Ⅱ-7 運命のねこ
私は、その子猫を抱えて3階に上がりました。
そして、トイレの場所を教えました。
トイレは洗面所、お風呂がある場所にありました。
トイレの中にいれると、早速おしっこをして、綺麗に砂でほじほじして隠しました。
トイレの場所はもう覚えた様でした。
頭の良い子です。
その時、リュウがリビングからやってきました。
扉は閉まっています。
扉の枠は木で出来ていますが中の面は透明なガラスで出来ています。
そのガラス越しに2匹で「フー!!ハー!!シャー!!」が始まりました!!
先住であるリュウは負けていません!
しかし、新入りのシマシマ子猫も負けていません!!
小さい体の毛を逆立てて必死に「フー!!ハー!!シャー!!」と言っています!!
私は、ほおっておきました。
何日かすれば、仲良くなるだろう…そう考えていました。
それよりも、子猫の名前を付けなくてはなりませんでした。
とても可愛い顔立ちと、優しい性格をしている子なので「モモ」と名づけました。
それからこのモモを飼う事を義父さんの承諾を得なくてはなりませんでした。
いつこの話しをしようかと私は悩みました。
とても、言いづらかったのです。
何しろ義父ですから。
ここで、夫である隼人が話してくれれば良いのですが、それも当てになりませんでした。
隼人は私の援護はしてはくれませんでした。
自分で義父さんにモモの話しをしなくてはいけないのです。
いつしようか?タイミングを考えていた時でした。
義父さんの方からこう言ってきました。
「久美ちゃん、小さな猫いたねぇ。あの猫はどうしたんだい?まだ居るのか?」
「え?あ?義父さん、まだ居ます。その事なんですが…」
「あの子猫可愛いじゃないか?飼いなさい」
「え?飼ってもいいんですか?義父さん?」
「別に構わないよ」
「義父さん、ありがとうございます!!」
私は義父さんに頭をさげました。
義父は古い考えを持った人でしたが、とてもそう言う所は優しくて、こちらが言いにくいと自然と義父の方から聞いてきてくれる人でした。
これでモモをちゃんと飼えるんだと思うと嬉しくなりました。
義母さんも「あの子猫の名前は決まったの?」と聞いてきました。
「はい。モモと言う名前にしました」
「モモちゃんね。お友達の家の猫と同じ名前だわ」
そう言って義母さんも笑ってモモを受け入れてくれました。
そうこうしている間に1週間が過ぎました。
今まで、リュウとモモは「フー!!ハー!!シャー!!」の対決姿勢でしたが、気が付けば2匹で仲良く追いかけっこをしていました。
リュウはとてもモモを大切にしていました。
今までリュウは社会性の無い猫でした。
しかし、モモと出会った事で、母性が目覚めたのか?とてもモモを可愛がり優しい性格になっていきました。
いつも2匹は一緒でした。
相変わらず、義理の弟の部屋に忍び込んでは、今度は2匹でイカソーメンを盗み食いする様になりました。
イタズラするのも一緒でした。
寝るのも一緒でした。
ご飯を食べるのも一緒でした。
いつでもどこでも2匹は一緒でした。
そして、私とこの家を出る時も一緒でした。