エピローグみたいなもの
薄雲のヴェールの裂け目から 陽光が街を明るく照らし出し 光と影がはっきりと分かれる
例えば 白々と冴えるこの階段にも陰影が 思わず僕は 太陽に手をかざす
すると 僕の手の甲もまた影になり 手のひらは太陽に焼かれて見えなくなる
思えば 小さいころ 昼の星を見るために 僕は進んで自らの手のひらを焼いた
だが 今は 星らしい星は一つも見えず ただ手のひらに陽光を感じるのみ
おそらく 昼の星は 僕の視力と共に 陽に焼かれて消えてしまったのだ
ふと足元を見ると 小鳥があたふたと歩き回っている その足元にも影が憑き纏っていたが
小鳥は銀の翼でそれを切り離し 僕が隠していた陽の方へ飛び立っていった そして
小鳥は仲間と合流して だんだん遠ざかっていき やがて 星となった
風が吹いている こうしてまた 僕は昼の星を見たのだ その下にはおそらく影はなかっただろう
だけど 僕の足元の影は 相変わらず僕をにらんでいる 僕はしばらくそれをにらみ返した
風が降っていた 僕は影を見つめるのをやめて 飛び去った小鳥の後を追う