15 新聞屋 その3 【挿絵あり】
AI(Gemini)利用作品【構想や要旨を作者が考え、それをもとにAIが肉付け、その後、作者が加筆修正を行って掲載しています。】
病院での一件以来、ベルの悪夢に対する認識は根底から覆された。あの女性医師は、間違いなく【悪夢】の一員だった。清潔な白衣を身につけ、患者の命を救うという言葉は、彼のギフト【真偽】によって嘘だと暴かれたにもかかわらず、その仕事ぶりは完璧だった。
彼女の治療を受けた患者たちは皆、快方へと向かい、彼女を信頼しきっていた。それは、ベル自身も同じだった。彼女が回診に来るたび、彼女の言葉の裏にある嘘に気づきながらも、どこかで彼女の治療に安堵していた自分がいたのだ。
彼女は、ベルの正体を知っていた。彼が【悪夢】の生存者であり、新聞記者として奴らの情報を追っていることを。にもかかわらず、彼女は彼を殺そうとはしなかった。
代わりに、彼は彼女から何も情報を引き出せずに終わった。悪夢はただの犯罪者集団ではない。彼らは、社会に溶け込み、ごく普通の人間として生きている。
医者として、誰かの命を救いながら、裏では、誰かの人生を弄んでいるのかもしれない。その事実に、ベルは背筋に冷たいものが走るのを感じた。
病院を退院したベルは、新たな視点で悪夢を追うことにした。彼らは、人格破綻者とは無縁そうな、人々の信頼を集めるような職業に就いているのではないか。
そして、何気ない日常の中に潜んでいる。その可能性に気づいたベルは、次なる標的として、教会のシスターに目をつけた。
そのシスターが働くのは、貧しい人々や身寄りのない子供たちを保護する小さな教会だ。ベルは、慈善事業の取材という名目で教会を訪れた。そこで彼が見たのは、温かい笑顔で子供たちに寄り添うシスターの姿だった。
彼女は、子供たちの小さな手を取り、一緒に歌を歌ったり、絵本を読んで聞かせたりしている。その姿は、あまりにも聖職者そのものだった。しかし、ベルは彼女の手首に、漆黒のブレスレットが巻かれているのを見逃さなかった。
それは、一見すると何の変哲もないアクセサリーだったが、病院の医師が身につけていた黒いペンダントと、どこか共通する不気味さを感じさせた。
ベルは、彼女にインタビューを申し込んだ。最初は警戒していた彼女だが、「子供たちのために」という彼の言葉に、少しだけ心を許したようだった。
「シスター、この教会は、人々にどのような希望を与えていますか?」
ベルの質問に、彼女は穏やかな笑顔で答える。
「希望、ですか。この子たちが、明日を生きるための力になれれば、それ以上の喜びはありません。神様は、すべての人に平等な愛を注いでくださいますから」
【真偽】は、彼女の言葉が嘘だと告げた。彼女の使命は、子供たちに希望を与えることではない。神は、すべての人に平等な愛を注いでいるわけではない。ベルは、彼女の言葉の裏にある真実を探るため、さらに質問を続けた。
「素晴らしいですね。しかし、世の中には、神様の愛を感じられない不幸な人々もたくさんいます。シスターは、そのような人々にどう接していますか?」
「…私にできることは、祈ることだけです。そして、この子たちのように、少しでも多くの命を救うこと。それが、私の唯一の使命です」
【真偽】は、その言葉も嘘だと告げた。彼女の唯一の使命は、命を救うことではない。ベルは、じりじりと彼女に迫っていく。
「失礼ですが、シスター。そのブレスレットは、とても素敵ですね。何か特別な意味があるのでしょうか?」
ベルの言葉に、彼女の笑顔が一瞬で消えた。彼女は、ブレスレットを隠すように、袖を引いた。その仕草が、ベルの疑念を確信へと変える。
「…これは、ただのお守りです。昔、友人がくれたものでして」
【真偽】は、その言葉も嘘だと告げた。友人がくれたものではない。ベルは、彼女が悪夢のメンバーであると確信した。彼は、さらに深く切り込んでいく。
「…実は、私は【悪夢】について調べています。シスターは、何かご存知ですか?」
その瞬間、教会の優しい空気が一変した。シスターは、まるで仮面を剥ぎ取られたかのように、冷たい表情でベルを見据えた。彼女の瞳には、先ほどまでの温かさは微塵もなかった。そこにあったのは、無機質で、底知れぬ冷たさだけだった。
「…あなたの質問は、あまりにも踏み込みすぎているわ」
彼女は、低い声でベルに告げた。その声は、子供たちに歌を歌って聞かせる優しい声とは全く違う、鋭利な刃物のような声だった。
「…あなたのような、しつこい記者は嫌いよ。何かしたら、明日はないと思え」
彼女の言葉に、ベルは恐怖を覚えることはなかった。彼は、命をかけた取材をしているのだ。脅しなど、もはや慣れっこだ。しかし、彼女の言葉の裏に隠された真実が、ベルを震撼させた。
悪夢のメンバーは、病院の医師や教会のシスターとして、ごく普通の日常を送りながら、簡単に誰かの命を奪うことができるのだ。彼らは、社会のどこにでもいる。そして、彼らがその気になれば、明日を奪うことなど造作もないことなのだ。
ベルは、シスターの脅しに動じることなく、静かに答えた。
「…あなたは、この教会の子供たちも、いつか…」
ベルの言葉に、シスターは何も答えなかった。しかし、その顔に浮かんだ冷たい笑みが、彼の言葉が真実であることを物語っていた。彼女は、子供たちを愛しているわけではない。ただ、彼らの人生を弄び、その過程を楽しんでいるだけなのだろうか。
「…あなたたちは、人の人生を、何だと思っているんだ…!」
ベルは、怒りを込めてシスターに詰め寄った。しかし、彼女はただ、冷たい笑みを浮かべているだけだった。
「…そろそろ、お帰りになってくれませんか。あなたのような方がいると、子供たちが怖がってしまいます」
その言葉も、ベルのギフト【真偽】は嘘だと告げた。子供たちが怖がるのは、彼女の正体を知ったベルではない。彼女の真の姿を知ったベルは、シスターの言葉に動じることなく、静かに教会を後にした。
彼は、悪夢の脅威が、想像以上に身近なものであることを痛感した。彼らは、闇の中に潜んでいるのではない。光の中に溶け込んでいるのだ。医者として、シスターとして、人々の信頼を勝ち取りながら、裏では、平然と人生を弄んでいる。
ベルは、街を歩きながら、行き交う人々を観察した。誰もが、ごく普通の顔をして、ごく普通の生活を送っている。その中に、悪夢のメンバーが何人いるのだろうか。もしかしたら、隣で歩いている男も、すれ違った女も、悪夢の一員かもしれない。
彼は、孤独を感じた。誰も信じられない。誰を信じていいのか分からない。しかし、それでも彼は、真実を追うことをやめるわけにはいかなかった。
「…いつか、必ず、お前たちの正体を暴いてやる…!」
ベルは、心の中で誓った。この世界に潜む悪夢を、すべて暴き出し、故郷を、そして家族を奪った復讐を果たすために。




