02 魔法少女♪奈里佳 (完全版) 第一話 魔法少女誕生!
【 魔法少女♪奈里香 】という作品は、パイロット版および本編が2001年2月21日から2005年9月16日にかけて連載されていた未完の作品です。初出は【少年少女文庫】という複数のメンバーによって運営されていた性転換ものに特化したサイトでした。本編第三話後、楽天のブログにて番外編01を2009年8月20日に公開しましたが、どうしても第三話のクオリティーを超えるどころか並ぶことすら難しいと思い、続きが書きづらくなった作品です。いづれリニューアルして続きをと思っていましたが、2024年1月3日に体調を崩し(B型大動脈解離および腸閉塞)、体力的な限界を感じて仕事も辞めました。それに伴い近いうちに自サイトを閉鎖する予定となりましたので、小説家になろうに転載する運びとなりました。
本日中に01~08まで投稿しますので、よろしくお願いします。全体ではラノベの単行本2冊くらいの分量があります。
「時空球の結晶化急激に進行中! 可能性領域、次々と閉鎖!」
広間に並ぶ魔導師の1人が、水晶球をモニターしながら、緊張した面もちで報告をしている。
「結晶化した世界が崩壊するまでのタイムリミットは、前に計算したとおりですか?」
無数に存在する平行宇宙の過去、現在、そして未来、すべての世界で構成された“時空球”。その“時空球”の崩壊をくい止めるために、魔法世界“ネビル”が設置した組織、アルターヴァのNo.1。それが居並ぶ魔導師達の中でも特に若い、それでいて凛とした強い意志を感じさせる青年、クルールである。
クルールの質問を受けて別の水晶球をモニターしていた魔導師が、やや怯えたような声で報告してきた。
「はい、既に結晶化した“赤の005624世界”が、現在崩壊中ですが、崩壊スピードは予想の範囲内です」
その答えを聞いたクルールは、しばらく考え込んでいたかと思うと、まるで独り言のように言葉を紡いだ。
「ということは、予想から外れているのは、あくまでも結晶化の進行のみということですね。しかも誤差の範囲を大きく越えているからには、何らかの人為的な要素が加わっていると見た方がよろしいと……」
そう言うなり黙り込んでしまったクルールに対して、年輩の魔導師が苦悩に満ちた表情で質問した。
「やはり、ディルムンの連中の仕業でしょうか?」
その質問に反応して、自分の思考に沈んでいたクルールはゆっくりと顔を上げた。そして言葉を選びながらゆっくりとその質問に答えだした。
「時空球を構成する世界は、人間の知覚の範囲内においては、文字通り無限数存在します。まだ私達ネビルの民には明確に認識されていない世界の住人が、その原因を作っているのかもしれません。先入観でものを言うのは禁物です」
そこで言葉を区切ると、クルールは居並ぶ魔導師たちを見渡した。
「しかし現時点における情報だけで判断する限り、ディルムンの活動が時空球を構成する世界の結晶化を加速しているという結論になりますね。……ディルムンの活動がここ最近、何か変化したという情報は入っていますか?」
クルールは、情報収集担当の魔導師に声をかけた。
「いえ、平行する同一時間上までの情報には、変化の兆しはありません。もしも変化があるとすれば、ディルムンの未来において何かがあったものと思われます。ご許可が頂ければディルムンの未来を調査することは、いつでも出来ますが、いかがいたしましょうか?」
その魔導師は、緊張した面もちでそう答えると、クルールの返答を待った。
「いえ、それには及びません。それに未来を調査して、わざわざその未来を確定させることはありません。そんなことをすれば、私達自身が時空球の結晶化の引き金を引いてしまいます。言うまでもありませんが、未来を確定するということは、その未来にいたる歴史において、人間の意志も含めた、その他のあらゆる可能性を否定してしまうことになります。それだけは避けねばなりません」
憂いを含んだ顔をして魔導師の提案を退けたクルールは、何かを決意したのか、彼にしては珍しく緊張した声を出した。
「時空球がこのままの速度で結晶化すれば、遠からず世界のすべてが連鎖崩壊してしまいます。我々はなんとかして結晶化をくい止めようと努力してきましたが、どうやら“結晶化へと至らない未来”を観測するだけでは、限界がきたようです。いよいよ時空間通路を使うときがきたようですね」
心なしか震える声は、クルールの苦悩の現れだった。
「いけません! ディルムンのタイムマシン技術に対抗するには、まだ我々の時空間通路を穿つ魔法技術は未熟そのもの。しかも一度、時空間通路を使えば、彼らに干渉を受けるは必定。我々は万全の準備をして、たった一度のチャンスに備えなくてはならないのですぞ! 現在の魔法技術では、博打を打つようなものです。どうか考え直していただきたい」
クルールに次ぐ、魔導師、アサルが興奮した面もちで、クルールを諫めようとしたが、そのアサルの言葉を聞いても、クルールの決意は覆らなかった。
「時空間通路を閉じる際、通路を維持していたエネルギーのすべてを超空間に解放します。それでしばらくの間はディルムンの干渉を排除する事が出来るはずです」
静かに告げるクルールの言葉にアサルは顔の色を失った。
「まさか! そんなことをしたら……!?」
驚きの言葉を発し、そのまま絶句するアサル。
「すべて承知の上です。既に現状は抜き差しならないところまで来ていると、私は判断します。よってアルターヴァの第1魔導師として、私、クルールは宣言いたします。半日以内に、時空間通路の展開準備を整えてください。私は、これから大僧正猊下に、作戦の実行を伝えて来ます」
穏やかな言い方ながらも、クルールの言葉に反論する者はいなかった。
広々とした大広間の一角に、1人の老人が座っている。その眼は閉じられてはいるが、その精神は活発に活動していることが、ネビルの魔導師であるクルールには一目瞭然であった。
「大僧正猊下。時空間通路を開き、かねてからの計画を実行するご許可を頂きにまいりました。既に現状は、今すぐにでも作戦を発動させねばならならところまで来ています。どうかご決断を……。ご許可さえ頂ければ、半日後には、大規模時空分岐点が存在する時代に時空間通路を接続することが可能となります」
魔法世界ネビルでも、最高位の魔導師だけが身につけることを許されている、ゆったりとした虹色に光り輝く一枚布のような正装を身にまとったクルールは、老人に対して大僧正猊下と呼びかけた。奇しくもこの老人は、クルールの曾祖父に当たる魔導師、アトラ・ハシースである。
「事態がそこまで切迫しているということは、私も“観察”していた。よって作戦を発動する時期についての異論はない。しかし、時空間通路の到達深度に関する問題は解決したのか? 前回の報告では、もっともこの時代に近い大規模時空分岐点である7千年前の時代にすら、あと千二百年分の深度不足と聞いていたが……。それに時空間通路を開いて過去に干渉すれば、まだ存在が秘匿されているネビルのことが、ディルムンに察知されることになる。その対策はどうするつもりだ?」
