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1、良い考え

 かなりグダグダで、ちゃんと伝えきれるかわかりませんが、取り敢えずガンバリたいと思う所存です…(;´∀`)

「これだァァッッ! それ以外ないッッ!! もうやるしかない…ッッ!!」


 広い広い部屋の中、立った勢いで倒れた椅子の音と共に、僕の声が響き渡る。それに応えるように、一斉に僕の方へと期待の眼差しを向けてくる友人…もとい部下達。


「魔王様ッッ!? 遂に良い案を思いつかれたのですねッ?!」

「ああ! その通りさッ!

 全く…僕はなんて天才なんだろうッッ!!」



――やっぱり、窮地きゅうちに立たされると良い案が嘘のように浮かんでくるという噂は事実だったんだね!! 有り難う、僕の脳みそ!! やればできる子だって信じてた!!


 お気に入りの漆黒のマントをひらめかせて、一人、

くるくると華麗に舞い踊る。


――これが上手く行けば僕らはきっと……救われる!!


「フフフ……アハハハハ!! ウハハッ…うぐっ?!」


 思考に夢中になっているあまり、思いっきり指を本棚にぶつけてしまった。テンションマジ下がるわー。

 魔王でも痛いものは痛いのだよ。地味に痛い。ちょっと涙出たし。


「……勇者を討つ」

「えっ?…ぁっ……はぁッッ?!

 マジっすか?! マジっすかッ?! 魔王様、それマジでマジっすかァッッ?!!【あの勇者】ををををををッッ?!!!」


 僕の呟きに、

マジっすかッ?! を連呼しながら、泡を噴いて倒れてしまったのは友人…もとい、優秀なる部下の【ウルフ】。

 ギラリと鋭い牙がチャームポイントである彼は、しかし、僕の提案が余程ショックだったのだろう。

 倒れゆくその姿はまるで、道端で生き倒れている犬のようだ。ダラリと力なく垂れた舌と、ぴくぴく痙攣けいれんする体が何ともリアルな……。他の部下達も皆、似たような反応をしているね。

……無理もないか。


「…驚くのもわかる。だけど…これまで通り、【人族と魔族】が共に穏やかに生きていく為には【あの勇者】にこれ以上、好き勝手させるわけにはいかないよ…!

 このまま野放しにして、逃げ隠れするだけでは何も解決しない、と僕は考える。……どうだろうか…?」


 話をしている最中にもウルフを筆頭に、あまりの数の部下達が次々と失神していくものだからちょっと……ゃっやめてくれないかなっそのリアクション…!! 言ってる僕の方まで、とてつもなく不安になるだろう……?!


「でっでしゅがッ!!」


 失神もせず果敢に入ってきたのはゴブリン。部下の【ゴブリン】だ。

 おお!! どうやらこの子の精神力は、他の者より丈夫らしい。


「あにょゆーしゃは、みょうにゃわじゃばかりちゅかいましゅよ!!?

 まおーしゃまとはいえ、ただじゃしゅみましぇん!!」

「…ん? あ…ああ、うん…?」


…ごめん、聞き取りづらい…たぶん彼は

『あの勇者は妙な技を使いますよ』

的な事を言っていると思うんだ。あと、僕への心配…かな?

 なんと麗しい!! やはり持つべきは友人、だね!!

 短足でも猿顔でも君は 超っ絶☆イケメン男子だッ!! 僕が認める!!

 例え世界が…特に女性方が認めなくともね!!


「心遣い、嬉しいよ! ありがとうゴブリン…!

…確かにあの勇者は、今までに誰も見た事もない技や反則と言えるような魔術ばかりを使いこなす、得体の知れない奴だ…。

 魔王の僕でさえ、このままでは勝算は皆無、と断言すら出来てしまう。

 全く…こんな不甲斐ない魔王で本当に申し訳ないよ…」

「しょっしょんにゃ!! まおうしゃまはっ…!!」

「不甲斐ないなどと、とんでもないッッ!! そのような事を仰るのはもう、おやめ下さいッッ!!」

「ゴブリン…ウルフ…!!」


 くぬぅぅぅッ!! 涙腺がうるうると緩んでしまうじゃないかッ!! あっ、でもダメダメ!

 ここで泣いてしまったら、またイジリ倒されてしまうからねッ!


