真犯人の正体
静寂のスタジオ
夜のスタジオに戻った彩乃は、誰もいないことを確認しながら慎重に足を進めた。
警察に証拠を渡したが、木村浩一が真犯人だと確定するには、さらなる決定的な証拠が必要だった。
彼女は木村の机に再び近づき、引き出しを開けた。
前回見つけた「過激な演出」のメモをもう一度確認すると、その下にファイルが隠されていた。
ファイルにはスケジュール表や計画書がびっしりと書き込まれている。
「熱湯管理:塩+グリセリン混合」
「リアルおでん企画:視覚効果を重視、異物混入で衝撃性UP」
彩乃はそれを見た瞬間、震えが止まらなくなった。
木村は翔太と恭介の死を「演出の一部」として計画していたのだ。
対峙
背後で床が軋む音がした。振り返ると、木村が立っていた。
目は冷たく、彩乃をじっと見つめている。
「森下、お前……何をしてる?」
木村の声は低く、怒りを抑えているようだった。
「何も……ただ、片付けを……」
彩乃は震える声で答えたが、手に持っているファイルを見られてしまった。
「お前、それを返せ。」
木村が一歩近づいてくる。彩乃はとっさにファイルを後ろに隠した。
「木村さん……あなた、やったんですね?」
彩乃は震える声で問いかけた。
「やった?何のことだ。」
木村は不敵に笑った。
「もし俺がやったとして、お前が何をする?警察か?無駄だ。証拠なんて消せば終わりだ。」
木村が手を伸ばしてくる。
彩乃はファイルを握りしめ、部屋を飛び出した。
危険な逃走
彩乃は廊下を全力で駆け抜けた。
木村の足音が後ろから迫る。スタジオ内は暗く、彼の影が壁に映るたび、恐怖が胸を締めつけた。
「無駄だ、森下!お前一人で何ができる!」
木村の声が追いかけてくる。
彩乃は物陰に隠れ、息を潜めた。
足音が近づき、止まる。
木村が周囲を見回す気配がする。
その時、彩乃はふと近くにあった消火器に手を伸ばした。
彼が背を向けた瞬間、それを力いっぱい振り下ろした。
「ぐっ……!」
木村が倒れ込む。
彩乃はその隙に再び駆け出した。
警察への連絡
建物を抜けた彩乃は震える手で携帯を取り出し、警察に連絡した。
「証拠を見つけました。犯人は木村浩一です……急いで来てください!」
真実の解明
数時間後、警察がスタジオに到着。
木村は現行犯で逮捕された。
彩乃が渡したファイルとデータログが決定的な証拠となり、彼はすべてを認めた。
「視聴率のためだ。仕方なかった。あいつらもそれを理解してたはずだ!」
木村は最後まで視聴率を理由に自分を正当化しようとした。
警察が説明する中、彩乃は彼が語った計画の全貌を知った。
・相田翔太の死亡:おでんに金属片を仕込み、食べた際に喉を傷つけるよう計画。
・片山恭介の死亡:塩とグリセリンを湯船に混ぜ、水の沸点を上げて火傷を負わせるトリック。
「それで、人が死んでいい理由にはならない……」
彩乃はそう呟いた。