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ようこそnext stormへ

 「あ!ナイトさん!こんばんはぁ!」

ログインするとさっそくユメノが出迎えてくれた。ウィンドさんたちの姿は見当たらないためおそらく2人で遊ぶことになるだろう。

「よ!ユメノ。今日は2人か?」

「そうなんですよぉ!ウィンドさんもセイラさんも学校の課題で遅れるみたいで…来られるかわからないんですぅ。」

確かウィンドさんとセイラさんは同じ学校なんだったな。俺の1つ上と言うことは高3だし、課題も増えてくるのだろう。納得だ。

「じゃあさっそくダンジョンへ向かうか。今日はどこへ行こうか?」

「そうですねぇ…次のアップデートで草属性の杖が手に入るので森林のダンジョンにしますか?」

そういえば来週アップデートがあるんだったな。暖かみのある明るい茶色の武器に葉やツル等をモチーフとした緑系統のパーツが散りばめてあり美しい造形だった。

「良いな。俺も新緑の剣欲しいし、今のうちに強化素材集めたい。」

各々今回持っていく武器や装備を選択していると背後から聞き覚えのある声がかけられた。

「あの!私もご一緒してよろしいですか?」

俺とユメノが振り向くと、昨日より若干豪華になった武器、少し強化された装備を纏ったクーラの姿があった。

「あれ?クーラさんだぁ!わぁぁ昨日より格好いい!しかもその杖似合ってる!」

ユメノがはじゃぐ。

「新しい武器買ったんだな。」

俺も気になり声をかける。

「はい!昨日いただいた金貨で新しい杖を購入して。でも、杖の中だと安いものですし…操作慣れるまで不安ですが。」

ふむ、初心者へのオススメ武器から選んだようだ。鉄製の杖の先端が丸く曲がっており、その中心に赤い宝石が埋っていて、クーラの赤いマントや黒い髪のキャラメイクに映えている。

「俺的には見た目がマッチしてていいと思うんですが…俺は騎士だから杖のことはさっぱりなんだ。」

そう。俺はこのゲームを初めてから【騎士】以外を選択したことがないため、剣以外のことは全くと言うほど分からない。

「確かに、今商人から帰る武器だと弱いかもだねぇ。でもその杖は炎系の魔法を少し強化してくれるんだよぉ!その人の使い方次第では初心者でもダメージ出しやすいはず!」

自分の技強化になるのか。

「クーラ、ユメノは魔法使いの中でも実力はトップクラスなんだ。杖のことならユメノに聞くといいかもしれないな。」

「そんなにすごい方だったんですね!?確かに…モンスターを眠らせたり、毒を与えたり、相手への負荷も丁寧でした。私1人で練習してみたのですが、全然上手くできなくて。」

まだまだ装備も不十分だし、なにより経験値が低いからな。技の成功率も下がるのだろう。

「あははっ!私も最初はそんなだったよぉ!でもねぇ、やっぱり楽しくて。技を入れるタイミングだったり、どんなデバフをかけるかだったり、状況を読めるようになるとね‥…胸の奥がキュンとするんだ」

目を細め歯を見せニッと笑うユメノは無邪気で本当にこの役職が好きだと言うことが伝わってくる。

「私、この役職選んでよかったです。ユメノさんのお話を聞いていたら、私も上達したいと思えました。」

やっぱり楽しくゲームをできるのって大切だな。イライラして暴言吐いたり、野良募集で組むとわざとダメージ貰う利敵もいるしな。クーラがこれから嫌になってやめないといいが‥…