 僕は気合いで涙を飲み込むと、まぎらすようにヘラヘラと笑った。


「も~♪ そんな嬉しい事言ってくれちゃって~♪ 何もあげる物、ないよ~♪??

 あっ! アメちゃんあった~♪♪ お礼にふんぱつして2コづつ、あげちゃうぞッ☆☆??」

「チッ!! 飴玉かよッ…」


 こらッウルフっ! 明らかな舌打ちしない!!

 そういうのは僕に聞こえないようにそっと、…チッ…て、小さく舌を打つべきだと思うんだ。……いや、そもそも君はいつの間に生還していたんだい?? ついさっき、ショックで軽い瀕死状態になっていたのではなかったかな??

……なるほど!! 打たれても撃たれても何度でも立ち上がる、ゆるぎない精神の持ち主なのだね!!


「まるでゴキ〇リの生命力のようじゃないか…!凄いぞ、ウルフ!!」

「………は…?」

「お…? あっいや、気にしないでくれ。

 えっと…話を戻すけど、」


 コホン、と咳払いを一つ。

 毎度の事ながら、だいぶ話がそれてしまうところだったよ。

 やれやれ、歳をとるってイヤだね~。



「…勇者の暴走をこのまま放置すれば人族との共存はもちろん、魔族の生存も危うい…。

 この魔王城も今のところ僕の結界で隠れてはいる……が、遅かれ早かれいずれはあの子(勇者)に発見され、ここに保護している者達も皆【種族が魔族】という理不尽な理由だけで、多大な被害にあうであろう事は目に見えている……

 ならば…それらを回避するため、こちらから先手を打つしか道は残されていないのだよ!!」

「しかし……先手、と申されますと…?

…まさか!? 奇襲でもおかけになるおつもりですかッッ?!!

 バッカじゃねーのッッ!!! 死ぬぞッアホ!! アホクソッッ!!」

「うぅぅぅぅぅぅッッ(泣)!! ウルフのバカぁぁぁッッ!! そこまで言わなくてもいいんじゃないかなッ(泣)?!

 僕、泣いちゃうからねッッ(泣)(泣)!!?

 魔王なのに、泣いちゃうよッ(泣)?!!」

「御勝手に。」

「まおーしゃま、げんきだしてくだしゃい…!」


 しくしく泣きべそをかく僕を、いつもあわあわと遠慮がちに、小さな手で頭を撫でて慰めてくれるゴブリン。

 なんと、優しい子…!! やはり君こそが世界の 超っ絶☆イケメン男子だッッ!!

 それに比べてウルフなんて…っ! ウルフなんてっ…!! ウルフなんてただのわんわんだっ!! わんわん!!

 クソ…っ!! わんわんって響き、可愛いなぁ!!


「…で? ひょっとすると、先程仰られておられた良い案とは…先手を打つ、というそれの事ですか? なんと無謀な……」


 ぷにぷに肉球の付いた前足で、頭を抱えるウルフ。

 いいな、それ。気持ち良さそう。自分だけ…ケチだなぁ。


「無謀でも、やるしかないだろう?

…だけど何度も言う通り、本来ならこのような事を言うべきではないのだけれど……あの勇者に僕は対抗する手立てがまるで見つからない…。」



ーーいつもと変わらない、穏やかなあの日。

 何処からともなく現れた、…自らを【勇者】と名乗るあの【少年】。

 彼は何者で、その目的とは一体何なのか。残念ながら今のところ、全く判明していないんだ。

……情報が少なすぎる。


「……故に、僕はまともに戦うつもりもないしもちろん、君達には戦わせるつもりなんて初めからない。

 それこそ、大切な命をドブに投げ捨てるようなものだからね。そんな事は何があってもさせない。」

「はっ……? でっでしたらどの様にして奇襲など…?!」


 目を真ん丸に見開いて、ふさふさのしっぽをピーンっと立てるウルフ。

 これは驚いた時の、彼の可愛い癖だね。


「フフフフ…相変わらず君はせっかち屋さんだね…!

 だから僕は、最初に言っただろう?『とっても素晴らしい案が浮かんだっ』てさ!」


 僕は振り向きざま、彼らを安心させる為に満面の笑みを向けた……なのにウルフの奴ときたら急に耳を立てて、僕の顔を凝視したかと思うとすぐに、ぎこちなく…かつ、明らかに目をそらしやがった。


…………酷くない?

