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意地悪なマリー

作者: 瑠璃

あるところに、マリーというわがままな女の子がいました。

マリーはいつも不機嫌で、気に入らないことがあると人をぶち、かんしゃくを起こして泣くのです。


そのためマリーには友達がいませんでした。


あるときマリーのお母さんが赤ちゃんを身ごもりました。

マリーは最初は喜びましたが、お母さんが赤ちゃんの為の服を用意するとかんしゃくを起こして泣きました。


マリーがあまりに泣いて怒るので、お母さんは聞きました。

「マリーや、どうすればお前の機嫌は直るんだい?」


「私の服も買ってよう」


仕方なくお母さんは自分の服を売り、そのお金でマリーに服を買いました。


しばらくして赤ちゃんが生まれました。

お母さんが赤ちゃんにおもちゃを買ってやると、マリーはまた真っ赤になって泣きました。


「マリーや、どうすればお前の機嫌は直るんだい?」


「私のおもちゃも買ってよう」


お母さんは街へ行き、髪を切って売りました。

そしてマリーにおもちゃを買いました。


赤ちゃんがはいはいするようになると、マリーは毎日不機嫌になりました。

お母さんが赤ちゃんから目を離さないのが気に食わなかったのです。



ある日隣村のおばあさんが風邪を引き、お母さんが看病に行くことになりました。

お母さんはマリーに言いました。


「お母さんが戻るまで、赤ちゃんを見ていておくれ」


マリーは口を尖らせたまま頷きました。


お母さんを見送ると、マリーは赤ちゃんに仕返ししてやろうと企みました。


まず赤ちゃんの服をハサミで切りました。

赤ちゃんは寒くなってわんわん泣きます。

マリーはその声が大嫌いでしたから、よけいに腹が立ちました。


次に赤ちゃんのおもちゃを壊しました。

壊れたことが分からない赤ちゃんは、割れたおもちゃで指を怪我してしまいました。


真っ赤な血がシーツに落ちるのを見てマリーは怖くなりました。

大きな声で泣く赤ちゃんを置いたまま、マリーは家を飛び出しました。



お母さんが帰ってくると、赤ちゃんは眠っていました。

涙のあとの残る顔から、泣き疲れてしまったことが分かります。

小さな手には赤黒い血が固まっていて、水で洗ってやると小さな傷が見えました。

マリーの姿が無いことに、お母さんは悲しくなりました。


お母さんは赤ちゃんを抱いてお祈りしました。


「神様、マリーが赤ん坊に怪我をさせたことをお許し下さい。

マリーが叱られることを恐れ逃げたことをお許し下さい」


最後にお母さんは神様にこうお願いしました。

「どうかマリーのわがままをお直し下さい」


この願いを、神様はちゃんと聞いていたのです。


家を飛び出したマリーは裏の山の切り株に座り、野いちごを食べていました。


「赤ちゃんなんていなければいいのに」

そう言った時でした。


「マリー、お前は思いやりのない子じゃ。罰を与えよう」


どこからか声が聞こえて来ました。

するとどうでしょう。

マリーは急にしゃっくりが出てきて、止まらなくなってしまいました。


「ひっく、ひっく」

しゃっくりが出て、野いちごを食べることが出来ません。


マリーは小川へ水を飲みに行きました。

「ひっく、ひっく」

水を飲むことも出来ません。


マリーは腹が立ちました。

『きっと全部赤ちゃんのせいなのよ』



マリーは家に帰りました。


お母さんが裏の井戸にいることを確かめて、赤ちゃんのところへ行きました。

赤ちゃんは眠っています。


『あなたのせいで』

文句を言ってやりたいのに、しゃっくりのせいで声が出ません。


マリーは怖くなりました。

もしもこのままお話が出来なくなったら。

ご飯を食べられなくなったら。


マリーは泣き出してしまいました。

「ひっく、ひっく」

今のマリーには泣き声を上げることも出来ません。

大粒の涙を流しながら、マリーはお母さんのところへ行きました。


「おや、どうしたんだい」

お母さんは赤ちゃんの怪我のことを言いません。

「ひっく、ひっく」

「声が出なくなったのかい」

お母さんはマリーを抱き締めながら言いました。

「マリー、赤ちゃんにしゃっくりを聞かせてやろうじゃないか。きっと喜ぶよ」


赤ちゃんは目を覚ましていて、大きな瞳でマリーを見つめます。

痛い思いをさせられたのに、赤ちゃんはマリーを嫌いになりませんでした。

小さな手を伸ばし、マリーの頬を触ります。

「ひっく、ひっく」

マリーのしゃっくりを聞いて、赤ちゃんはキャッキャッと笑いました。


そんな赤ちゃんを見て、マリーは意地悪をしたことを恥じました。

「ひっく、ひっく」

マリーは怪我を謝ろうと思ったのです。

でも声は出ません。


マリーの目から涙が零れ落ち、頬を伝って赤ちゃんの手に落ちました。

するとその雫は金色に輝いて、辺りにまばゆい光を放ちました。


マリーの耳に、先ほどの声が響きます。


「マリーや、お前を許してくれるみんなのことを、お前もまた許すんじゃ。

罰は辛かったじゃろう。我慢を学び、わがままを改めなさい」


言葉が終わり、光が止む頃、マリーのしゃっくりはピタッと止まっていました。



マリーは赤ちゃんを膝に乗せ、初めてぎゅっと抱き締めたのでした。


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