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ねこ日和 Ⅱ  作者: おりさくみづき
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Ⅱ-8 引っ越し

良く、「猫は家に付き、人には付かない」と言いますが、リュウとモモは違いました。

犬の様に、人に付きました。


私に2匹は付いたのです。

私が引っ越しても、引越し先に直ぐに馴染み、私が一緒にさえ居れば2匹は安心していました。


1994年。私と隼人との結婚生活は終止符を打つ事となりました。

6年間という短い結婚生活でした。


この年は、私の父が55歳という若さで食道ガンで亡くなった年でもありました。


しかし、現実は結婚してから3年くらいからもうふたりの仲は崩壊し始めたいたのです。


結婚して1年目は、私は隣のお嬢さん扱いをされていましたが、結婚して2年目にもなると、本家の嫁として扱われます。


そして、早く子供を!孫を!孫を!世継ぎを!世継ぎを!と、言われ続けるのです。

私は子供が嫌いではありませんでした。むしろ好きな方でした。


しかし、子供を持つという責任感がとても強く、そう簡単には子供を作る気にはなれませんでした。

犬や猫とは違うのです。


犬や猫でさえ、大切な命があるのです。

ましてや人間の子供です。慎重になって当たり前でした。


隼人はそんな私の気持ちを理解出来ないようでした。

隼人の子供を産めないから、私は隼人を愛していないのだと思ったようでした。


義母からも「隼人とはやる事はやってるの?やってるのなら何故子供が出来ないのよ?!」と夫婦のプライベートな事まで聞かれました。


なんてデリカシーの無い人なんだろう?そう思いました。


そんな、毎日が続きました。

精神的にも私はおかしくなっていきました。


私は良くひとりで泣いていました。

そんな時、リュウとモモが側に来て、「おかあしゃん、どうしたにゃ?」そう言っているかのように、私の手を2匹で舐めてくれるのです。


それだけが、私の唯一の癒しでした。

リュウとモモを抱っこしながら、良くひとりで泣いていました。


隼人はそんな私を見ても援護はしてくれませんでした。

私はひとりぼっちで戦わなくてはなりませんでした。


そして、負けたのです。

この家を出る事にしました。


猫が飼える家を毎日、会社の帰りに探しました。

休みの日も毎回探しました。


そして、見つけました。

その当時、私は派遣の仕事をしていました。


今の様なアルバイトの派遣ではなくスペシャリストとして扱われる派遣社員でした。

お給料もとても良く、ひとりで暮らしていける金額でした。


駅からは歩くと20分くらいはかかりましたが、日当たりが良く、猫には最適な環境でした。

私はその部屋を借りる事に決めました。


そして、荷造りを始めました。

それを見ていた隼人がこう言いました。


「ここを出ていくの?」

「うん、出て行くよ」


それ以上の会話はありませんでした。

毎日、仕事から帰ると荷造りをしました。


リュウとモモも荷造りされた箱の上に乗って寝たりしていました。

偶然、1階に下りたときに、義母さんに会いました。


「この家を出て行くの?もう久美ちゃんが作った茶碗蒸しが食べられなくなると思うと寂しくなるわ」

そう、義母さんは話していました。


私は、毎週日曜日だけ夕飯を作らせて貰っていました。

義父、義母、義弟、義妹、義妹の旦那、隼人、自分の分。総勢7人分の食事を作っていました。


毎回、私は茶碗蒸しを作っていました。

義父さんがとても好きで、毎回喜んで食べてくれました。


それも、もうお別れです。

私は子供を産むマシンではありませんでした。


義母さんは自分がどれだけ、私を苦しめた事を言ったのかを分かっていないようでした。

私は「この人は幸せな人だ」そう感じました。


そして、もうこの一族とは一生、関わりを持ちたくない!!そう思いました。

それくらい、私の心は傷ついていたのでした。


こうして平日に休みを取り、私はリュウとモモを連れて新しい新居へと引っ越したのです。



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