北海道へ行こう
「北海道ーー!?」
そう驚いたのは柊木さんだった。
え、何で驚いているのだろう。あっ、すごい店から全員の注目が集まった。
「す、すみません。」
柊木さんは周りの人にぺこっと謝って頭を下げる。
「ここでは、話しづらいから店に戻ろう。」
そう言って、柊木さん家族は身支度する。
縛はちょうどパフェを食べ終わったようだぁ。
……ラーメン来ない……
仕方ない……
しょんぼりしながら身支度をすると、縛は先に行くと言って店を出た。
その姿に俺は思い出す
「待って、俺らバイクで来たんでしょ?!俺どうやって柊木さんの店に行くの?」
俺の声は届かず、もう縛の姿はない。うん、困った。トントンと肩を叩かれたので、振り向くと、真美ちゃんがニコッと笑う。
「乗ってって。」
どうやら車に一緒に乗せてくれるらしい。優しいー!!
レジに行って会計しようとすると、もう払ってあると言われた。
「え?誰が払ったのですか?」
と聞くと、店員は不思議そうな反応をする。
「さっき出て行った、黒い服のお客様ですよ?」
店員さんにごちそうさまですと言って、柊木さんの車に向う。
「いやー、東雲できるなぁー。」
そう言ったのは柊木さん。どうやら、先に会計してくれたのはポイントが高いみたい。皆で車に乗り込むと、女性陣からは東雲の話を聞かれる。
「東雲くんって、何の仕事してるの?」
「何で東雲さんと一緒に住んでるの?」
「「2人の関係は!?」」
一つ一つ丁寧に答えるが、
………圧が強い。
店に着くと、縛がいた。手に何か持ってるなぁ。
「……何で置いて行ったの?」
そう聞くと、手に持ったものを渡してくる。
なんだ?と見たら、俺が最近推してる店のラーメンじゃないかぁ!?
「ゆるす!柊木さん早く!ラーメン冷めちゃう!」
車から降りたばかりの柊木さんを、俺は焦らせる。
ラーメン♪ラーメン♪
「やっぱりできる男ね。」
と後ろで真美ちゃんが言っていた。
店に入ると、真美ちゃんはお茶を入れてくると言ってキッチンへ。俺たちは最近すっかり馴染んできたパーティールームで待つ。
パーティールームに入ると、ラーメンを開く俺に、柊木さんが少し呆れた顔をする。
「ラーメンばっか食ってると、中年になった時やばいぞー。」
そう言うと、結愛ちゃんが柊木さんのお腹を叩く。
「お父さんのビール腹みたいに?」
「気にしてる事を……」
2人は大笑いしてると、真美ちゃんがお茶を持って入ってくる。トレーにお菓子も置いてあったけど、チョイスが結愛ちゃんと一緒だぁ。やっぱり家族だなぁ……俺は何故か少し寂しい気持ちになった。
「正樹、溢れますよ。」
そう言って、縛がティッシュを渡してくれる。
「ありがとう〜。」
縛からティッシュを受け取ると、真美ちゃんの視線を感じる。どうしたのだろう?
