背中合わせ
なぜ、アナタは私ではないのか……
漆黒の羽
彩るは鮮やかな晴天の青
夏の空を閉じ込めた闇が、不意に目の前をよぎった
眩しすぎる日差しに瞳伏せれば
乾いたアスファルトが目を灼く
何故あんなにも自由に舞うのだろう
無窮なる天の欠片を羽に宿すモノよ
あなたはこの地面の熱さを知っているか
地べたを這うしかないモノの苦しみが解るか
――否
知らなくてもいい
理解など必要ないのだ
あなたは自由でこそ美しく、気高い
いくら伸ばしたところで、この腕があなたを捕らえることなど
できはしないのだ
漆黒の髪
漆黒の瞳
あなたのそれが私を捉えるとき
何故そんなにも哀しげなのか
この青い空に羽を預ける私を羨むように
誰かの身体を抱きしめる腕を持つあなたが
何故そんな目で私を見るの?
羽を持たぬあなたにこの哀しみが解るか
誰かの温もりに触れることなくただ舞うこの羽に
身を委ねるしかない私の何が解る
私はあなたが羨ましい
――そう
羨ましい
理解などできないわ
恵まれたあなたはただ貪欲に不自由を求めているのだから
いくら羽を伸ばそうとも
あなたを抱きしめることなど
できはしない
なぜ、私はアナタではないのか……
外から見ただけでは、分からないこともあると思います。