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私の旦那様(推定)は関西弁の皇子様

みなさんこんにちは、こんばんわ

私の名前は、レティシア・セルディア

自然豊かな国、セルディア王国の第3王女で転生者です


過労死したら、王女に転生なんて本の中だけだと思っていた

実際に起こるなんて・・・と、最初は困惑したがこれは楽しむしかないと思い、王女生活を満喫することにしたのだが


転生して17年目の冬の月

セルディア王国の王女は全員、王の間に呼び出された


「セルディア王国の東側に位置する東亞国から書状が届いた

セルディア王国の王女を我が国の皇子、江流に献上されたしとな」


突然の書状、要求に全員が困惑する


「お父様、どういうことですの?!」


「セレナお姉さまのいう通りでございますわ!

あの野蛮な国に、嫁ぐなど絶対に嫌ですわ」


「それに、お相手はあの粗暴で愛人が複数いると噂の方なのでしょう?!

嫁いだところで、文化が異なる国で生活できるなんて思いませんわ!」


1番上の姉が声を荒げると、放心状態だった2番目の姉も冗談じゃないと反発する


「落ち着きなさい、お前たち。

私も可愛い娘をあの国に差し出したくはないが・・・。

断れば、この国の財政だけでなく国際問題までに発展する」


セルディア王国は内陸に位置する小国だ

自然豊かな土地柄のため農業・畜産が盛んで、特産品も多数ある

その商品を周辺諸国に卸すことで、財政を補っている


「東亞国の要求を断れば、売買契約の破棄だけでなく貿易路の閉鎖も辞さないそうだ。

そうすれば、この国の商人達だけでなく多くの者が職を失い、やがてこの国の財政が破綻してしまうだろう」


財政が破綻すれば、国自体の存続問題になる

それを理解しているからこそ、みな押し黙った


そんな暗く重い雰囲気の中、明るい声が響く


「皆さん、そない辛気臭い顔せえへんでも大丈夫ですよ」


「こら!勝手に入るなと言っただろう」


衛兵たちがいきなり入ってきた男たちを慌てて追いかけるが

一番前にいた男は気にせず言葉をつなげる


「東亞国は、でかい国ですしこことは文化がちゃいます。

物騒な噂もたっくさんありますけど・・全部がホンマとちゃいますし、東亞国の江流皇子様と言えば優しくて美男子っちゅう噂ですよ」


そうにこやかに笑う男に、国王は頭を抱えながら声をかける


「使者殿、いきなり入室されたら困りますな」


「すんまへんなぁ。

しかし、いくら待っても返事がありませんからもう一度面会させていただこうと思ったんです」


セルディア王国が英国文化だとしたら、東亞国は中国文化のようだ

服装も前世で見たような服でどことなく懐かしさを感じずっと見ていたら

一番前にいた男と目が合って驚く


「今娘たちに話をしている最中だ

使者殿達には、もうしばらく別室にてお待ちいただきたい」


「そう言われましても、事前に書状も送らせていただいてますし謁見させていただいてから4時間も経過してます。

期限もありますし、こちらとしてもお別れの挨拶ぐらいさせてあげたいのでそろそろ答えを出してもらわんと困りますわ」


懐から出した扇子で口元を隠しつつも、使者の目は笑っていなかった

その姿に恐怖を感じた一番上の姉が声を上げる


「お、お父様!!

私には婚約者がおります!!

それはお父様もご存じですわよね?」


「私も、思いを寄せている殿方がいますので嫁に出すならレティシアかエレナがよいかと思いますわ!」


必死に説得する姉達の姿に、正直あきれてしまった

私とエレナは第二王妃の娘なのだが、エレナはまだ12歳になったばかりだ

わが身可愛さに私はともかく、まだ幼い私の妹の名前を挙げるなんて最低


使者たちや大臣たちが見ている状況で、この痴態

お父様はさらに頭を抱えていて顔色も悪くなってきていた


「お父様、そのお話私がお受けします」


「レティシア・・・」


「その代わり、エレナに私の騎士をつけ18歳になるまで自由に過ごさせてください」


「レ、レティシアお姉ちゃん・・・」


そっとドレスを掴むエレナの手は、震えていた


「わかった、お前の望みを叶えよう。

すまないな、レティシア・・」


「私も17です、いつか国のために嫁ぐと思っていました。

それが今日だっただけの話です」


「東亞の使者殿、我が国の第三王女レティシアが江流皇子のもとに嫁ぐことになった。

・・よろしく頼む」


「かしこまりました。

皇子も喜ばれるかと思います」


先ほどまでよくしゃべっていた使者は満足そうにしている

その後ろから、これまた美しい使者が話し出す


「東亞国の衣装をお持ちしました。

花嫁様の準備ができ次第、出発いたしましょう」


「かしこまりました、では私の部屋を案内します。

使者様たちにも別室にてお茶をご用意いたしますので、ご一緒ください。

エレナ、ついておいで」


お父様に頭を下げた後、部屋へと戻り準備を進める

渡された服は絹でできており、とても軽く肌触りが良い

淡い紫に綺麗な刺繍が施されており、とても華やかだ


「いかがでしょうか」


侍女が持ってきた鏡の前でくるりと回ると

ふわりと軽やかに揺れる絹から藤の香りがする


「はい、とても気に入りました。ありがとうございます」


「では、次に御髪を整えますのでおかけくださいませ」


慣れた手つきで髪をまとめていく

てきぱきとこなしていく侍女たちの手を、思わずじっと見つめてしまう


「あの、この服はどなたが用意してくださったのですか」


「江流皇子様でございます」


「江流皇子様はどんな方ですか?