しわだらけになりながらも、みなぎる精気を感じさせる老人は、小さいがしっかりとした声でクルールに質問をした。その声には、無数に存在する平行世界の中でも、唯一、高度な魔法文明を基調としている世界、“ネビル”最高の“観察者”としての責任感にあふれていた。
「時空間通路を通過中に、通過させる質量と精神のうち本質以外の部分を、通路を維持する為のエネルギーへと変換させます。この方法ならば、現有の魔法技術でも、7千年前の時代に接続が可能です。それから時空間通路を閉じる際、通路を維持していたエネルギーのすべてを超空間に解放し、ディルムンのタイムマシンが航行出来ないよう超空間に乱流を発生させます。これでディルムンの干渉を排除する事は可能です」
クルールは決意を込めた表情で、老人の質問に答えた。その決意の前には、いかなる反論も受け付けられないだろうことは明白だった。
「……それがどういう意味か分かっているのだな? 送りこむ質量と精神というのは、お前自身なのだぞ。お前という存在の本質部分のみを残して、その他の部分はすべてエネルギーと化す……。そのエネルギーを回収することなく超空間に解放するということは……。クルール、お前は人としての存在から、その本質を残し、人ならざる存在へと変化する。それでも良いのか?」
老人の声は、あくまでも落ち着いた調子である。長い年月を生きてきた者のうち、限られた者だけが身につけることが出来る精神力のたまものであろう。
「覚悟の上です。それに、どうせこのままでは時空球は加速度的に結晶化してしまいます。そうなればやがて時空球のすべてが連鎖崩壊するは必定。もちろんネビルも、そして事態に気がついていないディルムンも連鎖崩壊に巻き込まれてしまいます。それに比べたら、私という存在が、人ならざる存在へと変化する事など何ほどのことでもありません。」
老人の心配に対して、クルールは、若者だけが持つことが出来る思いきりの良さで応じた。
「しかし人ならざる存在へと変化し、なおかつ魔法力の大半を失い、さらには記憶すらあやふやなものとなる……。そんな状態で、いったいどうやって大規模時空分岐点を活性化させるつもりなのか?」
クルールの考えを確認するかのごとく、老人は尋ねた。
「誰しも持っている魔法力を開花させることによって、現地で協力者を作ります。時空間通路を通過出来る部分と魔法力では、1人の人間の魔法力を開花させることしか出来ないでしょうが、それで充分です。それに使命に必要な最低限の記憶にはブロックをかけておきます。ともかく私は現地での助力を得て、使命を達成してみせます。お任せ下さい」
クルールの返答にはよどみがなかった。あらかじめこのような質問があることは予想していたのであろう。
「そこまで決意を固めているのか……。ではクルールよ。魔法世界ネビルの大僧正、最高観察者として命ず、7千年前の世界へと赴き、我らの世界ネビルと時空球の連鎖崩壊の危機を救うため、その身を捧げてくれ。よろしく頼む」
初めて苦渋の表情を見せながら、老人は深々と頭を下げた。その姿には、大僧正猊下と呼ばれた雰囲気は既に無かった。
「なんだろう? アレ」
通学路を、友人の佐藤雄高と帰宅の途についていた矢島克哉は、前方の道端に何かが横たわっているのを見つけた。
「わっ、アレ、車に轢かれた猫じゃないのか?」
心の底から気持ち悪そうな声で、雄高は叫んだ。スプラッタは大嫌いな雄高である。それでいて好物は焼き肉というのだから、わがままちゃんである。ちなみに作者は柔らかく煮た牛すじ肉が好物である。
「えっ、猫……、かなあ……? なんか違うような気がするんだけれど」
克哉は首をかしげながら、その横たわったモノに近づくと、よおぉ~く、それを見てみた。
「!? 生きてるよ! これ!」
驚きの声を上げると、克哉はその生き物を抱きかかえた。そして雄高のもとに走り寄ると、腕の中の生き物を雄高に見せた。
「うわっ、血だらけじゃないか。気持ちわり~。そんだけ怪我してたら、もうじき死んじゃうんじゃないのか? どうせ車にはねられて、内臓が破裂してると思うけどな」
確かに雄高の言うように、克哉の腕の中の生き物は、血だらけで、弱々しく胸を上下させて息をしているが、その他の動きは全くない。いつ死んでもおかしくないという感じだ。
しかし、それにしても妙な生き物である。全体の雰囲気は猫なのだが、猫にしては短足で、胴も短い。かといって単に小さな猫かというと、顔の大きさは通常の猫よりも2倍近く大きい。そして極めつけはその毛皮の色だ。なんとピンク色なのだ。尻尾もやけにふさふさしており、動いてさえいなければ、まさにぬいぐるみの猫そのものだ。
「でも、まだ生きてるし……、家に連れてってなんとかしてみるよ」
こうして克哉は、猫のぬいぐるみのような妙な生き物を、家に連れ帰ることになった。
「どうしよう。とりあえず、傷口を消毒したほうが良いのかな?」
克哉は家に戻ると、部屋の中でその妙な生き物を介抱しだした。めったに使わない薬箱を取り出すと、がさごそと消毒液を取り出し、さて、治療しようかと振り向いたとき、何か違和感を感じた。
「あっ、気がついたんだ。……!?」
その生き物は、後ろ足でぴょこんっと立ち上がり、つぶらな瞳をこちらに向けて、何かを考え込むかのように首をかしげている。その姿はどこか知性を感じさせる雰囲気に溢れていた。すると次の瞬間、その生き物は口を開いた。
「タ・ス・ケ・テ。セ・カ・イ・ノ・ホ・ウ・カ・イ・ヲ・フ・セ・グ・タ・メ……」
そして、その生き物は再び気を失うと、倒れ込んでしまった。それを見て、そして聞いてしまった克哉は、何か分からない、ひどく興奮した気持ちになっていた。
「喋った……。何か、何かが、起こっているんだ。僕の知らないところで!?」
克哉のような中学2年の男子にとって、世界は退屈な存在である。退屈という表現が悪ければ、予想外のことが起きないと言い換えても良い。世界は自分のあずかりしらぬところで、自分とは関係なく動いていく。仮に何かが起こったとしても、自分の役割はただの観客、脇役でしかない。
ところが、この喋る生き物の存在は、そしてそれを拾ったのが自分だということは、克哉に1つの予感を抱かせたのだ。自分が世界というドラマの主人公になったのかもしれないということを!
「世界の崩壊を防ぐため……。すごい! もしかして、僕は何かに選ばれたのかもしれない! とにかくこの生き物を介抱して、助けなくっちゃ!!」
こうして克哉は深い考えもなく、ただ『自分は何かに選ばれたのかもしれない』というあとから考えてみればなんの根拠もない想いだけで、その生き物を介抱しだした。結構いい加減なヤツである。さすがに作者が紅衣北人だけのことはある。(おおっ、とても説得力がある設定だ!)
