19/31
鳴らない弦
夢現の波間を虚ろにたゆたい
微睡みながら、沈んでゆく
貴方は確かにそこにいるのに
時々どこにいるのか分からなくなる
貴方の心は一体どこへ?
今日は在りし日の記憶に思いを馳せて
明日はまた別の過去へと思いを巡らす
その思考が未来へ向かうことはない
決してない
生きながら死んでいくような貌の、なんと幸福そうなことか
僕は貴方に問い掛ける
“今を生きることは幸せですか”
貴方は笑った
その答えさえ過去から言われているようで
冒された記憶で貴方はどんな夢を見るのだろう
ああ……僕と貴方は相容れない
けれど
それでも尚、僕は思うのだ
いつか同じ道をたどるなら
貴方と同じ夢幻を見たい
幸せだったと言えるように
今できることを精一杯こなしていこう
かつて貴方がそうであったように
過去を懐かしむのは、今を生きる者の特権だから
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。