一万年と二千年経っても探してる
少し更新休みます。
「フレー!フレー!うーつーしーろ!フレッフレッ」
「あがぎぐううううう」
僕は異世界から現実に繋ぐワームホールをイメージしていた。
しかし、異世界と現実がどういう位置関係にあるのか、なにかしら関係があるのかもわからない世界と世界の狭間のイメージが正しいという確信を持てず、僕らの部屋で世界のヒビは閉じては収縮しを繰り返していた。
一刻も早く現実にもどらなければならない。
久遠透子という少女は馬鹿である。
書類の部数は必ず10枚単位で間違える。
申請書類をどこに回すのか半年たっても一つも覚えない。
極秘資料を生徒会日報に載せようとする。
生徒会権限によるオーバーテクノロジーの使用で地球が中性子レベルまで圧縮され、「死に戻」った来夏が2週目の世界崩壊をコンマ数秒で停めたことがある。
彼女は僕らを……会長を探すために手段を選ばないだろう。彼女が通常業務を「さぼらない」だけで世界が滅ぶのに僕らを助けようとかしてくれちゃってたらどうなるかわからない。
早く生徒会室に帰らなきゃ。コーヒーの匂いとポットの音。少し埃くさいカーテン。安っぽい椅子と壁際のソファ。
「出来た!」
「よし突入!!!!!」
僕らは臨戦態勢で世界の穴から生徒会室に飛び込む。
「なによこれ。ドアが開かないじゃない」
「窓もです」
「ふむ……やはり座標──座標という表現が正しいのかわからないが、それがわからないのに世界と世界を繋げようとするのは無理があったようだな。代わりに世界に穴を空けて、生徒会室の複製だけの世界が産まれたということだ。結果は望んだものではなかったが、現白御伽、君が私の想像を超えた御業を成すのはいつものことだ。しかしこれはとんでもないモノになったな。君はこの小さな、部屋一つ分の世界の創造主と呼べるわけだ。私は小さな世界の創造主に会った事があるが、彼女は自分の世界では文字通り全知全能だった。世界の拡張にはまた夢遊権現が必要だろうが、この世界に置いては君は君の異能を超えた権能があるはずだよ。妄想で現実を書き換えるのではなく、「ただそう在れ」「そうなれ」と命じるだけであらゆる望みが叶うはずだ」
「どうせすぐ消えますよ」
「いや、消えない。世界の外側へのワームホールをイメージ出来なかった代わりに、この世界の内側に新しい世界が入れ子構造で出来ている。この世界と新しい世界は矛盾するようだが「同じ世界の、違う世界」なんだよ。片方が存在する限りもう片方も存在する。隠れ家にいいな。「バックドア」と名付けよう」
「みつけたああああああああああ」
両肩に耐え難い衝撃が落下し、僕は崩れ落ちる。
「一万年と二千年経っても会いたかったですよ先輩たち!八千年すぎた頃からもっと恋しくなりました!実際は1億年くらい探し続けたんですけど!」
どうやって寿命を超えて1億年探し続けられたのかとか、どうやって見つけたのかとか。聞きたいことは山程あったけれど後にした。
この少女は、久遠透子は。
1億年かけて友達を探して、笑顔で冗談を言える、そんな破格のお馬鹿な女の子なのだ。