そして三時間も過ぎた頃だろうか? ようやく、その生き物が再び眼をさました。
「ここはどこ? 君は誰? 僕は……、僕は……!?」
どうやら時空間通路を通過したことによる一時的な記憶喪失らしい。ブロックされた記憶が、まだ意識化していないようだ。
「気がついたみたいだね。ここは僕の家だよ。矢島克哉っていうんだ。よろしくね。君は自分の名前が分からないの?」
克哉はごく当たり前のように、その妙な生き物に対して自己紹介をした。そして名前を聞かれたその生き物は、ちょっと考え込んでから口を開いた。
「僕の名前……。よくは思い出せないけれど、何だか『くる』とか、『くるくる』とか呼ばれていたような気がする……」
自信なさそうにそう言うと、猫のぬいぐるみのような生き物は、悲しそうな眼をした。
「よおし、じゃあ君の名前は『クルル』ということで良いかな? だって君の耳ってくるくると巻き毛になってるしね」
克哉は、何だか新しいことが始まる予感がして、ワクワクしながらクルルにそう言った。これから自分がどんな事件に巻き込まれるかも知らずに……。
「そうだね。僕も何だか『クルル』という名前だったような気がしてきたよ」
自分の名前が決まったことで安心したのか、クルルはとても嬉しそうな笑顔を浮かべると、克哉に抱きついてきた。
「有難う。僕の名前を教えてくれて! ええと、克哉クン。有難う!」
克哉は、抱きついてきたクルルをひょいっと抱き上げ、自分の顔の高さまで持ち上げると、そのつぶらな瞳をじっと見た。そして真剣な表情で、クルルに質問をした。
「ねえ、クルル。さっき、『世界の崩壊を防ぐため……』って言っていたけれど、それってどういうことなの。それにクルルはいったいどこから来たの?」
それを聞いたクルルは、突然、ぴくっとからだを震わせると、急に大声で喋り始めた。“世界の崩壊”という言葉がキーワードになって、ブロックされていた記憶が爆発的によみがえってきたようだ。
「そうだった! 大変なんだ!! このままだと世界が崩壊しちゃうんだよ!!」
猫のぬいぐるみにしか見えなくても、クルルの言葉には、真実を語る者のみが持つ、重みがあった。自然と背筋が伸びてくる克哉。そして……。
「僕は魔法の世界、ネビルからやって来たんだ。ネビルは今の時代からずっと未来にあるんだけれど、未来は1つじゃないんだ。無数に枝分かれして、可能性のすべてが現実の世界になってパラレルワールドを造っているんだ。パラレルワールドを含めたすべての宇宙の過去現在未来で形作られた世界を、僕たちは時空球と呼んでいるんだけど、ところがその時空球を構成する世界が次々と可能性を閉じられて結晶化しているんだよ。このまま次々と世界が結晶化したら、すべての世界が連鎖崩壊しちゃう! 信じてよ克哉クン。僕に力を貸して! ネビルと、この世界を含めたすべての世界を救うために!」
真剣な眼差しで訴えるクルル。克哉はごくっとのどを鳴らすと、質問した。
「世界を救うってどういうこと。それに力を貸してって言っても、僕にはなんの力もないよ」
戸惑いを隠せぬ克哉の質問に対して、クルルはそれこそ体中を口にして熱弁をふるった。
「僕も全部を覚えているわけじゃないんだけれど、この時代は、いくつもの世界へと繋がる大時空分岐点なんだ。この時代の動き次第で、未来の世界は大きく変わる。そして今のままでは人類は真実の魔法を知ることなく、科学だけを進歩させる……。それじゃダメなんだ。それだと世界のすべてが崩壊しちゃうんだ!」
クルルの言いたいことの半分も理解できなかった克哉だったが、何か大変なことが起きつつあることだけは分かった。そしてクルルの言葉が真実らしいことも……。
「それで、どうすれば良いの?」
真剣な面もちでクルルに質問する克哉。
「簡単だよ。魔法。魔法を使って事件を起こすんだ。この世界も既に部分的に結晶化しているけど、その結晶化を魔法を使って派手に修正すればいいんだ。魔法を見た世間の人たちが、魔法の存在を受け入れて、魔法について研究するようにすれば、この世界の可能性は大きく開花して結晶化を防ぐことが出来る……。だから、克哉クン。君の魔法の力を使って世界を救って!」
さらりと言うクルルの言葉に、克哉はびっくりした。
「そんな!? 魔法だなんて僕、知らないよ。僕に魔法の力なんか無いに決まってるじゃないか」
もしかして僕は間違ってクルルに選ばれたのだろうかという思いがよぎり、克哉は少しがっかりした。しかし次の瞬間、クルルは克哉の言葉を否定した。
「魔法の力は誰にだってあるんだよ。ただみんなその使い方を知らないだけさ。僕は未来にある魔法世界ネビルからやってくるときに、色々な魔法の力を失ったし、忘れちゃったこともかなりあるけれど、人間の魔法の力を引き出すことは出来るんだ。その方法と実行に必要な魔法力だけは無くさないようにブロックしてあったからね。どうかな? 克哉クン。魔法を使えるようになってみたくない? 克哉クンならきっとものすごい魔法使いになれるよ」
魔法使い。その言葉は克哉の心を捕らえてしまった。どちらかと言えばなにか特技があるというわけではない克哉である。もしも魔法が使えるようになったら……、と思うと、胸がドキドキしてきた。
「なりたい! 魔法が使えるようになりたい!!」
勢い込んで答える克哉の言葉を聞くと、すぐさまクルルは何か呪文のような言葉を唱えだした。すると突然あたりは眩い光に包まれ、真っ白になり、何も見えなくなった。そして克哉は意識を失った。
「克哉クン、克哉クン。しっかりして! 眼をさましてよ!」
クルルの心配そうな声がする。それを聞いて、克哉は自分が気を失ってしたらしいことに気がついた。克哉は身体を起こすと、クルルが、目の前にちょこんっと座っていた。
「あっ、クルル、僕、気絶しちゃってたんだね。……何だか全然変わったところが無いんだけど、これでもう僕は魔法が使えるようになったのかな?」
どうもそうは思えない克哉は、疑わしそうな声でそう言うと、クルルをじっと見た。
「心配しなくても、もう克哉クンは魔法使いだよ。ただし、本格的な魔法を使うためには、変身が必要なんだ。今まで通りの克哉クンだと、魔法能力の容量が小さいんだよ。だから克哉クンの身体を魔法で作り替えたんだ。普段は今まで通りだけど、変身すれば、それこそどんな魔法だって思いのままだよ」
自信満々の様子で答えるクルル。それを聞いて克哉はまた嬉しくなってきた。
「へえ~、変身ヒーローみたいだね。それでどんなふうに変身するの?」
浮き浮きしながら質問する克哉の目は輝いていた。
「それは実際に変身してみてのお楽しみ♪ とにかく克哉クンの潜在能力で、最大限に魔法能力を引き出せるような身体に変身出来るようにしておいたから安心してよ」
