表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
132/380

132

発表がございますので、後書きを見て行って貰えると嬉しいです


 どこまでも続く大草原。

 ……といっても、全く地形に変化がない訳じゃない。

 例えばなだらかに起伏する丘陵地があったり、幅は然程にないが底は意外と深い川が流れてたりと、変化はあった。


 すると当然ながら、その変化のある地形では、ずっと続く草地を行くのとは、また違った対処が必要だ。

 丘陵地はハーフリングの縄張りである事が多いから、近付く場合は彼らがそれを主張する印を見逃さない。

 ハーフリングは背丈の小さな種族であるからか、馬上から見下ろされる事を嫌う為、彼らと遭遇した場合は速やかに馬を降りる。

 川を渡るには流れが緩やか、かつ川底の浅い部分を正しく見極めてから渡る……、等といった風に。


 まぁハーフリングは、彼らの独自の価値観を尊重しさえすれば、親切で気の良い連中らしい。

 草原で人間が迷った時、ハーフリングに助けられたって話も多いという。


 でもそんなハーフリングと違い、出会えばどんなに気を付けていても、人に害を及ぼす種族も、この草原には住んでいた。

 丘陵地なんかよりも遥かに、この草原で近付いてはいけない場所は、草木が不自然な程に綺麗な円形に倒れた場所。

 或いは驚く程に巨大なキノコが、やはり円形に等間隔に並ぶ場所だ。


 それらはフェアリーサークル、妖精の輪と呼ばれる、……近くに妖精が暮らす証である。

 尤も実際の所、草原の民も妖精がどんな風に暮らしているのか、知ってる者はいないらしい。

 ただこのフェアリーサークルに下手に近付けば、そのまま帰って来れなくなる事を、彼らはよく知っていた。


 また気を付けなければならないのは、馬を含む家畜は、このフェアリーサークルにフラフラと引き寄せられるように近付いてしまうという。

 或いは朝靄、朝霧が出ている時に草原を移動すると、これもいつの間にかフェアリーサークルに引き込まれるのだ。


『一つは妖精、個を捨て全となる事で、彼らの死は意味を持たなくなった』

 群れ全体が、或いは種族の全てが一つの生き物として、集合意識によって動いているらしい妖精。

 彼らは臆病かつ慎重だが、同時に残酷で悪意が強い。

 妖精は自分の有利な場所に引き込んだ相手を、嬲って殺す悪戯を行う。


 かと思えば気に入った相手には親切にし、共に暮らす事もある。

 しかしその場合でもその相手を無事に帰す訳じゃなく、閉じ込めて大切に大切に遊ぶのだ。

 子供が宝物を玩具箱に仕舞い込むように。


 小さな肉体しか持たない妖精は、自分達が弱い事を知ってるから、時に他の種族の子を攫って集合意識に組み込み、育てて戦士として群れを護らせる。

 並べてみると本当に、性質の悪い害虫だった。

 まぁさっきも述べたように妖精は臆病で慎重だから、僕にちょっかいを出して来る事はないだろうけれども。


 そういえば、これは真偽の定かではない話なのだが、人が魔術の才の有無を測る際に用いる金属である妖精銀は、妖精が嫌う金属らしい。

 仮にそれが真実だとすれば、少しばかり興味深い。

 妖精銀の魔力を引き出す性質が、身体の小さな妖精にとっては致命的なのか、それとも彼らの集合意識を形成する能力に悪影響を及ぼすのか。



 馬は東へ、東へ進んでく。

 時に道草を食いながら、ゆっくりと何ヵ月、半年以上もの時間を掛けて。

 バルム族から譲り受けたこの馬は、穏やかな気性の賢い馬である。

 名前はサイアー。

 僕がバルム族と一緒に暮らす間に生まれた子で、世話にも参加してたから、僕にも良く懐いてくれてた。


 何時までも共にいられる訳じゃない。

 馬の寿命は人間と比べても尚も短いし、僕が移動する道によっては、例えば小さな船に乗る時は、場合によっては手放さなきゃならないだろう。

 でもその時が来るまでは、頼りにするし、精一杯に可愛がろうとも思ってる。

 

 草原の空は蒼い、地は草に覆われていて、碧い。

 馬の背に揺られる旅は、太陽の光は暖かく、風は涼しく心地良くて、とても眠たくなってくる。

 尤も僕の馬術の腕だと寝ると落っこちるから寝れないんだけど、ぼんやりとしながら前に進む。


 このまま東に進み続ければ、やがて草原を抜けて、黄古帝国の領土内に入るだろう。

 色々と情報を集めて見たところ、黄古帝国は大きく五つの州にわかれてるそうだ。


 まず黄古帝国の東に位置するのが、その東側を海に接する青海州。

 次に南側に位置するのが、同じく南側を海に接するが、州内の多くが険しい山地に覆われていて港が造れないらしい、赤山州。

 西側に位置するのが、幾つかの大河とその支流が州内を血脈のように走る、白河州。

 北側に位置するのが、火山灰の混じった雨風が吹き、冬には黒い雪が降るとされる、黒雪州。

 それぞれの州にはそれを統治する州王が存在し、四人の州王を中央にある黄古州にいる皇帝が従えて、黄古帝国は成り立っている。


 またそれぞれの州は暮らす人々にも特徴があって……、例えば赤山州には下半身が蛇の姿をしてる蛇人族が暮らしていて、赤山州近くに存在するドワーフの国と交流があるとか。

 蛇人族とドワーフは共に酒好きであり、とても相性が良いらしい。


 大草原を抜ければ、僕が最初に辿り着くのは白河州だ。

 領土内を縦横に川が走る地と聞けば、僕は中央部の小国家群を思い出すけれど、白河州は一体どんな所だろうか。

 話を聞くのと、実際に自分の目で見るのとでは、全く違う印象を受ける事だって多い。


 東に進むにつれ、水の気配が少しずつ強くなるのを感じる。

 僕はこの先に待ち受ける事に思いを馳せながら、サイアーの首を軽く叩く。


十四章スタートです

少し短めですが、頭空っぽにしてみれる空気の章かなと思います


本日六月十日より、

「転生してハイエルフになりましたが、スローライフは120年で飽きました」

のコミカライズがコミックアース・スター様で開始されます

是非ご覧になって頂けると嬉しいです

と、言っても公開は多分午後の六時くらいだと思うので、まだもう少しだけ後になりますけれども

なので明日の更新で、もう一度告知させてください

どうぞよろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 色んな意味で待ってました!
[一言] サイアー、早そうな名前ですな。
[一言] エイサーAcerの騎馬がサイアーSireか。語呂と牡馬を掛けた名前なのかな? 何だかそんなどうでも良いとこら辺が気になるw 名前と言えば、青白赤黒黄…ですか。東西南北も合致してますし風水思…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