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「それにしても、大きくなったねぇ」

 エルフのキャラバンと合流した僕は、思わずそう口にする。

 といっても、エルフの誰かが大きく成長したって話じゃない。

 キャラバンに参加してるエルフは、一応は誰もが一人前と認められる年齢だし、そもそも子供であっても、エルフは十年や二十年じゃ、そんなには大きくならない生き物だ。


「やぁ、エイサー様の驚く顔が見れるなんて、頑張った甲斐があったってもんですよ」

 誇らしげにそう言うのは、エルフの吟遊詩人であるヒューレシオ。

 もちろん彼も、別に大きく育っていたりはしない。

「ちょっと、ヒュー、別に貴方はそんなに、……少しくらいしか、頑張ってないでしょ。エイサー様、沢山頑張ったのはアイレナさんですからね!」

 なんてヒューレシオに突っ込むのは、やはりエルフの画家であるレビース。

 変わらない二人のやり取りに、僕も思わず笑ってしまう。


 では一体何が大きくなったのかといえば、それはエルフのキャラバンの規模の話だ。

 以前は八名程だったキャラバンの構成員が、今では二十を軽く超えてる。

 馬車の数も増えてるし、馬車に乗り切れずに馬で移動するエルフもいた。


 これだったら丁度いい。

 僕は馬車に乗ると酔うから、馬を一頭借りるとしよう。

 もう僕は以前の僕と違って、一人で馬の背に乗っての移動が、可能なのだ。


 エルフのキャラバンの規模の拡大には、恐らくは正と負の、両方の事情があるのだろう。

 正は間違いなく、エルフのキャラバンが行き交うようになった影響を受けて、森のエルフの中にも、外への興味を持つ者が増えたのであろう事。

 あぁ、それを悪い変化だと思うエルフも当然いるだろうけれども、僕の感覚からすれば、それは良い変化だと思える。

 ただ人間の世界に一人で飛び込むのは勇気が必要だから、キャラバンに身を寄せて同胞と過ごす。

 或いはエルフのキャラバンが、一つの動く森になりつつあるのかもしれない。


 負の影響は、世情の悪化だ。

 数を増やして纏まらなければ、今の大陸の中央部では、旅が危険になったのだろう。

 僕にとってはそんなに大差はないけれど、……自分で言うのも何だけれども、僕は例外の部類だった。

 並のエルフはそこまで戦闘を得意とする訳じゃない。

 それでも集まり身を寄せ合えば、不要な危険を遠ざけられる。

 またアイレナや、冒険者をしてきたエルフも所属するキャラバンならば、身を護る術も教えられるから。

  

 必要に迫られて、エルフのキャラバンは大きくなったのだと、そんな風に僕には思えた。

 その裏には、並ならぬ苦労があったに違いない。

 アイレナはもちろん、ヒューレシオやレビースだって、一杯頑張った筈なのだ。

 だからこそレビースも、ヒューレシオの頑張りを、完全には否定しなかったのだろう。


「うん、驚いたよ。ヒューレシオも、レビースも、凄いね。あぁ、ジュルチャにピューネも、久しぶり。頑張ったね」

 名を知るキャラバンの古参達の名を、一人ずつ呼んでいく。

 ピューネも結局、キャラバンに居ついたのか。

 踊り子にはなったのだろうか?

「はい、エイサー様が無事に戻られて、嬉しいです!」

 明るい声でそう答えてくれるピューネだけれど、今の彼女が何をしているのかはわからなかった。

 あぁ、でもジュルチャが後ろで目配せしてるから、どうやら無事にピューネは踊り子になったらしい。

 それは少し、いや、凄く、披露の時が楽しみだ。



 キャラバンはこれから、ズィーデンをぐるりと一周して、エルフの集落の長老達と話し合いを持つ。

 長老達と話し合うのは、集落に大きな負担のない範囲で、今回の件に関しての協力を要請する為だった。


 森のエルフ達が求めるのは自分達の安寧。

 しかし僕や、エルフのキャラバンが求めるのは、もう少しばかり大きな物。

 僕らは森の中だけではなく、大陸の中央部自体を、少しでも安寧に導きたい。

 この両者のズレは、早めに埋めておかなければ、思わぬところで足を掬われかねないだろう。

 故に話し合い、エルフ達の意思を統一する事が必要だ。


 大国となったズィーデンは随分と広いから、エルフが住む全ての森を回るには、それなりの時間が必要だった。

 まぁでも、焦る必要は別にない。

 むしろ今のところ、焦っているのは、和解を完全な物として安心したいのはズィーデンで、エルフは主導権を握る側である。

 焦らし過ぎればズィーデンが暴走する事だってあるかもしれないが、アイレナならばその匙加減は間違えない。


 だから僕は、そう、暫くはキャラバンの旅を、気楽に楽しむ事にしよう。

 ここは僕が、安心して気を緩められる場所の一つだから。


「エイサー様、東はどんなところでしたか?」

「はじめましてエイサー様、私はクキの森で生まれたラジェンドと呼ばれる者です。お目に掛かれて光栄に存じます」

 といっても顔見知りのエルフからの質問攻めや、初めて会うエルフからの自己紹介が終わるまでは、もう少しの間は落ち着けそうにないけれど。



最近、後書き告知ばっかりで申し訳ないんですが、

本日、10/15は書籍三巻の発売日となります


しかし三冊目だからといって、三刀流は口にくわえる必要があるのでお勧めできません

されどご安心ください

今回の三巻は今までの書籍よりも20~30くらいページ増えての382ページとなっているそうで、ここまで来るとお腹に仕込めば刺されてもワンチャン防いでくれるんじゃないかなって思います

防具としても使えるお得感ですね


中身は、大分頑張ったので、是非手に取って欲しいです

どうぞよろしくお願いします

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― 新着の感想 ―
[一言] 目指せ1000ページ超え!偉大な記録を塗り替えるのです!
[良い点] 懐かしい面々が出てきたこと。 思い出は、再び記憶へとかわっていく。 [一言] エイサーと初めて会うエルフたちってやっぱ心の底ではエイサーの生き方に驚いてんのかな。 表に出さないだけ? それ…
[一言] 踊り子にこだわるじゃないか……
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