これまた浮き浮きした調子で答えるクルル。すべてを言わないところが、何か怪しい……。
「それで、変身の呪文とか有るのかな?」
克哉は、クルルの様子を何も怪しくは思わなかったらしい。どうやら早く変身したくてたまらないようだ。
「ん~~。特に変身の呪文は無くてもかまわないんだよ。見た目は全然変わらないけれど、今の克哉クンは、魔力をまわりの空間から吸収することにもっとも適した身体に変化しているんだね。だから魔力を容量いっぱいにまで吸収したら、克哉クンは自動的に変身するようになってるんだ♪」
よく聞くと実はとんでも無いことをさらりと言うクルル。つまりそれは自分では変身を制御出来ないということであるのだが、克哉はそんなことには全然気付かず、不満をたれた。
「え~、それじゃ、今すぐ変身する事は出来ないの?」
ぶうたれる克哉に対して、クルルは落ち着いた口調になって答えた。
「大丈夫。魔力が容量いっぱいにまでたまっていなくても、僕が変身の呪文を唱えれば、いつでも変身出来るよ。ただし、蓄積した魔力を使い切ると変身が解けちゃうから、今の魔力だと、1つか2つの魔法を使うのが精いっぱいかな?」
それを聞くと克哉は、後先考えずにクルルに注文していた。
「じゃあさ、今すぐ変身させてよ! 魔力がたまるまで待っていられないよ」
忍耐力がない子である。さすが現代っ子。
「うぅ~ん。一週間もすれば魔力が完全に充填されるんだけどなあ~。まっいっか! じゃあ行くよ!」
そう言うなりクルルは、呪文を唱えだした。
「心の中の景色こそ真実。目の前の景色は幻。されば心の中の姿こそ真実の肉体。幻の肉体よ。真実の姿を取り戻せ。我は導く。克哉の肉体よ、真実の姿、奈里佳の姿を取り戻せ! 転!」
クルルの発した呪文が、克哉の耳に届いた瞬間、克哉の肉体に変化が生じた。
まず、短く刈り揃えられた髪の毛がざわざわと音をたてて伸び始めた。同時に黒々とした髪はその色を失い、キラキラと輝くさらさらの金髪へと変化した。
そして、身体がきしむような音をたてながら縮みだすと、それにあわせるかのように胸の肉が盛り上がり始めた。その肉はじょじょに柔らかく弾力を持ち出すと、最後にはぷるんっと大きく震えた。
さらに変化は続き、腰がきゅうっとくびれてくると同時に、おしりがふっくらと大きくなってきた。続いて股間のあたりに何やら妙な感覚を覚えると、仕上げに身体中の皮膚が透き通るように薄く敏感になってきて、身体を包む黒の学生服もまた変化するのが感じられた。
詰め襟の学生服はさらにピタッと皮膚に張り付きながら、光沢のあるレザーのハイレグスーツへと変化した。靴は脱いでいたにも関わらず、なぜかハイヒールのレザーブーツが出現し足を包む。
変身に要した時間は1分にも満たなかった。そこには長い金髪を腰まで垂らし、レザーのハイレグスーツとハイヒールブーツに身を包んだ、1人の美少女が立っていた。
「変身成功だ! 魔法少女♪奈里佳の誕生だね!」
大喜びで小躍りするクルル。それを見てハッと我に返った克哉、いや奈里佳は、大声を上げた。
「おい、いったいこれはなんだよ! なんで僕が女の子になっているんだよ!?」
半ばパニックになりかけている奈里佳。それに対して平然としているクルルは、何事も無かったかのような調子で答えた。
「えっ? さっきも説明したように、最大限に魔法能力を引き出せるような身体に変身出来るようにしただけなんだけど、何かまずかったですか? 奈里佳ちゃん?」
もしかして分かってて言ってるのか? クルルは異常なまでに平然としたポーズでそう言うと、きょとんとした表情をした。
「なにか、まずかったかって? まずいに決まってるだろ! それになんで“奈里佳ちゃん”なんだよ!」
ぷんぷん怒りながらまくし立てる奈里佳。怒った顔もまたかわいい。美少女は得である。
「金髪ですから、もしかして“ナリーカ”のほうが良かったですか?」
やっぱりとぼけているのか、的はずれなことを言うクルル。役者である。
「だからそうじゃなくて!」
さらにぷんぷんする奈里佳。
「ああっ! 名前の理由ですね。克哉から音を3つとって、奈里佳なんですけど、お気に召しませんでしたか?」
こちらもさらにとぼけるクルル。
「だ~か~ら~!」
怒りすぎて言葉が思い浮かばなくなったらしい奈里佳は、そのかわいい瞳に涙を浮かべだした。
「もう良いじゃないですか。むさいおっさんや、美しさに不自由している顔の女の子に変身しなくて幸せと思いましょうよ。それよりも奈里佳ちゃん。世界を救うために、頑張りましょうね♪」
クルルはのほほんとした顔で、ニコニコしている。
「でも、こんなハイレグじゃ恥ずかしいよぉ~。こんなんじゃ見えちゃうよぉ~」
顔を真っ赤にして、ぼそぼそと涙声で抗議する奈里佳……。金髪美少女が涙をためて恥じらっている姿には、元男の子という痕跡がどこにもなかった。
「ああっ! 服装が恥ずかしいと……。なぁんだ、そうだったんですか。ハイレグじゃダメなんですね。じゃあ、オプションをつけましょう」
そういうなり、クルルはぴょんっとジャンプして、空中でくるりと1回転した。その瞬間、またしても奈里佳の服装が変化を始めた。腰のあたりのレザーが、ぞわぞわと動き出したかと思うと、ぐいっと勢いよく伸びて、タイトなレザーのミニスカートが出現した。
「オプションとしてミニスカートをつけましたよ。これでもう恥ずかしくないですよね?」
きゃぴるん♪ としたかわいらしい表情で首をかしげながら、クルルは奈里佳に質問した。
「違う~~! そんなこと言っているんじゃなくて……。うぇ~ん。とにかくなんとかしてよぉ~」
突然、生まれもつかぬ女の子になって感情が不安定になってしまったのか、奈里佳は本格的に泣き出した。
「うぅ~ん、困りましたねぇ~。そうだっ! じゃあ身体に合わせて心のほうも“変心”させましょう!」
これは良いアイディアを思いついたとばかり、クルルはポンっと手を打った。
「えっ? えっ? 何? 何のこと?」
いきなりな話の展開に、とまどう奈里佳。そのおどおどした顔は、きゅうっと抱きしめたいぐらいかわいらしい。女王様な服装とおどおどした態度のギャップがなんとも言えぬ雰囲気を出している。
「真実の肉体を統べるにふさわしき精神よ。偽りの心を捨ててその姿を現せ。精神の自由を思い出せ。何をして、何を考えるのかはすべて自分自身によるものなり。既成概念にとらわれた偽りの心よ。奈里佳の姿にふさわしい、奈里佳の心を取り戻せ! 縛砕!」
とまどう奈里佳をしり目に“変心”の呪文をクルルが唱えると、奈里佳の態度がなにやらおかしな雰囲気になってきた。うつむいた顔からは戸惑いが消え、自信に満ちあふれたオーラが周りに流れ出したのだ!
