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第 話:月下の侵入者△
ふわりと降り立った。
「へー、あいつらにしたら随分良い部屋を貸し出したんだな」
部屋に入ってきて早々、そう告げる侵入者に芹奈は戸惑うしかなかった。
「えっと、どちら様……?」
芹奈は尋ねずにはいられなかった。
目深く被られた帽子に、時折ーー声から判断するに同い年であろう少年ーー彼の背後から吹いてくる風で揺れる黒髪に、その間から見える髪と同じ黒い目。
そして、何よりーー
(元の世界の服)
見れば分かるその服装は、明らかにこちらの物ではない。
「本当に、何も知らないんだな」
「え……」
芹奈の疑問に答えることなく言った少年に、芹奈は再度固まるしかなかった。
「何も知らないんだな、って、貴方は何か知っているの?」
分からないことが多すぎる芹奈にとって、聞いてばかりなのはいけないと理解しているが、知っていそうな人に聞くしかなかった。
少年は芹奈へ向けると、目を細めた。
「俺はーー……」
答えようとすれば、声と数人の気配。
「っ、いいか。俺がここにいたことは言うなよ!」
最後に芹奈へそう告げ、少年は部屋から去っていった。