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笑顔がステキな頼りになるオトコノコのお話

 あーるぴぃじぃ4話目。レベルとスキルが目に見える世界で、何やら隠し事のありそうな、笑顔がステキな頼りになるオトコノコのお話。

 あたしのクラスの学級委員長、委員長くんことさかき俊夫としおくんはよく気が付く人だ。誰かが困っているとすぐにそれを察して助けに入ってくれる、委員長おぶざ委員長っ!って感じのいい人だ。悩み事があれば真摯に相談に乗ってくれるし、クラスの中で何か不満や問題があるようなら直ちに改善する方向で率先して頑張ってくれる。

 とはいえ、彼の基本的なスタンスは「手助けするけど解決は自分でするべき」というモノであるらしく、自分の力で問題を解決しようとしない人に対してはけっこー冷たかったりする。

 先日あたしが数学の宿題を忘れたときに「いいんちょーくんなんとかして?」ってかわゆく微笑んだら、彼は爽やかな笑みで「宿題は自分でやるべきだよ?」ってわざわざ手作りのヒント集をあたしにくれた。それは教科書のどのページに解き方が書いてあるかを記した物で、直接ノートを写させてくれたりはせずに、わざわざ手間をかけてそんなものを用意してくれる所が委員長くんらしかった。

 見た目はけっこー普通でそれほど人目を引く容姿というわけでもないのだけれど、内面からにじみ出るかっこよさというのか、うちのクラスの女子には密かに人気がある方だ。

 ……そんな彼なのだけれど、なぜか特定の親しい友人を作らないことで有名だったりする。

 そもそもの発端。榊くんが親しい友人を作らない、というウワサの元になったのは、とある出来事が原因だった。

「ねえ、誰か、いいんちょーくんのレベルいくつか知らない? あと、彼ってどんなスキル上げてるのかな?」

 笑顔が素敵な頼りになる委員長のウワサを聞きつけて、他のクラスからやって来たミーハーな女子がうちのクラスの女子に問いかけたこの一言に、クラスの誰一人として答えることが出来なかったのだ。



 この世には、レベルとスキルという概念が見に見える形で存在する。

 自分のレベルやスキルというのは、かなりプライベートな情報だ。特にスキルには、これまでその人が何をして来たのかが如実に表れる。あんまり大きな声では言えないけれど、たとえばあたしなんかは妄想スキルがけっこー高かったりして、そういうのがオトコノコにばれたりしたら「えっちな女」だと思われかねない。だから基本的にはレベルやスキルといったものはあまり気軽に他人に教えるような情報じゃないのだ。

 とはいえ親しい友人間では、自分のレベルやスキルなどをある程度お互いに見せ合うのが普通で、逆に言うと相手のそれを知らない、自分のそれを相手に知らせないということは、それほど親しくないということにつながる。

 ようするに誰も榊くんのレベルやスキルを知らないということは、彼と親しい人間がクラスには一人もいないということを意味するのだった。



 隣のクラスの女子襲来事件があってから、当然うちのクラスでは「彼のレベルやスキル」が話題になった。あたしたちの年代だとだいたいレベルというのは年齢と同じになる。中学二年生なので当然レベルは十三から十四くらいなのだろうと予想はできるものの、どういうスキルを伸ばしているのかは誰も知らなかった。

 例えば特定のスポーツに秀でていたりとか、特定の教科が得意だったり苦手だったり、その程度のことからでもだいたいどういうスキルを伸ばしてるのかは想像がつくものなのだけれど、困ったことに榊くんはスポーツも勉強も割合よく出来るし、何をやらせても標準以上にそつなくこなすので、どういった方向にスキルを伸ばしているのかがまったく想像がつかなかった。

 直接尋ねたら案外気軽に教えてくれたのかもしれないけれど、レベルくらいならともかくスキルを尋ねるというのはある意味で「あんたの性癖教えて?」と言っているのに等しいわけで。

 奥ゆかしいオンナノコとしては、オトコノコにそういうことを気軽に尋ねるわけにはいかなかったりしたのだった。

 ……そこ、どこが奥ゆかしいんんだ、とか首を傾げないように!

