Ⅱ-6 結婚
1988年に彼氏である隼人と結婚する事になりました。
私は当時25歳でした。夫となる隼人も25歳でした。
隼人の両親と隼人の兄弟姉妹との同居でした。
それと同時に新しく家を建て替え、そこに私とリュウも引っ越してくる事となりました。
隼人の父親は考えがとても古い人で、完全な二世帯住宅を建てようとはしませんでした。
とても中途半端な二世帯住宅でした。
お風呂とキッチンは1階と3階にそれぞれあるのですが、玄関が一つしかありませんでした。
玄関も別々な完全な二世帯住宅にしてしまえば、将来私たち長男夫婦が家を出たとしても、賃貸で収入が得られるだろうに…と、私などは思っていました。
しかし、私はとんでもないところに嫁に来てしまったと感じていました。
舅、姑、小姑がふたり、そして姑の親戚一同を相手にしなくてはならないのです!!
考えただけでも、波乱万丈な人生が待っていると感じてしまいました。
でも、リュウが一緒でした。唯一の味方がリュウでした。
夫となる隼人は、まだ子供で嫁と姑との関係など理解できませんでした。
付き合っていた頃のままが、そのまま続いていくだろうと思っていたようでした。
結婚とはそんなに甘くはないのです。
それを隼人は知りませんでした。
私たち若夫婦は3階に住む事になりました。
リュウも3階に居ました。
日当たりが良いので、いつも日向ぼっこをしていました。
とても幸せそうでした。
リビングはキッチンと繋がっており約20畳程ありました。
そのリビングにはローソファーが置いてあり、ガラスのテーブルが置いてありました。
そのローソファーでリュウはよく寝ていました。
リュウは義理の弟の部屋に行っては、よくイカソーメンなどを盗み食いしていた様でした。
義母さんの部屋にも良く出入りしていたらしく、何かの置物を倒したりしていた様でした。
イタズラはどこに行っても絶える事はありませんでした。
そんなある日。
妹から電話が来ました。
「あ、久美ちゃん、ケージある?」
「え?あるけど何に使うの?」
「うん。猫拾ったんだ。団地の原っぱで。まだ小さいよ」
「どんな柄した猫?」
「グレーのシマシマ模様の猫だよ」
「マジでー?見たいなー!!」
「じゃぁ、連れて行くから、よろしくねー!」
そう言うと妹は電話を切りました。
待つ事数分。
車の音がしました。
インターホンの音がしたので、1階まで降りて玄関を開けました。
すると、妹が立っていて手のひらに小さな子猫を持っていました。
「この子だよ」
「一応玄関に入りなよ」
私は妹にそう言って玄関に入らせました。
「可愛いねぇ。このグレーのシマシマの子欲しかったんだよねぇ。あたし」
そう、私が話すと妹は
「じゃぁ、後は久美ちゃんに任せるね。よろしく!」
そう言うと妹は帰ってしまいました。
私はあっけにとられてしまいました。
玄関先にはちょこんと、ちょっと大きなネズミみたいな生き物が座っています。
まだ、生後1ヶ月半くらいでしょうか?
私の片手の手のひらに乗る大きさです。
かなり小さい猫ちゃんでした。
でも離乳はしているようです。
グレーのシマシマ模様でしっぽが長くてとても可愛い顔立ちをしている女の子です。
この頃の私は、すでに転職しており、かなり良い給料を貰っていました。
なのでもう1匹猫ちゃんを飼う事は十分にできました。
この子猫こそが、リュウの運命を変える猫ちゃんだとはリュウは知る由もなかったのでした。