 そんなに痛い笑顔だったですか…?

 目も当てられないですか…?

 ヤローのくせにそれはないわ~的なアレですか?

……的なソレですねワカリマスごめんなさい、わきまえます。


「……要するに…さ、勇者の妙な力を軽く跳ね退けてしまえる程の、より強い者に、勇者をやっつけてもらえばいいって事なんだよね」


 とてつもなく神妙な表情で話してみる。

 これなら大丈夫……しかし、ウルフはとんでもなく失礼なことに、今度は僕の真面目顔がツボにハマったのか、笑いを堪えきれず『ぶはッッ!!』って吹き出しやがった。

……話、進まないんで続けます。


「勇者の使う妙な魔術や技さえなければ、僕の魔王としての力や魔術の威力の方が勇者より明らかに勝ってる…と思う。

 だから魔術に関しては、かなりのものだと自負しているんだ!

 まず、失敗する筈がない!!」

「『失敗する筈がない』…? 何をなさるおつもりで…?」

「まおーしゃま…?」


 不安げに見つめてくる友人達に、僕は自信たっぷりにこう告げた。



「【世界で最も強い者】をここに召喚するのさッッ!! そして協力してもらう!!」



と。



「「…はっ?」」


「それでは、いざ参るッ!!(←?)」


 二人(二匹?)の声がハモったのを合図に、僕は空間につけた切れ目から愛用の魔剣を取り出し、片膝をつくのと同時に剣を大きく地面へと振り下ろす。



『我、命ずッ! 最たる強人よ 此処に降り立たんッッ!!』



とかなんとか呪文を唱えて――刹那


 巨大な赤い魔方陣と共に現れた、灰色の煙と眼球が焼けてしまいそうな程の強い光、光、光――――――



「成功したかっ?!」


 残光と、もうもうと立ち込める煙が邪魔で、なかなか確認が出来ない!

…しかし、その中に揺らめく確かな人影を見て

「よっしゃッッ!!」

と拳を握り締める。取り敢えず召喚は成功したようだ!!

 よくやったッ!! 僕!!


 片膝をついて、両手で魔剣を地面に突き刺した格好のまま、前方の人影に意識を集中する。

 たった今、召喚されてきたであろう

【世界で最も強い者】がそこにいる筈なのだ。


…うああ…! 何だか緊張してきたんですけどッ!!

 どっどうしよう?! 最初はなんと声をかければ良いのかな??!

 来てくれて有難う? 僕達を助けてくれ??

……いや、最初はやはり、勝手に喚んでしまったことを謝るべきだよねッ!!


 悶々と考えている間に煙と光は微かなものになっていたようで、目の前に現れた【喚ばれた者】に意識を集中する。



「ぇっ…人族…?」


 そこに現れた姿を確認して、思わずそうつぶやく。というのも、何せ僕が喚んだのは【世界で最も強い者】だ。

 もしかすると、竜や怪獣などそういう…見た目から強そうな者が来るのではないかと、半分以上思っていたからなわけで…


「…いや、魔族かな…?」


…残念ながら、人型である事はわかってもそれが人族か、はたまた魔族であるかは、パッと見ただけでは流石の僕も見分ける事は難しい。

……取りあえず、観察してみようかと思う。



――フムフム…黒にも深緑にも見える、少し長めの髪…その緑よりも明るめの鋭い瞳。なるほど…歳は18、19といったところの少年か。まぁ、もし魔族の者であれば、見た目以上の年齢だろうけどね。

 しかし、まだこちら…というかこの状況に気付いていないのか、その瞳は僕に向けられてはいなかった。


 おおっ…美少年…!? こりゃ、女性方が放っておかないだろうねぇ。


…それが最初に浮かんだ、感想だった。

 いやいや、それはどうでもいいだろと自分にツッコミつつ、もっとよく観察して……ある違和感に僕は気付いてしまった…。


「………(もぐもぐ…)」

「…………」


…そう、このイケメン君…右手に赤いおはし、左手にはご飯が半分くらい入った、白に青の三本線模様入りのお茶碗ちゃわんを持って今もなお、片頬をもぐもぐしながら…更にきっちりと正座までして淡々とお食事をしていたのだ!!


……それも無表情で。




 あっ…お食事中だったんですね……

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