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ふゆ

降りしきる白い欠片を掌に乗せたくて


差し出した手に舞い降りた一片の結晶


肌に触れて形を変えてしまったそれを


『雪だから』と笑って教えてくれたのは


その手を取った貴方でした



月日は流れる


私にも貴方にも


残酷なほど平等に


小さなことに感動しなくなった頃


私は貴方と再会した


私よりも大きな掌


頭ひとつ分高い身長


あの頃とまったく変わらない光溢れる瞳


眩しいくらい、貴方は輝いていて


私とはあまりにも違う


すぐに目を逸らしてその場を去った


あとのことなんて考えていられない


引き留める声なんて聞きたくない


知られたくなかった


貴方にだけは、見られたくなかったのに


目を逸らしてきた現実が光の下に晒される


誰かに解ってほしいわけじゃない


私は私でしかないから


勝手に期待して、失望するのは真っ平よ


『本当に悪いのはどちらだろうね?』


周囲を拒絶する自分?


それとも、自分を拒絶する周囲?


まよい子は未だ大人になりきれないまま


あの日と同じ場所で立ち尽くしている


長い、長い間――巡りめぐる四季をそこで眺めていた


生命の謳歌する声は私のところまで届くことはなく


探し求める影はより深い闇に呑まれ


帰るべき場所は見失って久しい


一体どこへ向かえばいいの



夕闇の迫る繁華街を、目的もなく歩いていた


眩いショーウィンドウは見ているだけで楽しいけれど


どこか虚しい


そんな時だった


同じショーウィンドウに立ち止まった一人の人影


貴方であることはすぐにわかった


――今は見たくなかったのに


何故そんなにも温かいの


優しくしないで


お願いだから


優しいその手を差し出さないで




“一緒に行こう”


掴んだ掌はお互いに冷えてしまっていたけれど


心はどんどん温かくなっていく


あの時と変わらない笑みを浮かべる貴方が眩しくて


どうしようもなく惹かれてしまう


自分の薄暗い感情を自覚しても


変わっていけるかしら


貴方と並んで歩けるくらいに


対等になりたいと、心からそう思う



好きから始まる関係じゃないの

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