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不器用な現実主義者のオンナノコのお話

 あーるぴぃじぃ3話目。レベルとスキルが目に見える世界で、夢をあきらめた不器用なオンナノコのお話。

 あたしの親友、みっちーこと神原かみはら美知子みちこは現実主義者だ。

 だから、なのか、それとも単にいじめっ子属性でも持っているからなのか、彼女はどうにもクラスメイトのタカシ君の「お馬鹿」なところが気に入らないらしい。

「馬鹿じゃないのアイツ。魔法使いになんてなれるわけないじゃない!」

 タカシ君が「俺は三十までドーテーを守り抜いて魔法使いになる!」と叫ぶたびに美知子はそうつぶやいていたけれど、一応クラスの空気は読むらしく、わざわざ面と向かってタカシ君に言ったりすることは無かった。

「みっちー、タカシ君に興味津々?」

 あたしがにやにやしながら尋ねると、いつものように美知子は肩をすくめてかぶりをふった。

「あんたも馬鹿なんじゃないの? 何でも色恋に結びつけるなんて」

「恋に興味がない方がおかしいと思う。十代なんてあっという間だよ? 命短し恋せよ乙女ってゆーじゃない?」

 だいたいみっちーは美容と健康にお金と手間暇かけてステキなスタイルを維持している上に、ファッションにも気を使っていつもオシャレな格好をしているくせに、なぜかあんまり色恋沙汰に興味がなさげなところが変だ。

「恋なんてただの勘違いでしょう? 恋人同士だなんて互いに互いを勘違いするから成り立つだけの関係じゃない」

 うっわー。みっちー言い切っちゃったよ。

「じゃ、みっちーはなんでオシャレしてるの?」

「女に生まれた以上、美しくあろうとするのは当然でしょう? 別に男引っ掛けるためにお金と手間暇かけてるわけじゃないわよ……?」

「ふーん」

 口では興味なさげな割りに、なんだか少し頬を染めたりして乙女っぽい仕草をするところを見ると、本心ではオトコノコに興味ありと見た!

「で、はぐらかされちゃった気がするけれど、結局のところタカシ君のことどうなの?」

 ニヤニヤと笑いながら問いかけたら、美知子は深くため息をついた。

「……中身が、アレじゃなきゃね」

「……ああ、うん。確かに」

 言動はどうあれ、実際タカシ君は見た目だけはかわいいのだ。オトコノコにカワイイが褒め言葉になるとは思わないけれど。ときどき無性に彼に女子の制服を着させてもふもふしたくなる衝動にかられるのはあたしだけではないはず! ……え、あ、あたしだけの特殊な性癖じゃないよね?

「それにやっぱり、現実的じゃないわ。魔法使いになりたいだなんて……」

 美知子がもう一度深くため息を吐いた。

「あたしは、夢を追いかける人はかっこいいと思うけどなー? 流石に魔法使いはアレだけど」

 レベルやスキルが現実に存在するとはいえ、流石に魔法だなんて存在しないものを追いかけるのはちょっとどうかなって思う。




 全ての生きとし生けるものにレベルという概念があることが世に知られてから、まだそれほどの年月は経っていない。とはいえ、科学的にその概念が現実に存在することが確認されてからその研究はかなり進んでいる。

 真っ先に否定されたのは、超能力や魔法といった特異な能力の存在だった。自称超能力者や、魔法使いといった人達は、その能力にあたるスキルやアビリティを保持していなかったのだ。その代わりに詐術だったり手品だったりのスキルが高いことが判明して、そういう特異な能力は存在しないということになってしまった。

 タカシ君いわく、「今の世の中で確認されていないからって、無いから無いなんて証明できるわけ無いじゃん」だそうで。お馬鹿はお馬鹿なりに賢いというか、たしかに「無い」ことを証明するのは難しい。悪魔の証明ってやつだ。

