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序章
夜明け前、残月の光が微かに道を照らしていた。
少年は剣を握り、僅かばかりの食料を持って、カグラス(竜頭馬)に飛び乗った。恐怖心はあった、でもそれは好奇心を抑える理由にはならなかった。そして族の掟でもある英雄になるための旅にでた。
酷く荒れた道だった。少年の顔はうってかわり緊張に満ちていた。彼を遮るものは道だけでは無い。盗人、役人、そして世界いや少なくとも人間の世界は彼の敵だ。 彼はカイラ、レグ族の地竜の一人息子だ。世界が彼を憎んでいる。その事実はカイラの手網を持つ手を酷く強ばらせた。
視界が狭まった。右の林からサッと影が見えた。それを避けた所でカイラの記憶は途絶えた。