1 復讐の始まり 【挿絵あり】
AI(Gemini)利用作品【構想や要旨を作者が考え、それをもとにAIが肉付け、その後、作者が加筆修正を行ってから掲載しています。】
「見ろよ、あれが噂の【落ちこぼれ】だぜ?」
囁き声が耳に届くたび、カインの心臓は冷たくなった。村を離れても、この現実はいつでもカインに心の傷を与える。
神々が与えし特殊技能【ギフト】。誰もが持つそれが、カインにはなかった。ギフトには様々な種類がある。例えば「剛腕」は 身体能力が飛躍的に向上し、常人離れした怪力や耐久力を得る。「神速」は 短距離を瞬時に移動したり、反応速度が極限まで高まったりする。「精霊の声」は 自然界の精霊と対話し、彼らから情報を得たり、協力を仰いだりできる。これらのギフトは主に冒険者に対して有用なものだ。
それに対して商人に関するギフトもある。「鑑定」は物の価値、素材、特性、あるいは人物の能力や状態を正確に見抜く。 「錬成」 は特定の素材から別の素材を作り出したり、物品を生成・加工したりできる。「共鳴」は 特定のアイテムや場所、人物と共鳴し、その隠された力や情報を引き出す。
このようなギフトが無数にあるのだが、ギフトについては未だ全て解明されておらず、基本的には1人1つ、神に与えられるとされていることしか分かっていない。ギフトによって生涯の仕事が決まるといっても過言ではなく、ギフトはその人の人生と深く結び付いているのだ。しかし、ただ一人この村でギフトを授かっていないのがカインだった。
なぜカインにギフトが与えられていないのかは分かっていない。子どもが生まれたときには、教会付きのギフト鑑定士に鑑定をしてもらう。その後は村の掟として教会にギフトの登録をしなければならない。国の掟ではないが、村ごとにこのような掟があるのはざらにあった。
カインが生まれた村では共助の理念が強く、お互いのためにギフトを使うことがよくあった。カインにとって、ギフトを持たない現実は、単なる不便さではなかった。村にいたときはお互いに助け合い、苦労を感じることは少なかったが、ギフトがないという事実は故郷の惨劇を繰り返さないため、力を渇望する彼にとっては絶望的な壁だった。
数年前、【悪夢】と名乗る悪逆非道な集団がカインの村を襲撃し、全てを奪い去った。家族の血の匂い、燃え落ちる家の熱、そして奴らの嘲笑う声。あの夜の記憶が、カインの心を支配し、彼を復讐へと駆り立てていた。しかし、ギフトを持たない身では、才能に恵まれた者たちとの差は埋められない。復讐の念は募るばかりなのに、そのための手段が何もないという現実に、カインは苛まれ続けていた。それでも故郷を滅ぼした【悪夢】への復讐を胸に、カインは剣を握ったが、才能なき身では何もかもが限界に感じた。
【悪夢】とは人間の集団を表す。彼らは、人の住む場所を根絶やしにするためだけに存在するかのような、犯罪者グループだ。ある意味、魔物よりもたちが悪い。これまで数知れない村を襲撃し、その悉くを廃墟と化してきた。その残虐性は、老若男女の区別なく向けられる。彼らの前では、幼子の震える声も、大人の悲痛な叫びも、等しく無意味。生命を弄ぶことを至上の喜びとし、苦痛に歪む顔を見ては高笑いするような、完全に理性を失った人格破綻者たちの集まりだ。彼らの目的は定かではないが、残されるのは常に、血と破壊の痕跡のみである。
才能なき自分に絶望していたカインは、故郷を失った悲しみと復讐心に突き動かされ、無意識のうちに村の禁域へと引き寄せられていた。深い森の中に隠されたその場所は、かつて巨大な神殿だったのだろうか、今は瓦礫と化した石柱が、わずかに往時の姿を偲ばせるだけだ。しかし、カインはその廃墟の中に、言い知れない「何か」の気配を感じ取っていた。崩れかけた回廊を抜け、薄暗い地下へと続く階段を下りると、そこは外界とは隔絶されたような静寂に包まれていた。
空気は淀み、カビの匂いが鼻を突く。その最奥、朽ちた祭壇の上に、薄ぼんやりと輝く一冊の書物があった。それは、時間の流れから取り残されたかのような古びた装丁で、カインが手に取ると、微かな振動とともに、彼の運命が動き出した。この「深淵の魔導書」こそ、彼が探し求めていた希望の光だった。
それは、失われたはずの【最古の魔法】について記された、禁断の「深淵の魔導書」だった。底辺から這い上がるための、唯一の希望がそこにあった。書物には、【時間遡行】――時間を5秒だけ巻き戻す魔法――の詳細が書かれていた。しかし、その発動には二つの難題があった。
第一に、「犠牲」の誓約をしなければならない。 過去の改変により失われる何か(大切な存在から忘れられる、自分の記憶が一部なくなる、未来の可能性が1つ消える)をあらかじめ犠牲にすることを誓う。
そして第二に、「魔力」が枯渇する。通常の魔力とは異なる、膨大な特殊魔力を消費し、一度使うと長期間回復しない。1週間に1回程度のものである。使い時を誤れば死が待っている。
カインの心には復讐の炎が燃え盛っていた。絶望なら、もう充分に味わってきたし、もう失うものは何もない。この力で、俺は必ず【悪夢】を討つ。また、俺を蔑んだものたちに報いを与える。カインは、深淵の魔法を我が物とするため、新たな修行へと身を投じた。
《カインの現在の能力値~1章を終えて~》
①名前 → カイン
②種族・年齢 →人間・12歳
③職業 →落ちこぼれの剣士(潜在的な時魔導師)
④ギフト → 無し
神々から与えられる特殊技能を持たない。この世界では極めて珍しい存在。
⑤レベル 5
まだ若く、才能に恵まれないため低レベルだが、秘めたる可能性がある。
⑥HP | 80/80 |
剣士としての基礎的な体力は持つが、特筆すべき強靭さはない。
⑦ MP | 0/0 |
通常の魔力は持たない。時間遡行の魔法は「特殊魔力」を消費するため、MPは常に0。
⑧ 特殊魔力 | 100/100 |
『時間遡行』の源となる独自の魔力。1週間に1度しか使えず、発動には膨大な量を消費する。
⑨ 攻撃力 | 15 | 剣術の訓練は積んでいるが、ギフトを持たないため、他の剣士に劣る。
⑩ 防御力 | 10 | 平均的な防御力。
⑪ 素早さ | 12 | 特筆すべき素早さはない。
⑫ 精神力 | 20 | 故郷を奪われた絶望と復讐心により、並々ならぬ精神的な強さを持つ。これが時間遡行のトリガーにもなる。
⑬ 運 | 5 | 基本的に不運な境遇にある。しかし、古びた魔導書を発見する「運命的な偶然」を引き寄せる。
⑭ 特殊技能 | 時間遡行(覚醒前) | 特定の対象の時間を5秒だけ巻き戻す、最古の禁断魔法。発動には膨大な特殊魔力と、下記の大きな犠牲を伴う。
「犠牲の誓約」
(1)大切な存在から忘れられる
(2)自分の記憶が一部なくなる
(3)未来の可能性が1つ消える。
⑮冒険者ランク F
※次回より、能力値は簡略化