99歳、青春を始めよう!!
眠いのと戦いながら午後の授業が終わる。
何とか眠らないですんでホッとしていた。
午後の授業が終わり帰宅時間になる。
すぐに良輔君に声をかけられて、一緒に帰る。
一緒に帰りながら、コロッケを食べると言っていたのを思い出した。
さっきの揚げ物は、軽くて美味しかったけれど。
コロッケは、そんなわけないだろう。
「帰ろうぜ!大」
「うん」
「あかりも帰るだろう」
「今日は、女子会」
「ああ、そうか!じゃあ、また明日な」
「うん、バイバイ」
「バイバイ」
あかりちゃんは、軽やかに走り去って行く。
女子会か……。
テレビでそんなニュースを聞いたことがあった。
楽しそうに女の人達がお酒を飲みながら話をしているのを見て、わしももっと母さんに寛容的になれていたらと思ったものだ。
時代が違っていれば、母さんはもっと幸せだったんじゃないかと思えた。
「大、ついたぞ!」
「えっ」
「さっきから話しかけてんのにぼんやりしてるから。ついたら話しかけることにしようって思ってさ」
「そうだったんだね、ごめんね」
「いいって、いいって」
ついたのは、肉の【ヒラヤマ】というところだ。
どうやら、肉屋のようだ。
「おじちゃん、コロッケ2つ」
「はいよ、100円だ」
「はい、100円」
「2つで100円か?」
驚いた声をわしがだすと、良輔は笑いながら「何今さら言ってんだよ。今日、初めて食べるみたいなリアクションしてさ」と言いながら財布をしまっている。
いやいや、わしは今日初めて食べるのだ。
物価高な世の中で、コロッケが2つで100円なんてすごい店だな。
「18歳になったら、1つ90円になっちまうけどな」
良輔は苦笑いを浮かべながら、店に貼ってある紙を指差した。
そこには、子供1つ50円と書かれている。
まだ、子供だから50円で食べられるのか。
わしは今まで、子供である事を得に思ったことはあっただろうか?
「お待ちどう!熱いうちに食べな」
「ありがと、おっちゃん」
良輔はコロッケを受け取るとスライド方式で、わしに渡す。
「歩きながら食べよう」
「うん」
これが買い食いというやつか。
孫がよく話をしていた。
「いただきます」
胃もたれが気になりつつも熱々のコロッケにかぶりつく。
「う、うまい!!あっ、おいしい」
「ハハハ。そうだろ。大はヒラヤマのコロッケを週3は食いたいって言うからなーー」
「そ、そうだったね……ハハハ」
「でも、よかったわ。最近は、ヒラヤマに行こうって言わなかったから心配してたんだぞ!あかりと一緒で俺も」
「心配かけてごめん、もう大丈夫だから」
「だったらよかったわ。じゃあ、俺今日バイトだから」
「うん」
「じゃあなーー」
良輔君はニコニコ笑いながら去って行く。
そう言えばさっき見た生徒手帳にバイトはやむを得ない事情がなければ禁止だと書かれていた。
ーーってことは、良輔君はやむを得ない事情を抱えているってことか。
わしは、大の鞄を漁る。
明日、50円返してあげないとだな。
今日は疲れた。
楽しかったけれど、本当に疲れた。
えっと……。
家はどこだ?