表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイルツァーネの掟   作者: 獄炎の魔術師
第二章 フュリアーネのワガママ
17/23

漆黒の少女 三

「まだ体が痛むじゃろうて、薬湯じゃ。飲め」


塗り薬を施された後、シルフィは小さな木の器を持ってきてそう言った。本来ならば疑うべきなのかもしれないが、相手がなにか企んでいるなら、気を失っているうちにしてしまうはずだと自身を納得させ、されるがままに流されることにした。


「ありがとうございます」


「明日にでもまた体が悲鳴をあげるが、それは筋肉痛じゃから、安心せい」


ニヤニヤと笑うその顔は、まるでイタズラをした少女のような無邪気なものだった。


「あの、シルフィ…さん?質問しても良いですか?」


「答えないかもしれないが、許可してやろう。何じゃ?」


「ここは、森の中、ですよね?」


「おお、そうだとも。ここは森の中だぞよ?」


「一人で、住んでいるのですか?」


「たまーに一人ではなくなるがの、今回のようにな」


「…どうしてそんなに楽しそう、なんですか?」


先程から意味もなく笑顔が絶えないシルフィに、堪らず問いを投げる。答えない可能性があるならば、直接聞いても効果はない。様々な言葉の裏にある意味を捜す探さなければ…


「久しぶりに話せる相手が来たからのぉ、妾も胸が高鳴っているのじゃ」


椅子の背もたれに胸を預け、本来とは真逆の方向に座り、こちらを見ている。黒のローブが長くなければ、あられもないものが見えていたかもしれない。


「そう、ですか。すみません、軽装とはいえ、重かったでしょう…運んでいただいてありがとうございます」


「ふむ。まぁ苦しゅうないぞ」


そう言って再びニヤリと笑う。相手か何者か、それを聞き出したいこちらの意図が、シルフィにもわかっているようだ。


「ヌシは随分と聞きたがるのぉ、この前に来た奴はあたふたしてわめき散らすだけじゃったわ」


ありゃぁ、度肝が座っとらん。と、一切目線を逸らさずに話す。なにか品定めをされているようだ。

下手なことを喋らない方がいいかもしれないと、相手の出方を伺っていたが、やかてシルフィは、ふむ。と声をあげて立ち上がり、その小さな体を最大限まで僕に近づけて、こう言った。


「ヌシよ、1つ頼まれてはくれぬか?」


常闇のような黒い瞳は、先程までのふざけたそれではなく、外見とは不釣り合いの大人びた目をしていた。


「内容次第…です」


気圧された僕は、そう言うのがやっとだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