「ふっふっふっふっふっ」
「ふぅーっ、ふぉっ、ほっ、ほっ!」
「おーっ、ほっ、ほっ、ほっ! ナイス、ナイスよ! クルルちゃん!」
静かな笑みから、徐々に高らかな笑いへと声を高めると、奈里佳は満面の笑みで、クルルを抱き寄せ、頬ずりをし始めた。されているクルルもまんざらな気持ちではないらしく、ニコニコとしている。
「どうやら喜んでいただけたようですね」
奈里佳の頬ずり攻撃が一段落すると、クルルは奈里佳に話しかけた。
「もぉ~ちろん! 大満足よ! 何だか世の中すべて私の為って感じ? ああっ、人生ってすばらしいってね。今の私は何でも出来る自信で満々よ! クルルちゃん、ありがとう」
さっきまでのおどおどした感じは微塵も感じられない“新生”奈里佳は、クルルに感謝の言葉を述べると、思い出したかのように話を続けた。
「ところでさっきの話に戻るけど、世界を救うって……、いったい何をすればいいの?」
その言葉を聞いて、使命を思い出したのか、ようやくクルルの顔が真剣な表情に戻った。
「その前に、現在のこの世界がどんな危機に陥っているのかを、奈里佳ちゃんのその目で確かめてみた方が話は早いと思うんだ。とにかく一度、外に出てみてよ」
クルルの言葉は、さっきまでの能天気な感じとは違って、重々しいものだった。
「何これ!? みんな何だか変よ! 人間というより、人形が動いているみたい!!」
道行く人々を一目見て、奈里佳は大声で叫んでしまった。そんな奈里佳をみんなはジロジロと見ているのだが、実際のところ、奈里佳の目には、みんなが魂のない人形にしか見えないので、ちっとも気にならない。
「結晶化だよ……」
苦しそうな表情でぽつりと答えるクルル。ちなみに今は奈里佳の腕に抱かれているのだが、ボリュームのある胸の感触を楽しんでいる余裕はないらしい。
「結晶化って、何よ? みんな人形みたいで気持ち悪いったらないわね!」
おー、やだやだ。といわんばかりの口調で手のひらを顔の前でひらひらさせながら、毒づく奈里佳。その態度は服装にふさわしく、まさに “女王様”である。
「人間は誰しも無限の可能性と、その可能性に基づく無限の未来を持っているんだ。克哉クンが、奈里佳としての可能性を持っているように、文字通り人間の可能性は無限なんだ」
神妙な口調でクルルは解説する。
「ふむふむ。それで?」
分かっているのか、分かっていないのか、奈里佳は軽い口調で話の先を促している。その間も奈里佳は道行く人々、いや人形人間達を、気持ち悪そうな嫌悪感のこもった目で見ている。
「ところが人間が、現在の自分だけを本当の自分だと考え、今持っている自分の可能性や未来の可能性を否定することにより、人間は結晶化しちゃう。もちろんこれは物理的な変化じゃなくて、奈里佳ちゃんや僕のような魔法力のある存在にしか関知出来ない変化なんだけどね……」
クルルは悲しそうにそう言うとため息をついた。
「で、この変化と世界の危機がどう結びつくのよ?」
いまだ話の先が見えない奈里佳は、クルルの前足の脇に両手を入れて持ち上げると、目線を合わせて質問した。奈里佳にしてみたら、もうこれ以上人形の姿をした人間達を見ていたくないという気分だった。
「人間が自分の可能性を閉ざすことによって、結果として世界の未来もその変動の幅が小さくなっちゃうんだよ。世界は様々な可能性を実現しつつ、無数のパラレルワールドを形成するんだけど、人間がその可能性を閉ざしていけば、世界の可能性も結果的に閉じられちゃう。そしてこの世界から分岐して存在するはずのパラレルワールドは、その可能性が現実化することなく、いわば孵ることのない卵のままで終わってしまうんだ」
ブロックされていた記憶によるものなのか、詳しく事情を説明するクルルである。
「でも世界の可能性が閉じられて、パラレルワールドが分岐しなくても、この世界はちゃんと存在しているわけだし、何の問題もないじゃない? どこが世界の危機なのよ。それよりもこの人形の群をなんとかしないと……。まったく気持ち悪いったらありゃしないわよ!」
いまいち良く理解できない奈里佳は、もう一度、周りの人形のような姿の人間達を見渡しながら毒づくと、うげぇ~と、舌を出した。
「この世界の真実の姿は、あらゆる可能性が実現された無数のパラレルワールドの現在、過去、未来、そのすべてで構成されている多層世界なんだよ。さっきも言ったように、これを魔法世界ネビルでは、時空球と呼んでるんだ」
言葉をかみしめるようにゆっくりと説明するクルル。その言葉を奈里佳は、眉をひそめて聞き入っている。
「そして人が自分の可能性のどの部分を選ぶかということは、基本的にはランダムなんだ。だから世界の分岐も基本的にはランダムで、量子のゆらぎに従って、すべてのパラレルワールドが現実化しているのが、本来の姿なんだよ。分かる? 奈里佳ちゃん」
クルルの問いに、うなずく奈里佳。実はよく分かってなかったりするのだが、早く結論を聞きたいので、とりあえず頷いたのだ。クルルもそうだが、奈里佳のほうも結構いい加減である。
「でも、この人形のような人たちを見てよ! 彼らは自分自身の無限の可能性を自分で否定して、たった1つの決められた未来だけを選び取ろうとしているんだ。これは通常じゃあり得ないことなんだよ! このままじゃ、この世界は変化を排除して、結晶化してしまう!」
クルルのただならぬ様子に、奈里佳は、ごくりと唾を飲み込んだ。
「で、本来あり得ないのに、何で世界が結晶化しちゃうのよ。だいたい世界が結晶化するとどうなっちゃうわけ?」
奈里佳の質問を受けて、クルルは必死に何かを思い出そうとしている。しばらく黙っていたが、ようやく思い出したのか、ゆっくりと口を開いた。
「……ディルムンの仕業だよ」
苦々しい口調でクルルはそう言った。
「あぁ~ん? ディルムンって何よ?」
聞き慣れぬ言葉に、聞き返す奈里佳。
「無数にあるパラレルワールドの中でも、タイムマシンを開発することに成功した世界の名前、それがディルムンなんだ。彼ら、ディルムンの科学は、おそらく時空球の中でも最高レベルにある。問題なのは、彼らがパラレルワールドの存在を認めていないということなんだ。彼らは時間流が分岐する現象を歴史改変であると認識していて、歴史が改変されると自分たちの歴史の流れが消えてしまうと間違って認識してるんだ」
クルルは感情を交えず、淡々と説明を始めた。
「実際には時間の流れは無数に分岐して同時存在しているんだけどね。それが分からないディルムンの住人は、時間の分岐点を見つけると、片っ端から、ディルムンへと続く未来以外の可能性をつぶしているんだよ。つまり、ディルムンの活動によって無数のパラレルワールドがその可能性を閉ざされてしまう。そして可能性を閉ざされたパラレルワールドは、動きのない結晶化した世界となってしまうんだ。たとえて言うなら、蛇行する川の流れから取り残された三日月湖のようなものに世界がなってしまうと考えてもいいよ」
奈里佳はちょっと首をかしげつつ、目を閉じて、ぶつぶつとつぶやいた。
「何言ってるのか分からなくなってきたわねえ~。でも、この私に分からないことがあるっていうのも悔しいし……。まっいっか。分かったふりでもしときゃ大丈夫よね♪」
そんなことを奈里佳がつぶやいているとは知らず、クルルは更に説明を続けた。
「ともかくディルムンの活動の結果、時空球を構成するパラレルワールドのうち、無視できないほど多くの部分が、可能性を閉ざされて結晶化してしまったんだ。そして結晶化した世界はやがて崩壊してしまう。三日月湖に川の流れが存在しないように、変化を無くして結晶化した世界は、時間流の流れから取り残されて、崩壊するのが運命なんだ。そして世界が崩壊するとき、その崩壊エネルギーは隣接するパラレルワールドの結晶化を促し、連鎖崩壊へと導くんだ。いまこの世界で人間達が人形のようになっているのは、世界が結晶化する前触れなんだよ!! これをなんとかするには、奈里佳ちゃんが活躍して、この世界の人たちに、“魔法の力”を知らせることと、人々が自分の可能性に気がついて、本当の自分を取り戻すこと。そして最後に……、あるかもしれないディルムンの妨害と戦うことが、この世界を救うことなるんだ!」