 でもだからって、世界中でまだその存在が確認されていない「魔法」なんてものを目指すのは、やっぱりちょっと現実的じゃないと思うのです。




「だいたいね……」

 美知子がちらりとタカシ君の方を見ながらつぶやいた。

「タカシのやつは、なりたいなりたいって叫ぶだけで、なるための努力をまったくしようとしないじゃない。わたし、そういうところがだいっきらいなの!」

「あー、たしかに。矢野センセが魔法だーって手品見せたときも、先生に魔法を教えてくれとは一言も言わなかったしね、タカシ君」

「そうよ。わたしがどれだけ努力して、それでもなお届かなくてあきらめたと思ってるのっ!」

 美知子がどん、とあたしの机を拳でたたいた。

「へ?」

 みっちーが綺麗になるための努力をしているのは知っているし、実際その効果も出ているのに何をあきらめたって言うんだろう?

 瞬きをして美知子を見つめると、口元を左手で押さえていた。いかにも失言した、って感じ。

「いえ、なんでもないわ」

 ぶるんぶるんと首を左右に振って、ごまかすように美知子は笑った。

「でも、そうね、ちょっとイイコト思いついたわ」

「……みっちー、なんかオーラが黒いよ?」

「あいつに現実ってものを教えてあげるのも、いいかもしれないわね?」

 くすくす笑う美知子が、ちょっと怖かった。




 ……この数日後、タカシ君はみっちーに襲われてドーテーを奪われることになった、らしい。

 流石にちょっと聞くわけにはいかず、具体的に何をしたのかは知らないけれど、タカシ君とみっちーの二人ともがレベル上がっちゃうような経験をしちゃったことだけは確かだった。


「これで、タカシも現実を見ようって気になったんじゃないかしら?」

 つやつやとした笑顔で、美知子が笑う。

「……あー、タカシ君、自殺しかねないくらいに落ち込んでるっぽいケド?」

 あたしのつぶやきに、美知子は笑顔で答えた。

「だったら、死ねばいいのよ」

 うわー。流石にそれはひどくないかい、みっちーさん?

「夢破れて、それでも夢を追い求めるようなら。そのときは……惚れてあげてもいいわね」

 美知子はそう言って、まだ机にうつ伏したままぶつぶつつぶやいているタカシ君の方を見つめた。なんだかその横顔は、とても優しかった。

「……なんだ、タカシ君のこと結局好きだったんだ?」

 恋愛感情の無い体だけの関係ならひいちゃうところだったけれど、美知子がタカシ君に惚れているのなら応援するのにやぶさかじゃない。それとも、身体をかさねたら心まで魅かれちゃったというやつなのでしょうか?

「ばーか、そんなんじゃないわよ。今はまだ、ね」

 微笑む美知子を見ながら、あたしはみっちーって不器用、と心の中でつぶやいた。

 今の所、あと2話分お話のネタがありますが、次の更新は未定です。

 次は「素敵に無敵なオンナノコのお話」のつもりですが、

 オンナノコ→オトコノコ→オンナノコで来てるので、男の子を先にするかもしれません。


 ネタバレとか裏設定とかお嫌いな方は、以下の後書きは読み飛ばしてください。






 タカシ君とみっちーさんは、設定上本番は行っておりませんが、普通に書くとやっぱり十八禁な感じになってしまうので、たぶん具体的に何があったのか今後(書いたとしても)ここで発表することは無いと思います。

 なので短く書いてしまうと。

”みっちーさんがタカシ君のお尻の処女を奪った”

 という感じです。

 みっちーさんはその昔、魔法少女を本気で目指していて、いろいろ努力をした末に叶わないのだとあきらめています。「なりたい!」というだけで全然努力しようとしないタカシ君のことが、ひじょーに腹立たしかったので、コトに及んだわけですね。彼の信じる手段を叩き潰してやったら、ちょっとは現実見るんじゃないかと。

 いろんな意味でタカシ君にはトラウマものの経験だったわけですが、彼が立ち直れるかは未定!

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