果報松の一生
詩を知らぬ者が詩もどきを書く
散文を刻んで並べ
詩?ですとふざけたことを言う
そんな詩です
その道を行けば
狭い入り江の岸に出る
そこにそそり立つ巌には
なにものかに穿たれたような
縦長の大穴があり
そこから海に沈む夕日を見ると
幸福感に満たされるという
だがそこを実際に訪れる者は
あまりいない
そこに至るための
道筋がわかりづらく
崖を下る細い道はくねくねと曲がって
その途中に果報松が生えている
何故果報松か
常に強い潮風に曝されるため
その幹が地面すれすれに寝ているから
『果報は寝て待つ』の諺から来た命名
訪れる者がなかなか来ずに
風に曝され震えながら待つ一生
果報松の一生
夕日に温められる幸福の前に
孤独な寒さに震える長い時間
それが 果報松の一生
訪れる者はここしばらく絶えている
どうすれば詩を書けるようになるのでしょう?