIXの推し活をしている。他にもニ人ほどいるんだけど・・・今は居ないみたいねぇ。どこ行ったんやろ。元山くんはどうせ公園で筋トレしているんだろうけど。」

部屋では橋本が寝転がっていた。スマホで漫画を読んでいた。どうやら陰キャの超能力の使える男の子の成長を描いた漫画のようであった。それにしてもみんなのびのびとしている。光輝さんに至ってはもう寝ている。私も同じように寛ぐことにした。すると音雨さんが耳の痛いことを言って来た。

「・・・そういえばもうすぐ期末試験よね。」

でも流石は光輝さんと橋本だ。一切動じない。すると音雨さんは私の方をしっかりと見てきた。ギクっとする私に対してうすら笑みを浮かべて続けた。

「早速で悪いけど今度勉強会しない?」

 ああ・・・やっぱりだ・・・でもそうだよなぁ。

次の一学期末の定期試験までもう一週間を切っている。成績も大して良くないので、頑張っていた方が良いだろう。

「明日野田くんちに集合な!」

「んええ僕勉強したくないいい‼︎新しい味のポテチ作るんだあああああ‼︎」

「あんた中間試験英語五点だったやろー?料理人だってグローバル化してるんだから英語も使うんやで‼︎」

「ヴヴヴヴヴヴ‼︎」

さっきまで漫画を見てた橋本も続けた。

「ノート写してないからそん時写させて〜?」

「二度と口開くなカス」

音雨さんは橋本を睨んだ。にも関わらず橋本はニヤニヤしていた。流石だ。

「ともかく野田くんちに九時集合ね!」

その時、五分前の予鈴が鳴った。みんなそれぞれの教室へと散っていった。

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