「じゃあ3人で回るか!俺たちは森林のダンジョンに行こうと思ったんだが、少し難易度を下げて林のダンジョンにするか?」

俺とユメノなら上級者向けの森林でいいだろう。しかし、初心者にはしんどいだろうしな、此処で挫折されては悲しい。林は難易度は低いがレアな報酬が出づらい。

「私に合わせていただいていいのですか?」

クーラは心配そうに眉をひそめるが、俺はそんな心配が蛇足だと知っている。だってなにより今日の探索を楽しみにしているのは…

「なんでぇ!?クーラさんが回りやすいほうが皆で楽しめるよ!私たちがサポートするから一緒に頑張ろぉ?」

まさにユメノなのだ。

「ありがとうございます。頑張りますね。」

ユメノの言葉にクーラの顔はパァッと明るくなった。


 ダンジョンへ進むとスライムが出てきた。懐かしい。普段行くダンジョンには出てこない、やさしめモンスターだ。

「スライムは攻撃力が低くてHPも少ないんだぁ。まぁ、倒しても何もドロップしないけどね。毒を付与すれば10秒くらいで倒れるし試しに魔法出してみてよぉ!」

「はい!…ふぅ、Poison!」

ユメノに促され、クーラが呪文を唱える。しかしスライムはケロッとしている。……………ん?

「あれ?…Poison!…Poison!」

クーラは何度も唱えるがスライムが毒を浴びることはなかった。

「うーん?難しいのかな?他も試そうか?眠らせたり出きるかなぁ?」

毒がだめならとユメノが別の提案をする。

「うぅ…試してみます。Sleep!」

。。。???眠って…ない、な。

「えぇ!?どうしてですかね?魔法間違えたのかな?」

クーラは顔を青ざめユメノに助けを求めている。

「いや、そんなはずはないよ?…デバフが上手くでないなら。通常攻撃で倒してみよう。」

ユメノにも原因は分からないようだ。デバフのが簡単かと勝手に思っていたが合う合わないがあるのだろうか?

「…スライム、こんなに恐ろしいとは!?」

悔しそうなクーラを見ると、ダンジョン最弱モンスターですよ。とは言えなかった。クーラは深呼吸をして集中しているようだ。

「…flame!」

ブワッ。その瞬間杖先が赤く光りスライムの身体が炎にまみれた。

「熱っ!?なんだこれは!?」

「えぇ!?ちょっ、まって火力高過ぎるよぉ。」

どうやらユメノも驚いているようだ。炎は5秒程燃やし続けた後、ボウッと音を出しスライムと共に消えた。

「…ふぅ、見ましたか!?炎出せました!ユメノさんの言った通りこの杖炎強化すごいですね!」

額の汗を拭いながらガッツポーズを見せるクーラだが…

「クーラさん!すごすぎるよぉ!スライム相手とはいえ、あんなに火力を出せるなんて!…デバフは全然だったけどぉ。」

ユメノは少しからかうように笑いながらも、クーラを褒めていた。

「うぅ…お恥ずかしいです。」

顔を赤らめ照れているクーラを見ると微笑ましい…が。

「にしても通常魔法があんなに強いのに、なんでデバフが出なかったんだ?」

俺の問いかけに答えたのはユメノだった。

「…昨日のダンジョンでそれなりの経験値貰ったと思うんだけど……ちゃんと【専門】に経験値ふれたぁ?」

ダンジョン攻略で手に入れた経験値を、通常攻撃の威力を上げる【攻撃力】、敵からのダメージを軽減する【防御力】、自信の体力を増やせる【HP】、攻撃や回避の速度を上げる【素早さ】、そして、各々の役職強化ができる【専門】にふることができる。つまり、クーラの場合専門は魔法使い特有の強化となる。敵へデバフを付与できる魔法使いは【専門】へふるとデバフの強化や成功率アップへつながるわけだ。昨日のダンジョンは初めて攻略したら100経験値になる。その100をどこへ振り分けるかは個人の自由だ。

「えっと…私、専門がよく分からなくて…とりあえず攻撃力上げれば強くなれるかな?と」

クーラの言葉に俺たちは思わず固まってしまう。

「クーラ、ちょっとステータス見せてもらってもいいか?」

俺がひきつる顔を無理やり笑顔にして尋ねる。クーラは、はい!と元気よく返しステータスを開いてくれるようだ。このゲームは始めたときのステータスは各々10ずつだ。バランスよく25ずつ振ってくれてれば最初のうちは安定するだろうが‥…

