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fade blue

四角く切り取られた風景


まるで描きかけの絵画のようなその景色


大気さえも蒼く染まっているような


これから何にでもなれるその色が、私は好きだった


その景色を見ているときだけは、私は自由でいられるから


黄金(きん)色彩(いろ)を纏う絵筆を執り


思い描く未来(きぼう)をなぞる


そこでは誰もが笑っているの


悲しいことは何もなくて


貴方はいつも楽しそうで


こんな切なさに身を焦がすこともない


なんて素敵な世界かしら


長くは保たない世界(ゆめ)だから、それは格別美しい


そして


光によって確立された、世界(リアル)の始まり


時の経過はいつだって私に知らしめる


無力な私は、ただその時が過ぎ去るのを待つしかなかった



“君と一緒ならどこへでも行ける”

そう言う貴方の指先が

蒼褪めていたのはいつからだろう


ありきたりな恋の歌

秘された希望の儚さを

知ってしまった時かしら


風に紛れて消えたのは

旋律だけではなかったのね


貴方の声が遠くなる度、私はそれを実感する

不思議と恐怖はなかった

生は偶然の上に成り立っているものだから

不意に過る影は親しく隣に寄り添い、永久の闇へと囁き誘う

生物の逃れられない定め

これが運命というのなら

与えた神に感謝を捧げたい

だって、貴方と出会うことができたから


“独りじゃない”

たったそれだけの真実が

どれ程幸せなことか

きっと言葉を尽くしても伝えきれない

貴方の側は、光に満ちた世界

けれど、貴方自身が闇に閉ざされていては何の意味もないのよ


もしも、その闇を取り除くことができたのなら

一緒に光の下を歩けるかしら

何の憂いもなく、貴方は笑ってくれるかしら


―ずっと、私のために歌ってくれるかしら


そう私が言えば、貴方は一拍後に笑ってくれて

何度でも歌ってくれる

何回だって言ってくれる

“ずっと愛してる”

私も愛しているよ

最初で、最後の、最愛の人

永遠に今が続けばいいのに

けれど時間は待ってくれないから

ねぇ、最期の時まで一緒にいてね?

『約束だからね』

泣きそうに笑う貴方とゆびきりげんまん

“死が二人を別つまで”



四角く切り取られた窓の外を見ると、思い出す光景がある

私はその度、決まって歌をせがむから

今日も部屋には旋律が響く

“愛しい君へ”

貴方の声と共に穏やかな風が吹き抜けた

もう、貴方を閉ざす闇はどこにもない

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