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暗がり
鉱業地区の外れに、古い小屋があった。
夜空の黒が最も濃くなる頃、青年はこの住処に帰った。
ランタンの明かりを頼りに、部屋のランプを二つ灯す。
机一つがあるだけの、がらんとした部屋だった。隅の暗がりには布団が一枚たたまれている。
青年は水瓶の水をコップに取ると、机に向かった。
彼はしばらく放心した。
遠く都心に働きに出る日々が、心を疲れさせていた。
彼は静かに部屋の隅の暗がりを見つめていた。
何かとりとめもないことを思い出しながら、ただオレンジの薄明かりの中で動かなかった。
しばらくして、彼は何か小さな声を発した。
「どうか、丁重にお願いします」
彼は何度も繰り返した。
「どうか、丁重にお願いします」
「どうぞ丁重に、お願い致します」
いつしか彼は立ち上がっていた。壁に向き合い、繰り返した。
「どうぞ、丁重にお願いします」
「困りますよ、お客さん」
「どうか、丁重にお願いします」
「女の子も怖がってしまうので」
「どうか、」