 でまぁ女子連中で、なんか聞きづらいよね、あんた聞いてきなさいよ、えーやだー、なんてこそこそ話をしていたら、あたしの親友、みっちーこと美知子がひとつため息を吐いて言った。

「そんなの直接聞きに行けばいいじゃない」

「うー、そう言うけどさ、ちょっと直接は聞きにくいじゃない。みっちーだって、そういうこと男子に聞かれたくないでしょう?」

 あたしがちいさく口をとがらせると、美知子はにやりと微笑んだ。

「あらー。わたしはマイと違って、他人に知られて恥ずかしいようなスキルは高くないわよ?」

「みっちー声が大きい!」

 あわてて美知子の口をふさごうとしたら、彼女はあたしに向かって小さく目配せした。

 え、もしかして今の、わざとまわりに聞こえるように言ったの?

 榊くんの方を見ると、彼も美知子のセリフが聞こえていたらしくこちらを向いていた。

 美知子は小さく微笑んで榊君に声をかけた。

「ねえ、委員長。今自分が話題になってるって自覚あるんでしょう? 他人に知られて恥ずかしいスキルがあるんじゃなかったら、大人しくみんなに公開しない?」

 言いながら、美知子はスカウターの電源を入れて榊くんの方に向けた。どうやらステータス閲覧の許可を求めたようだった。

 美知子の問いかけに、クラス中の視線が榊くんに集まった。榊くんはちょっと困ったように微笑んで、ただ「ごめん」とだけ言った。

「……そう。つまり、他人に知られると恥ずかしいスキルが高いわけね?」

 意地悪な笑みを浮かべる美知子に、榊くんは爽やかな笑みを返した。

「そう思われても仕方が無いね。好きに想像してくれていいよ」

 そう返されては、何も言えないみっちーであった。

「……無理に聞こうとして、ごめんなさい」

 美知子が素直に謝って、その話題はここまでという感じに収まってしまった。



 とはいうものの、裏では女子連中にかぎらず男子までまきこんでいろいろなウワサが出回るようになっていた。

「いいんちょって、何やってもすごいしさ、実はすっごくレベル高いのを隠したくて誰にも秘密にしてるんじゃない?」

「ありそう。えーでも高いのが恥ずかしいってどゆこと?」

「そ・れ・は。アッチの方とか?」

「アッチ?」

「ほら、男女のアレコレってすっごく経験値はいるってウワサじゃない?」

「えー、もしかして、委員長くん裏で女の子とっかえひっかえしてるとかー?」

「んー、どうかなー。委員長くんだし。親しくなりたい女の子はいっぱいいると思うけど、彼ってお付き合いするなら、真剣につきあってくれそうだし?」

「そうだねー」

 とまあそんな感じで、「委員長君は女子大生のカノジョがいて日頃からイロイロなことをしてるせいで、同年代と比べてレベルが飛びぬけてるからナイショにしているに違いない」だとか、「イヤじつはかなりディープなオタク趣味があってそれがばれるのが恥ずかしいんじゃないか」などなど思春期特有のとんでもない憶測が囁かれていたのだった。

 しかしクラスで一番ずけずけと物を言う美知子が尋ねて答えてくれなかったものだから、改めて本人に確かめようとするものは誰もいなかったのだが……。


 あたしは、ひょんなことから委員長くんの事情を知ることになってしまったのだ。

オチらしいオチもなく前フリだけで終わってしまってごめんなさい。

基本は各話完結のつもりだったのですがうまくまとまりませんでした。

委員長くんの事情は「汗と努力のオトコノコのお話」に続きます。

全部続けて書くとちょっと長くなりそうなので分けることにしました。

委員長くんと「素敵に無敵なオンナノコのお話」で出てくる予定の悠里さんの二人はもともと長編書くつもりで練っていたネタなのでなかなかきりが良い所で文章が終わりません……。

次が「汗と努力~」と「素敵に無敵~」のどっちが先になるかはいまのところ未定です。


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