ダロサン1話その2
ー1話その2
「芳村ぁ!芳村ぁ!」
揺さぶられて、目を開けた。
日南子と日南子のお母さんがいた。
「えっ?夢?」
でも、彼がいた。
心配そうに見ている。
「熱中症かもしれない。救急車を呼んだから」
違うと言う間もなく、病院に運ばれてしまった。
自転車は日南子のお母さんのトランクで家に直行。
それから。学校が終わるとゲームセンターに行ってしまうようになった。
戦場の絆。筐体にはそう書いてある。2戦300円のゲームに使えるお小遣いでは、1日1回が限度。条例で高校生は17時まで。
ネットでウキや掲示板を読み漁る。
怖いオジサンが居ると筐体に入れない日も有る。
彼は平日は18時より早く来ないと店員の女の子が教えてくれた。
土日は彼が居ると、恥ずかしくてフロアに入れない。
少し涼しくなった金曜日。怖いオジサンが居ないのを確かめて、筐体に入った。
戦場の絆は4種類の攻撃ができる。
メインとサブ射撃。ビームサーベルで斬る3連撃。機体をぶつけるタックル。
上手く3連撃が入らない。1撃で終わってしまう。
チュートリアルが終わっても、3連が入らない。
オンラインに出ると、落とされまくる。
残暑が終わって、涼しくなった金曜日。
もう17時なので、ターミナルのモニターでリプレイを見てため息をついていた。
「なんで3連入んないの?もう~」
「アップビートで格闘トリガー引いてないか?」
彼が後ろにいた。
彼は気配が無いので、わからない。
「3連はダウンビートだ。楽器やってるだろ?」
「トランペットを」
「洋楽はアップビートだからな。全部逆に入る」
彼の横顔を見つめた。
「今日は早いんですね」
「室町店長から伍長の女の子が困ってるって聞いてね。マアヤさんとは思わなかった」
「私の為に?」
「そうそう早退出来ない。日曜なら教えられる。来るかい?」
はい。と言えずに
ウン
とうなづいた。
「よろしく!戦友」
グータッチが来た。
彼の拳は暖かかった。