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アイルツァーネの掟   作者: 獄炎の魔術師
第二章 フュリアーネのワガママ
15/23

漆黒の少女 一

フュリアーネが飛び出した後、僕は野党が現れたとされる森の近くに様子を見に行った。


もちろん、危険な真似をする気はない。しかし、なにかしらの罠を仕掛けるには奴らの活動場所を探る必要があった。


野党はどうやら、たまたま居着いただけのようだ。アイルツァーネの人間が関わっている節もなく、完全に別の村から来た荒れくれ者で構成されている。だとしたら…。


「あった…!」


自然のままに育つ森の中に、不自然なほど傷ついた木の幹が1つ。ナイフのようなもので乱雑に抉られている。

その木を起点に、周囲の木々を注意深く探せば似たような跡がいくつも見つかった。


これは、彼らの目印だろう。森に不馴れなため、こうして目印をつけないと迷ってしまうのだ。


「この先は…川か…」


地図をベースに、目印を線で繋げば、おおよその活動場所がわかる。

水の確保のためにつけてある目印は、真っ直ぐに拠点であろう洞窟に続いている。まだここに居着いて日が浅いからか、他の場所に移動するための目印はなかった。つまり、奴らは基本的には水を必要とするとき意外は洞窟の周辺を探索している。ということになる。


「これならなんとかなる。かな?」


開けた場所は少なく、どこもかしこも木々に遮られた森だが、だからこそできることもある。家に戻り、用意するものを算出してしまおう。


そう考えていたときに、なにやら物音がした。僕は慌てて目印から遠いところにある木に身を隠して様子をうかがう。


しばらくすると、話し声が聞き取れるほどに大きな声が迫ってくる。目視できる距離まで近づいてきた。どちらも髭面で、会話の粗野な部分が風貌にもよく出ていた。手にはバケツのような木製容器を持ち、腰に短刀を帯びている。数は二人。相手にしたら分が悪いので、やり過ごそう。


息を潜めて動向を探り続け、野党の二人がほとんど背を向けかけたその時、彼らの動きがピタリと止まった。

緊張が走る。手に力が入り、奥歯を噛み締める。


「なんだぁ?このガキは…?」


見つかったか?!と思わず身を乗りだしてみたが、奴らは僕に背を向けたまま、微動だにしていなかった。


「ガキとはなんじゃ、馬鹿者」


よく見れば、男たちの進行方向に、小さな少女がいた。背丈はリーネちゃんくらい小さく、そしてその身長ほどの漆黒の髪。全身を覆う紺のローブと三角帽子。それは、この森を散歩しに来た女の子とは到底思えない姿をしていた。


「ところで、お前たちは誰じゃ?」


彼女は、全く緊張感無く、そんな質問を野党に浴びせた。

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