真美ちゃんは何も言わずに、ただ微笑んだ。
「さぁ、お茶も菓子もバッチリだぁ。話を戻そうか?」
切り出した柊木さんにつられて、皆も静かになる。
ズズーッ
俺は悪くないぞ。悪いとしたらラーメンの魅力がいけない。
「はぁー、うん。何となく締まらないような気がしてた。」
柊木さんが話し出す。
「まぁ、さっきの話で北海道で驚いたのには理由があってなぁ。」
うんうんと頷く皆。俺はラーメンを啜る。
「出動する時は、閉鎖的な空間にいたから場所が分からないと言ったと思うが……流石に乗り物を間違える事はしねぇ。」
「?」
「どういう事かと言うと、出動する時に俺がいたのは、茨城だぁ。そう言ったら分かるだろ?」
そう話した柊木さんに、真美ちゃんも
「あー、確かに。あの時1週間は掛かったけど、あなたから飛行機に乗るとかそういう話聞いた事ないわね。」
「そうだ。しかも記憶では、現場到着まで車で2時間。時間がおかしいんだよ。」
そう言う柊木さんに、珍しく縛が答える。
「確かにそうですね。」
「じゃ、このネームプレートはどこを表していたのですか?」
ラーメンを啜りながら、俺が言う。
「それは分からない。」
と考え込む柊木さん。
そんな柊木さんにつられて、皆でうぅーと悩んでいると、結愛ちゃんが口を開く。
「行ってみればいいじゃない?」
そう言う結愛ちゃんを皆が見つめる。
「なに?変な事言った?」
「いや、言ってないけど。無理だぁ。」
柊木さんが頭を掻きながら言う。
「え?何で?行ったら分かるでしょ?」
「あのなぁ、結愛。これはあの時の犯人達が残した物かもしれないんだぞ?
そこに行くとしても危険が潜んでるかもしれないだろ?
そんな所に、はいっ行こうで行ける訳ないし、行きたくない。俺はお前らの方が大事だ。」
柊木さんがそう言うと、俺が口を出す。
「じゃ俺が行って来ます。丁度有給取ってるし、休みはまだたくさん残ってるし。それに、これが残っていたのには何か理由があるような気がするんですよ……。」
「いや、ダメだぁ。一般人が簡単に行っていい所でもないだろ?何も情報ない訳だし。」
柊木さんが、強く止めてくる。
「じゃ、僕なら行けますね。薄々気付いてると思うのですが、一般人ではないので僕が行きますよ。一番手っ取り早い。」
そう言ってネームプレートに手を伸ばす縛。
その手を俺が掴んで止める。
「お、れ、の、ネームプレートなの。」
そうじぃーと縛を見るが、縛の動きは止まらない。
「縛、俺のネームプレート。怒るよ。」
そう言うと、縛は手を戻し、腕を組んでソファーに寄りかかって座った。不貞腐れてやがる。
その姿を俺がじぃーと見ていると、
真美ちゃんがiPhoneを取り出す。
「これ見て、鈴鳴りダム観光地みたいよ。」
その声に全員が身を乗り出す。
『ようこそ 鈴鳴りダム へ
北海道の豊かな自然に囲まれた、美しい景観が魅力の観光スポット。
春には新緑、夏には青々とした森、秋には色鮮やかな紅葉が湖面を彩り、四季折々の景色を楽しむことができます。
周辺には遊歩道も整備されており、野鳥観察や散策にも人気の場所です。
夜になると満天の星空が広がり、都会では味わえない静かな時間を過ごせます。
日常から少し離れて、自然の中で癒やされてみませんか?』
めっちゃ観光地じゃん。
……………………。
「いつ行こうか?」
と俺が切り出すと、縛は
「今すぐに。」
と言う。
このせっかちマンがぁ!
「あら〜綺麗な所ね。最近旅行、行ってないわよね〜
ねぇ〜結愛。」
真美ちゃんが隣に座っている結愛ちゃんを見ると、結愛ちゃんも自分のiPhoneを見てる。
「ねぇ!見て!ここのご当地アイスやB級グルメ美味しそうー!」
と見せてくる。
ん?一緒に行く気かぁ?
柊木さんは許さないと思うぞ〜
はぁーと深いため息と共に柊木さんが体を起こして、どこかに行く。
縛はさっきから無言で逆に怖いけど?
何してるんだろうと見ると、飛行機を見てた。
………………
「俺、車がいい。」
そう言うと、縛は車を探し始めた……
「やっぱ飛行機がいい。」
縛は飛行機を探す。その姿に思わずイタズラ心が芽生えた。
「やっぱ。俺く……」
パンと音を立てて扉を開けた柊木さんに、皆が注目すると……
「明日の夕方に飛行機で行こう!」
と宣言した。