クルルはそこまで話すと、奈里佳の目を訴えるようにジッと見た。
「よく分からないけど、よぉぉぉ~く分かったわ!」
クルルの話を聞き終えた奈里佳は、左手にクルルを抱えたまま、右手で道行く人形のような人々の群に対して指さすと、言葉を続けた。
「人が自分の可能性を閉ざして結晶化すると、結果的に世界も結晶化する……。だから結晶化が進んでいる人形人間達が、思っていることを心の中にため込まず、好きなことを好きなように出来るようにして可能性を開放してあげれば、世界の結晶化は防げる♪ その為に私の魔法が必要なのよね♪ ディルムンだかなんだか知らないけど、私の魔法の前には、ちょちょいのちょいよっ♪」
理解できないことは、無かったことにして、とりあえず自分に分かる範囲の理解をした奈里佳は、そう言うと、大きくウンウンと頷いた。そして抱きかかえていたクルルを地面に降ろすと、奈里佳はさっきから思っていた疑問を口にした。
「ところでクルルちゃん♪ 私はどうやったら魔法が使えるのかしら?」
スパッと、そう言い切った奈里佳を見て、クルルは頭を抱えたくなってきた。
「奈里佳ちゃん。それ本気で言ってる!?」
信じられないっ! という顔をしつつ、クルルは奈里佳の顔を改めて見た。
「当たり前でしょ! 魔法を使うのは初めてなんだから♪ だから早く出してよ。ほら、あるでしょ? ステッキを振ると魔法が使えるとか、コンパクトにお願いすると良いとか……」
ワクワクした期待に満ちた目で、クルルを見返す奈里佳。その目を見ながらクルルは、ため息をついてしまった。
「うぅ~ん。奈里佳ちゃんの身体は、魔法能力を最大限に引き出せるような身体になっているはずなんだけど、魔法の使い方が分からないのか……」
しばし考え込んだクルルは、やがて顔を上げると奈里佳に、魔法の使い方を説明しだした。
「難しいことは省くけど、世界が世界として存在しているのは、人間が世界を認識しているからなんだ。人間が認識しない限り世界は存在しない。順序として、人間の認識が先で、いわゆる現実が後なんだ。この時代でも、量子論として同じような考え方がされてるはずだけど、知ってる? 奈里佳ちゃん」
クルルの言葉に対して、ふるふると首を横に振る奈里佳。まだ中学2年の奈里佳(克哉)にそこまでの知識を求めるのは酷である。だいたい作者からして分かってないのだから、奈里佳に分かるわけがない!
「何それ? 漁師がどうしたって?」
お約束なボケをかます奈里佳にあきれつつ、クルルは言葉を続けた。
「……漁師じゃ無くて、量子! とにかく認識が先、いわゆる現実が後。しかしそう考えてみると、認識を変えれば現実が変わるということになるよね。これが魔法の原理なんだ。科学は、物理的な現実を観測し法則を見つけだし、そして物理的に働きかけて現実を制御するよね。でも魔法は違う。心の中の認識を変化させることによって、物理的な現実を制御しようという技術、それが魔法なんだ!」
その言葉を聞いて、奈里佳の頭はこんがらがってきた。
「えぇ~と、つまり、心に想えば、その通りになるってこと?」
奈里佳はいまいち理解できない表情を浮かべつつ、クルルに聞いた。
「そうそう、その通り! 想いが現実化するのが魔法なんだ。ただ、世界は複数の人間によって同時に認識されているから、他者の認識を上回る認識力と観察力が必要なんだ。そして更に空間に充満する魔力、“気”と言えば分かりやすいかな。それをめいっぱい身体に取り込んで、自分を含めた周りの空間と自分自身を一体化させるんだ。その一体化した空間の中では、奈里佳ちゃんの確信を持った強烈な想いは全て現実化するんだ♪ だから奈里佳ちゃん、魔法を使うには……」
クルルの言葉をそこまで聞いた奈里佳は、右手をぐいっと前に出すと、手のひらをクルルに向けた。
「ストップ! 分かったわ♪」
ふっふっふっ、と笑みを浮かべつつそういうと、奈里佳は、高らかに宣言をした。
「つ~まり、私が強く想えば、何でもありってことね♪」
あまりにも途中経過を無視した理解の仕方だったが、結論は間違っていない。奈里佳はここに魔法の極意を理解した! ……そこの読者様、石を投げないでください! ……ああっ、痛い! お願い、やめて! 苦情およびお叱りは、感想掲示板のほうによろしく……。では、続きをどうぞ!
「そうなんだよ奈里佳ちゃん。何でもありっていうのが魔法なんだ。心に思い浮かべられることは全て現実化する! 想像は創造とイコールなんだ♪ さあ、分かったら魔法を使ってみてよ!」
期待に満ちたワクワクした目をしているクルルを前にして、奈里佳は右手の中指を特徴的に使用するガッツポーズを取った。
「よお~し。見ててね♪ クルルちゃん。世の中に満ちあふれた自分じゃ何も考えられない人形人間のおバカさん達に、私、魔法少女♪奈里佳のすばらしい魔法の力を見せつけてあげるわ!」
そう言うと奈里佳は目を閉じ、想いを言葉にのせて、イメージを爆発させた。
「スクリーン、スイッチ・オン♪ 中継開始!」
魔法の呪文にしては、やけに場違いな呪文が奈里佳の口から解き放たれた。まあ、わざわざ魔法っぽい呪文を言わなくても、普段慣れたイメージの言葉のほうが、想いを具象化しやすかったとご理解頂きたい。とにかく奈里佳が呪文を唱えた瞬間、青空に浮かび上がるように奈里佳の姿が大きく空に映し出された。奈里佳はそれを見て満足そうにうなずくと、その映像を見ている全ての人に話しかけたのだった。
「ハロー、私は、魔法少女♪奈里佳よん! みんな見てるぅ?」
テレビカメラに向かってピースサインをする子供のノリで、奈里佳は笑顔で手を振ると、ついでにウィンクをしてみせた。
空中に大写しになった奈里佳の映像を見た人形人間達は、初めて息を吹き込まれたかのように、次々と精気を取り戻していき、人間らしい外見を取り戻した。どうやら常識では判断出来ない出来事が発生したことによるパニック反応が好影響をもたらしたらしい。
「自分自身のやりたいことすら忘れてしまったおバカさん達! 私、奈里佳が、本当の自分を取り戻すお手伝いをしてあげるわよ♪ 好きなことを好きなようにやって何が悪いのよ! 世間体? 将来に響く? ノン、ノン、ノン、ノン。だぁ~から、ダメなのよ! そんなのは関係無し無し♪ パァーッとやりたいことやっちゃいましょ♪ それが世界を救うのよ! とにかく何かをする前に考えちゃダメ! 考えるから出来なくなるのよ。考える前にやっちゃえば、い・い・の♪ とにかくそういうわけで、奈里佳ちゃんのことよろしくね」
何がそういうわけなのか分からないが、先程クルルから聞いた話を自分なりに解釈した奈里佳は、軽い口調でその理解したところを説明した。そしてそこで話を終えようとしたのだが、ふと思い出したかのように奈里佳は言葉を続けた。
「あっ、そうだ♪ これから面倒なことをしなくても、みんなが奈里佳になれば、それでオールOK、すべて良しなんじゃないかしら? そうね。それがいいわ。そうしましょう♪」
これは良いことを思いついたとばかりに満面の笑みを顔に浮かべつつ、奈里佳は大声で呪文を唱えた。
「みいぃ~んな、奈里佳ちゃんになぁれぇ~~♪」
すると驚いたことに、街行く人々は一斉に変化を始めたのだった。驚くべき魔法力である。(笑)
奈里佳は基本的に中学2年生の克哉の身体がベースとなっているので、年齢的には13歳というところである。従って、OLや女子高生等は若干の年齢退行を起こしつつ奈里佳そっくりの身体へと変化した。しかし、元々が若い女性であるので、詳しく描写してもあまり面白くない。というわけでOLや女子高生等の変身についてはもちろん、その他の女性の変身についても割愛する。(作者注:たぶんどこからも文句は出てこないであろう……)
圧巻であったのは、やはり男性陣の変身だった。それでは以下にそれぞれの変身過程を描写するのでご堪能頂きたい!!!
