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東亞国の江流皇子

城門に向かえば、東亞国の馬車が用意されていた


「よいしょ、と。

足元気を付けてな」


優しく手を引かれて馬車に乗り込むと、赤と白を基調としたシンプルな内装で、座れば柔らかく沈み素材が良さがうかがえる


「今からやと、東亞国の紫詢城には馬車で1日半ぐらいかかるから途中の街で一泊してから向かう予定や。

花嫁様には少し退屈かもしれやんけど、江流皇子様の元までちゃーんとお届けしますさかい安心してや」


対面に座った男は、自分から江流皇子であることを明かす気はないようだ

それなら、とまっすぐ使者を見つめて口を開く


「すでに会っているではありませんか」


「・・・」


「赤い瞳に黒い髪、お父様にも臆せず発言したり同じ使者達から敬われている。

一介の使者相手に、ね」


探るように目を見ると、男は楽しそうに笑う


「いやあ、さすが僕のお嫁さん!

ばれるとは思ってなかったわ~!

改めまして、東亞国の江流言います。

どう?自分で言うのもあれやけど、東亞国では美男子やってよく褒められてるんやで!」


それはそれは嬉しそうににこにこと笑う江流皇子に、絶対そんなこと思ってないくせに。と思いながら、改めて自分の結婚相手をみる


変なポーズを決めたりおちゃらけた態度をしているが、大きな赤い瞳に艶のあるすこし長い黒髪は銀の髪留めで1つに纏められている

私より頭一つ分高く、すらりとした体系を持つ男はまさしく【美】男子・・・・ではあるが、残念な美男子だ


「あなたが残念な美男子ってことはよくわかりました。

セルディア王国は歴史のある国ですが、東亞国に比べると小国です。

次期皇帝となられるお方の花嫁候補ならたくさんいらっしゃるのではないですか」


「まあ否定はせえへん。

・・・実はな、現皇帝・・つまり僕の父親が病床に伏せてるんや。

もって後数週間、長くても数か月ってところや。

そんな皇帝が、僕に皇位を譲るかわりに近隣諸国の王女と結婚するように条件を出したんや」


そんな情報は今まで聞いたこともないが、江流は真剣な表情で話を進める


「けど、勘違いしやんといてほしい。

皇帝からだされた条件が【近隣諸国の王女】やからってだけで、お隣さんのあんたに決めたわけやない。

・・・結婚するなら、レティシア王女様って最初から決めてた」


「私と江流皇子は、面識がなかったと思いますが・・・どこかでお会いしましたか?」


どこか懐かしそうな、優しい表情をする江流に尋ねる


「・・・残念ながら、セルディア王国で会ったんが初めてや。

待ちくたびれて催促しに行ったあの場で、レティシア王女に一目ぼれしてしまったんや!

凛とした姿に、藤のように鮮やかな紫の瞳、流れるような黒髪に妹思いの優しいお姉さん!

お嫁に来てもらうなら、レティシア王女様がええなって思ってたから僕ってほんまラッキーな男やわ~」


きゃーっ!と頬を抑える江流がおかしくてつい笑ってしまった


「うんうん、笑顔もかわええなぁ!

東亞国での生活に慣れるまで苦労も多いやろうけど、レティシア王女様のことは僕が守るさかい安心してや。

あ、あと江流皇子やなくて江流ってよんでほしいなぁ。

もしくは、可愛くあ・な・たって呼んでくれてもええで!」


またふざけながらぺらぺらと話し出す姿は、あの怖い噂が後をたたない東亞国の江流皇子とは誰も思わないだろう。

紫詢城についたら案内したいところが~、東亞国の名物はな~と身振り手振り時々扇子を広げながら何事もなかったかのように話しているが、髪から少し覗く耳が赤くなっていることに気づく


「レティシア王女様、聞いてます?」


「はい、江流とのお出かけ楽しみにしていますね」


「きゅ、急に反則やわ・・・」


照れ隠しで喋っていたことに気づかれたこと

急に名前を呼ばれたこと

さらには、自分と出かけることを楽しみにしていると言われキャパオーバーになりついに顔まで真っ赤になった江流は扇子で顔を隠した


おもしろくてつい声をかける


「東亞国の話はもう終わりですか?」


「ちょ、ちょっとタンマや!」


扇子で隠し切れていない耳が先ほどよりも赤いのがわかり、レティシアはくすくすと笑う


私の旦那様は、どうやら照れ隠しが下手みたい。と新しい一面を見つけて少しうれしくなった。





それから江流と他愛ない話をしていたら東亞国領内に入ったようだ


「今回一泊する街はもう少し進んだところにある、花の街っちゅーところや」


「花の街?」


「自然豊かなセルディア王国の恩恵を受ける街で、特に多種多様な花が有名やな。

街全体が季節ごとの花で彩られ、観光地や新婚旅行場所としても有名やで」


窓から少し顔を出すと、江流の言った通り色とりどりの花が咲き誇ってとても美しい街が見えてきた


「きれい・・・」


「宿に着いたら、少し街を見て回ろか」


「いいんですか?」


「もちろん!かわいいお嫁さんとデートしたいしな」


さらっと甘いセリフを言うくせに、なんでさっきは照れたんだろ。と思いながらも、喜んで。とかえすとまた赤くなった。

だから照れるところが違うと思うんだけど。


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