追憶
想うことすら許されないなら
私は、永遠にこの罪を重ね続けよう
こんなにも離れてなお、君を想わずにはいられないのだから・・・
追憶の中はいつだって美しい
君がいて、私がいて
それだけで幸せだった昔
君を好きすぎて離れたくなくて仕事をサボる私を
君は笑いながら呆れていたね
あの頃は君がいれば怖いものなんて何もなかった
ただ君だけが大切で、私の世界はそこで完結していて
それがもたらす影響を少しも考えずただ
夢を見るように君を愛していた
――雨が降る前の空みたいに曇る、その瞳に気付かないまま
茶番のような関係は、ある朝、唐突に終わりを迎えた
そう、それは本当に突然のことで
もしも世界の終わりに音があるとしたら
きっとそれは君の声みたいで
たぶん、その言葉の響きと同じなんだろう
途方もない喪失感が押し寄せる
これは本当に現実なのだろうか
ぽつり
雫のひとつが頬を打つ
君の瞳は強い意志を湛えたまま
ぽつり、ぽつり
次第に強まる雨足が嫌でも現実に引き戻す
ああ、雨はこんなにも冷たかっただろうか
ざぁざぁとうるさく打ちつけるばかりで
君の声が聞こえないよ・・・
その頬に流れる雫を
拭うことすらできない
――拭わせてもくれない
去り行く君の背中をただ見送った
いつまでそうしていたのか、不意に光が差した
雨は止んで
君が去って
それでもまだ、君の姿が焼き付いて離れない
夢から覚めて
夢の残り香を惜しむ間もなく現実に押し流されて
初めて全てを見れた
可笑しいことだ
失って知ることがあるなんて
幾つかの季節を巡り
またあの時と同じ季節が訪れる
雨に煙る彼岸には誰もいない
私は一人、此岸に立って君を待つ
幾度も巡った追憶が
雫の冷たさを思い出させる
――許されないと分かっていても
今この時だけは、想わせて
そうしたら私はここを去るから
消えない罪と、未だに苛む後悔を抱いて
もう一度、同じ季節を巡ってこよう
もう一度、ここへ来るために