変身パターン1.20~30代サラリーマンの場合
まずは7:3にわけられた髪の毛が、ベタベタなヘアーリキッドの束縛をものともせず、サラサラの金髪へと変化すると、風になびくかのごとくふぁさぁっと音をたてて一気に腰まで伸びた。
そして少したるみ始めた身体が引き締まると同時に、背丈も縮み出し、スーツがだぼだぼになるまでその変化は続いた。首が細くなった為にゆるんだネクタイが妙に色っぽい。ゆるゆるになったワイシャツの胸元は、ぷるぷると震えながら盛り上がり、ゆるんだワイシャツを部分的にきつくさせた。
さらに変化は続き、腰がきゅうっとくびれてウェストが細くなると、ベルトのゆるんだズボンがずり落ちかけたが、大きくふくらんできたおしりにひっかかってその落下をとめた。そしてふくらんでいたズボンの股間は、存在感の消えたすっきりとした状態へと変わっていった。
そしてアルコールにやられた肝臓によりぼろぼろになった皮膚も、血色が良くなると同時に血管が透けて見えるほどの白く健康的な皮膚へと変化した。
肉体の変化に数瞬遅れて、グレーのスーツはとろけるように形を崩すと、奈里佳と同じタイトなミニスカートをオプションでつけたレザーのハイレグスーツにその姿を変えた。そして黒い革靴はその素材を活かしたまま、ハイヒールブーツへと変化すると、すらりとしつつもむっちりとした脚を包み込み、変身過程は終了した。
変身パターン2.お歳を召したサラリーマンの場合
すだれ状態に禿げあがった頭に僅かに残された髪の毛の色が薄くなり、黒髪から金髪へと変化した瞬間、頭皮に掻きむしりたくなるほどの痒みを覚えたかと思うと、金色に輝く髪の毛がゾワゾワと生えてきた。お歳を召したサラリーマンが昔を懐かしむ余裕もないまま、その金髪は一気に腰のあたりまで伸びきると、サラサラと風に揺れた。
次に長年の不摂生でたるみきったぶよぶよの身体が、しゅるしゅると縮みだした。身体が縮むと同時に、特に腹の周りにまとわりついた不健康な贅肉は、より健康的な皮下脂肪としてぷにぷにと身体全体を覆い、やわやわで華奢な身体を造りだした。なおも余っていた脂肪は皮膚の下をにゅるにゅると移動すると、胸のあたりに集合してふんわりとした双丘を造りだし、ぷるるんっと揺れた。
さらに変化は続き、身体の中でもっとも太かったビール腹が、きゅうっとくびれて細いウェストを形成する。その為に大幅にゆるゆるになったズボンは、ウェストに比べれば相対的には大きなお尻にすら支えられることなく、ストンッと下まで落ちて、パンツが丸見えになってしまった……!
当然、パンツもずり落ちようとしたが、慌てて押さえる手に支えられ、その落下をとめた。しかしその手に、いつも付いているものの感触が感じられたのもつかの間、あっという間にその感覚は失われた。ちなみにその手は、白くて小さい、それでいてふんわりと柔らかい肉が付いている手に変化した。
そして最後に同じく服装が変化して全ての変身過程が終了したが、なぜか足下に落ちていたズボンだけが変化に取り残されていた……。
変身パターン3.お爺さんの場合
しわになった皮膚の下に、ゆっくりとふわふわした脂肪が付いてきて、皮膚に張りが戻ってきた。そして皮膚のシミが消えて、白く透き通ってくると、生命の象徴である赤い血の流れが、肌をピンク色に染めた。そうこうする間にも曲がった腰は伸び、老化と共に縮んだ身体は、一瞬、若返りと共に大きく成長しかけたが、若返りの進行が進んだのか、また縮んでしまった。
同じく若返ったことにより白髪が一瞬、黒くなったかと思う間もなく、金髪に変化すると、その薄くなった髪の毛が新しく生えて本数を増やすのと同時に、波打つように腰まで伸びて若返った身体をくすぐった。
しかし、くすぐったいと思う間もなく、胸がしくしくと痛み出すと、急にむにゅむにゅと盛り上がり、小柄な身体には似つかわしくないような、それでいて似合っているような、トランジスタグラマーな2つの特大な“肉まん”が現れて、ゆさゆさと揺れた。
さらに変化が続き、腰のくびれがあらわになってくる頃になると、その服装も徐々に変化をし始めた。味気ない地味な色のズボンがとろけるように変化すると、するすると上に流れてゆきレザーのタイトスカートに変化して健康な白い太股がその姿を見せた。しかし惜しいかな、色っぽいふくらはぎは革靴が変化したハイヒールブーツに覆い隠されていってしまったのだった。とは言っても健康的な色気が、妖艶な色気に変化しただけなのだから、良しとしようか。
変身パターン4.小学生男児の場合
まず身体がむくむくと大きくなっていくと同時に、柔らかな脂肪がぷにぷにと身体を覆い、そのシルエットは丸みを帯びた柔らかそうな感じに変わっていった。肩幅はさほど変化が無かったが、腰がまぁるく大きくなると、つられてウェストは細く魅力的にくびれてきた。
身体は大きくなったにも関わらず、服の変化は遅れているため、はち切れそうな半ズボンからはみ出した太股が、あふれんばかりの健康美を振りまいていた。また上半身のトレーナーは大きな胸に生地の大半をとられてしまったのか、ずり上がってしまい、かわいいおへそがのぞいていた。
とまどう間もなく、軽くカールした天然パーマな茶色い髪の毛は、ざわざわと伸びながら、金色に変化していった。髪の毛が腰のあたりまで伸びてくるころには、大きくなったおしりに対抗しきれず、半ズボンのボタンがはじけてしまっていた。
身体全体が大きくなるなか、一部の器官だけは小さく縮こまり、穴に潜ってしまった……。その瞬間、元小学生の顔には恍惚とした表情が浮かんだのだが、誰も気付いたものはいなかった。
変身パターン5. 犬&猫の場合
奈里佳の呪い(笑)は、人間だけを捕らえたのではなかった! なんと犬や猫までもその射程に捕らえていたのである。まずは四つ足で歩いていたその足が、ブルブルと震えたかと思うと、ぎゅうぅぅっと、骨が伸び、身体全体の骨格が、文字通りみしみしと音をたてて変化した。それと共に毛皮の下にむにむにと現れた筋肉と脂肪が最適配置されると、そこには毛皮を身にまとったグラマラスな犬科けもの少女と、猫科けもの少女の姿が、そこにあった。
しかし、けもの少女状態もつかの間、その身体を覆う毛皮が徐々に薄くなり、白い皮膚があらわになってきた。それにつれ頭の部分を覆う毛皮は、髪の毛へと変化すると、金色に輝きながら、長く伸びていった。髪の毛が伸びきると、そこには奈里佳そっくりの裸の少女が四つん這いで、きょとんとしていた。
なお、服を着ていないのは、犬や猫に服を着せるのは可哀想だからである。けっして作者の趣味だからというわけではない。(^^;)
老若男女、猫も杓子も、みいぃ~んな、奈里佳の姿に変化してしまった街は大混乱状態になっていた。あわてふためくものが7割に対して、喜んでいるものが3割と言うところであろうか。しかし徐々に落ち着いてきたのか、時間の経過と共に、我が身の変化を喜んでいる者が増えてきた。若返り組と隠れTS愛好者であろうか?
