第2話 転生だ!
目が醒めた…いや、自分は死んだ筈だから目が醒めると言うのは可笑しいのだが。
「うっ……ひぐっ…ひぐっ……」
このよく分からない状況を何とかするよりも、先ずは抱き着いたまま泣いている幼馴染みを如何にかすべきなんだろう。
「なっなぁ奏」
その瞬間、幼馴染み 奏はより一層泣き出してしまった……考えなくても奏は目の前でウチが死んだ所を見ていたんだ。
取り敢えずウチは抱き着いている奏を抱き締め泣き止む迄待つ事にした。
暫くすると泣き疲れたのか抱き着いたまま、スゥスゥと寝息を立て始めた、此の儘の体勢だと奏もウチも疲れるから…ウチの膝の上に奏の頭を乗せた所謂 膝枕を取る。
「其れにしても…」
奏の頭を撫でながら、この良く分からない空間について考える…とは言え全く良く分からない。
いや、奏が良く勧めてきた小説のジャンルに異世界転生だったりするのかも知れない。
異世界転生とは、ニートがトラックに轢かれ神様に憐れみの視線と言葉を投げ掛けられ、次いでにチート能力を貰い魔法とドラゴンが居る異世界に飛ばされ、可愛い女の子を侍らかす最近人気なジャンルだ。
確かにウチと奏が陥っているこの状況は確かに異世界転生と似ている、とするなら……次にウチらの前に神と呼ばれる存在が現れる筈だ。
「ばっかばかしい」
奏の頭を撫でながらそう吐き捨てる、そんな良く分からない事なんか起きる筈がない。
そうなるとこの訳の分からない空間が説明が付かない。
「此処は転生の間だよ『霜月神無』君、そして君が考えてた考えは合っているよ、君達二人には『異世界転生』をしてもらうよ、そして私は君達の言う『神』さ」
過剰な程白い空間に、唐突に響く男と女が混じった不気味な声が辺りに響く。
唐突に響いたその声に驚き、ウチはその声が聞こえた方向を見る……其処には何時からそこにあったのか『サッカーボール』が置いてあった。
「どうしたのかい?霜月神無君?あぁ……済まない今神の世界は忙しくてね、あぁ…つまり『異世界に君達現代人を送る時期』が来ていてね、その所為で君達に会う為の『身体』が無くて仕方無くこの球体を使っているのさ、そういう訳で暫く我慢して欲しい」
神と名乗るサッカーボールはそう言った、確かに神は様々な形をとっているが……流石に此れは余りにもあんまりだろ。
其れにしても転生だなんてな、馬鹿馬鹿しい創作の話とは思っていたが実際にあるなんてな。
「あぁ因みに恋人には君が此処に来る前にこの話はしてあるさ」
まさか事前に話を通しているとは…何事にも手際が良い事に越した事は無い。
「さて…霜月神無君と弥生奏ちゃんに私は話を通したよ、因みに君達の転生特典は…転生した時に分かるよ、勿論使い方は分かるようにしてるよ、まるで手足の様にね……あぁ転生特典は君達二人が欲しいと考えているものだよ、さて…言う事は言った、さぁ第二の人生を楽しんで来て来ると良い」
そうして、ウチの視界は真っ暗になった。