「これは…」

うん。なんだろうか?俺の見間違いだと信じたいが、ユメノの方を見ると、

「…ぶはっぁぁ!え!?まって攻撃力110!?初めて2日で?そりゃ強いわけだあはははっ」

笑い転げている。いや、あくまで振りは自由だし…うん。クーラの方へ向くと地面にペタンと座り込んでいた。

「あ、私攻撃力しか振ってなくて…専門も振らないとだめなんですか?」

「ダメというわけではないよぉ?やり混み具合によって変わるけど、初心者のうちは魔法使いは100以上専門へ振っておかないとデバフ付与が安定しづらいの。50くらいから少しずつ上手くなると思うよぉ!」

ユメノの発言によりクーラは絶望した様子だ。

「そんなぁ…ちなみにこのダンジョンはどのくらい経験値貰えるんですか?」

「ここは初心者向けだから初回は10だね。そのあとは5だよ~!」

「うぅ…まだまだ時間がかかりますね。せっかくご一緒してくださったのに、すみません。」

クーラが本当にがっかりとした様子で、今にも泣き出してしまうのでは?と少々不安になる。心なしか俺も悲しくなってきた。どうにか励ましてやりたい。

「そんなにがっかりしないでくれクーラ。通常攻撃特化タイプのプレイヤーも今は増えてるんだ。単独でも強いし、確実にダメージを入れられるんだ。それだけの火力があれば、装備が揃うまである程度やっていけるぞ。」

「そうだよぉ!全振りは面白いけどねぇ、しばらくデバフ付与の練習はできないかな?でも、その分ある程度は通常攻撃だけでサクサク敵倒せちゃうもの。」

俺とユメノの言葉でクーラが立ち直ってくれるといいが。

「お2人とも…すみません。私の知識不足でした。これから頑張っていきます!」

杖を強く握り直すクーラを見て、俺は安心した。きっとクーラならこれからどんな困難にも立ち向かえる強さを持っているだろう。さぁどんどん進むぞ。


 そこから10分程でダンジョンはクリアできた。まぁ、俺とユメノはクーラの出す炎魔法を見守って終わったが、クーラの頑張る姿を見られてよかった。

「お2人には本当に助けていただいて…ありがとうございます。」

クーラは丁寧に感謝を伝えてくれる。案外素直な娘のようでよかった。

 「全然いいよぉ!私のクラン他に魔法使い選択してる人いなくて、弟子が出来た気分で楽しかったぁ!」

エヘヘと笑うユメノに、

「私もユメノさんがいてくれて嬉しいです…師匠?」

首をかしげながら恥ずかしげに笑いかけるクーラ。ここは天国なのだろうか?そんな馬鹿げたことを思っている間にユメノが昨日のことを再度確認していた。

「ねぇねぇ!クーラさん!私たちのクラン…どうかな?みんな優しいし、きっと楽しめると思うんだけど‥…?」

「あの後少し考えてみたんです。私まだ分からないことだらけで…強い皆さんの足を引っ張るのではないか不安で。でも今日改めてみなさんと遊ばせていただいて思いました。皆さんが迷惑でなければ、ぜひ、加入させていただきたいです!」

クーラは話し終わると深々と頭を下げた。ウィンドさんの許可は昨日とれている。クーラ本人が望むなら、俺らの返答は、もう決まっている。

「「ようこそ、【next storm】へ!」」

頭を上げ目を輝かせるクーラ。俺たちと共にこのゲームの未来を明るくして欲しい。今日の経験を忘れないで欲しい。ゲームというありふれた趣味。それには、"楽しい"、その気持ちがなによりも大切だから。

「これからよろしくな、クーラ!」

「はいっ!」

元気な返事と素敵な笑顔。あぁ、やっぱりゲームは最高だな。


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