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魔猫の主 聖女 クリシア

倒れるシャルの背後に現れたのは、聖女 クリシアだった。それまで、狂乱したシャルに恐れをなし逃げ惑う兵士や民は、ほっとした表情になり、いつしか歓声と拍手が沸き起こっていた。

「拍手は、やめて」

クリシアは、口元に優しい微笑みを浮かべると、背後から光の矢を受けて倒れたシャルの顔を覗き込んだ。

「困ったわね」

深くため息をつく。

「何が、困ったのです?」

足元にいる魔猫が、聖女の顔を見上げる。

「地這いの兄弟を追いかけてきたけど、どうも、この子が絡んでいる様なの」

「なかなかの魔女の様ですよ」

「魔女なのか、そうでないのか、わからないけど、とても、深すぎて、私の手に負えないかも」

クリシアは、光の輪で、シャルの体を拘束した。

「どうして、この地にいるのかしら?」

魔猫は、そっと鼻先を、シャルに押し当てる。

「どこから来たんですかね」

「地の果てよ。東の国」

クリシアは、周りの兵士達を見渡し、一人の男性に光の綱の端を渡す。

「しばらくは、眠っていて起きないわ。可能であれば、なるべく東に進み、彼女を置いて来なさい。次の新月に光の輪は解けてしまう。」

「任せるのですか?」

「私達は、急いで、行く所があるの。やむを得ず、関わってしまったけど」

クリシアは、あまり、関わりたくない様だった。

「もう少しで、私のお役目は、終わるわ。その前に、もう一つだけ、最後のお役目を終えないと」

「早く、お役目を終えて、砂漠の故郷に帰りましょう」

「そうね」

クリシアは、魔猫と一緒にその場を立ち去ろうとした。

「待って・・・」

掠れたような声が耳に届いた。

「待って」

今度は、はっきりと聞こえる。

「置いていくな」

声は、倒れているシャルからだった。

「え?起きてしまった?」

見ると、目は閉じたまま、口元だけが動いている。

「縄を解け」

「ごめんなさい。ここで、解く訳にはいかないの」

シャルは、睡魔に襲われる中、必死に、起きようとしている。だが、クリシアの力の方が強いのか、何度も、意識を失いそうになる。

「私を離せ」

「ごめんなさい。行くわよ。魔猫」

クリシアは、魔猫に声をかけ、急いで、立ち去った。何かが、気になり、魔猫は、何度も、振り返った。光の輪に拘束されたシャルの姿が、兵士達に囲まれ、見えなくなった時に、大きな悲鳴と人々のどよめきが広がっていった。

「何?」

小高い丘の上で、クリシアと魔猫が、見下ろすとバラバラになったシャルの体を、剣に刺し、天へと差し出す兵士達の姿が目に入った。

「狂っている・・・」

クリシアは、呟くと、首を振り、魔猫をせき立て、足早い立ち去っていった。


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