「うんうん。どうやらみんな、喜んでくれたみたいね。奈里佳、感激ぃぃぃ!!」
ブリブリのポーズを取りつつそう言った奈里佳が、ふとクルルをみると、クルルは顎を半分外しつつ唖然とした表情をしていた。口の端からよだれが垂れているのが、いとおかし……。
「ん? どしたの? クルルちゃん?」
奈里佳は、あくまでも軽いノリでさらりと訊いた。
「アガガ……。カクンッ。ハアハア、まさかここまで強力な魔法力を持っていたなんて。自分以外の人間や動物の肉体を変身させる魔法はものすごく魔法力を消費するのに、見渡す限りの人たちをみんな変身させちゃうなんて考えられない!!」
外れた顎を自分で戻して、クルルは唖然とつぶやいた。
「奈里佳は、ビューティフォーでワンダホーな天才魔法少女なんだから、これぐらい出来て当たり前なのよ」
チョモランマよりも高い奈里佳の自信である……。しかし、今使った魔法のパワーからすると、あながち根拠が無いとも言い切れない。
「そうだね。奈里佳ちゃんは天才だよ!」
気持ちを切り替えると、クルルは素直に奈里佳を賞賛した。やっぱりちょっといいかげんである。
「おーっほっほっほっ。なぁ~に、当たり前のこと言ってるのよ! あたしは天才! 世界一、ううん、宇宙一の天才魔法少女♪奈里佳なんだから!!」
高らかに笑いながら、鼻を3メートルぐらい高く伸ばした奈里佳だが、その笑いは長くは続かず、急に頭を押さえて、うずくまってしまった。よく見ると息も荒くなり、冷や汗もかいている。
「ううっ、何だか身体の力が抜ける……。ぎぼぢわるい……。吐きそう……」
そうこうするうちに、奈里佳の金色の髪の毛が、徐々に黒ずんで来て、ストレートの黒髪へと変化した。そしてみるみると逆変身をして、奈里佳は元の克哉の姿へと戻っていった。一瞬遅れてその服装も、奈里佳ちゃんルックから、詰め襟の学生服へと変化した。
「どうやら魔力を使い切っちゃったようだね」
奈里佳の様子を見たクルルは、当然と言わんばかりの様子で解説した。
「こんなにも大勢の人達を、一度に変身させちゃうからだよ。変身させられたみんなは、まだ自分自身が本来持っていた魔力を消費するまで、変身が解けないと思うけど……。それでもせいぜいあと数分もすればみんな元に戻っちゃうかな?」
そのまま独り言のように現状を解説するクルルだったが、克哉が、その身体をガシッと掴んだ。
「おい、クルル! 今のはいったい何だったんだよ! 僕はあんな変な性格じゃないぞ! こんなのイヤだよぉ~。魔法が使えるようになっても、これじゃ“悪い魔法少女”そのものじゃないか!!」
一気に恥ずかしさが爆発したのか、克哉は、顔を赤く染めて訴えた。そしてまだ変身が解けない周りの“奈里佳に変身した群衆”を、気味悪そうに見ている。自分以外は全員が奈里佳なのだから、そりゃあもうすごい光景である。ちなみにあちこちから高笑いが聞こえてくるのは言うまでもない。
「克哉クン! 奈里佳ちゃんは“悪い魔法少女”なんかじゃないですよ。世界の崩壊を救うという崇高な使命を持った“正義の魔法少女”なんですからね。ちゃんと自覚してくださいよ」
チッチッチッと、指(?)を振りながら克哉の発言を訂正するクルル。
「悪でも正義でも、どっちでもいいよ! 魔法なんか使えなくてもいいから、もう僕は奈里佳なんかにはならないからね!!」
今にも泣きそうな声で、訴える克哉。しかし、その訴えを聞いたクルルは、容赦なくとどめの言葉を克哉に吐いたのだった。
「でも克哉クン。さっきも言いましたけど、また一週間もして魔力が回復して、容量いっぱいにまで魔力がたまったら、自動的に奈里佳ちゃんに変身しちゃいますよ。もう克哉クンの身体は、僕の魔法でそういう身体に作り替えられてますからね♪ あっ、そうそう、オプションで心のほうもちゃんと奈里佳ちゃんに“変心”するようになっていますから、“変身”しても恥ずかしくないですよ」
ニコニコと答えるクルルの顔を、信じられないという目で見た克哉は、口をパクパクとさせた。
「そっ、そんな!? イヤだよ。元に戻してよぉ~」
克哉は半分泣きながら訴える。
「無理ですね。僕にはもう魔法力は残っていないですから……。というわけで、 克哉クン。いいえ奈里佳ちゃん! 世界を救うために、頑張りましょうね♪」
まだ変身が解けていない奈里佳の集団をバックに、ニコニコと笑顔を浮かべるクルルの顔を見て、克哉はめまいがしてくるのであった。こうして世界を救うという崇高な目的を持った“自称”正義の魔法少女♪奈里佳は、ここに誕生した。もっともその風貌は、完全に“悪い”魔法少女であった。もちろん今後の活躍も、その風貌に似つかわしいものになることは言うまでもないことであった……。
次回に続く!
予 告 編
またも奈里佳に変身した克哉は、新たな結晶化現象を発見した! その結晶化現象を修正して世界を救うため、魔法少女♪奈里佳の魔法が炸裂する。行け! ウェディング“快人”ヘイアーン。しかしそこにやってきたのはディルムンの超未来装備を身につけた自称正義のナノテク少女フューチャー美夏だった! 今、超絶少女達のバトルが始まる……。
次回、『みんなでウェディング』 お楽しみに!
前書きにもありますように、体調を崩しましてその結果、仕事も辞めることになりましたので時間だけは有る状態になりましたが、本日中にアップする01~08以降の続きや、その他の作品の続きにつきましては、体力と気力の回復次第ということになりますので、あまり大きな期待はせず、ゆっくりとお待ちください。
なお、別作品の【妖精的日常生活 お兄ちゃんはフェアリーガール】という作品がミッドナイトノベルズのほうに投稿されていますが、そのリニューアル前の【妖精的日常生活】についても後日投稿する予定です。