背格好や性格でも何でも構いません」


「花嫁様と同じ黒い髪に赤い瞳をお持ちの美男子でございます」


「噂では、愛人が複数いたり野蛮だと噂されておりますがそんなことはございません。

階級や老若男女問わず、お優しい方でございます」


噂もあてにならないのね、と思いながら疑問が浮かぶ


「黒い髪に赤い瞳・・・」


先ほどの関西弁の使者も同じ色を持った美男子だったな、とふと思い出した


「藤の花のようにお綺麗です、花嫁様!」


「江流皇子様も喜ばれるに違いありませんわ!」


考え事している間に、終わったようで鏡を見ると長い髪をアップにし藤の花を模した簪をつけていた

すこし動くと、簪からしゃらり、と音がなりとても綺麗だった


「着つけていただきありがとうございます」


「いえ、花嫁様のご支度のお手伝いが出来て光栄でございます」


「では、皇・・・・使者様達を呼んでまいりますので、少々お待ちくださいませ!」


おほほほ!といって慌てて出て行った侍女は今皇子、と言いかけなかっただろうか。

なんだか嫌な予感がしつつもしばらく待つことにした。





応接室に案内された使者達は、各々くつろぎながら時間を持て余していた

江流がソファーに腰かけると、待っていたかのように青州が口を開く


「くれぐれも、うかつな行動はおやめくださいと言ったではありませんか!」


「青州、そう固いこと言わんといてな。

自分の嫁が誰になるか気にならん男はおらんやろ?

それに、自分があの時行かんかったらまだ話し合いは続いてたで」


青州と呼ばれた長髪の美少年は、目の前の男をにらみつける


「確かにそうかもしれませんが、ここは東亞国ではありませんし今の貴方は使者の一人なんですよ?

彼女が名乗り出なかったら、あの場をどうするおつもりだったのですか・・・」


「江流様がお目当ての女性を連れ帰らないわけないっすよ!

あの場もうまくまとまったし、細かいことはいいじゃないっすか!

ね、青州さん!」


「お、さっすが周英はいい事ゆうな!」


青州をなだめる周英も美しく、まるで大型犬のように人懐っこい笑みを浮かべている


「いやー、別婿さんやったやろ?

国から持ってきた絹も簪も絶対似合うに決まってるわ~」


青州は気づかれないように、溜息をついた

幸せそうな顔をしながらのろけるこのちゃらんぽらんを、誰が東亞国の江流皇子だと思うだろうか。

長年付き添ってきたが、この男の考えがいまだに読めず頭を抱えることが多い。


「もうなんでもかまいませんから、せめてこの国を出るまで大人しくしておいてくださいよ」


青州は、この馬鹿2人に今何を言っても無駄だ。と早々に諦めてお茶とお菓子を楽しむことにした



日が高くなったころ、応接室の扉がノックされる


「失礼いたします。

花嫁様のご支度が完了いたしました」


「お見立て通り、藤の花のようなお美しいお姿でございます!」


レティシアの支度をした侍女2人は、満足そうに微笑んでいた


「そやろそやろ?

じゃあ、馬車までお連れするからはよ国に帰ろか!」


さっさと部屋を出ていく江流の後を追いかけていく青州


「ちょ、さっきうかつな行動をするなといったばかりだろうが!!!」




窓側の近くにある椅子に腰かけ、景気を眺める

転生した17年の中で、一番過ごしたのはこの部屋だっただけにどこか寂しく感じた


「・・・」


「レティシア様、少しよろしいでしょうか」


「ローランド卿」


ローランド卿は、幼い頃から私に仕えてきた護衛騎士だった

寡黙ながらもとても情が深く、私にとって兄のような存在だった


「国のため、エレナ姫様のためとは言えレティシア姫様が犠牲になる必要があるのでしょうか。

私は貴女様の剣であり盾でもあります。

貴女が一言命令してくだされば、私は・・・!」


だからこそ、今の状況が納得できないのだろう。


「ローランド卿、私は・・・」


跪くローランド卿に声をかけようとしたとき、大きな音を鳴らしながら扉が開く


「花嫁様、支度できましたら出発しましょか!」


入ってきたのは先ほどの使者たちだった


「姫様の私室にノックもせずに立ち入るなど、無礼だぞ!!」


「そないなこと言われても、支度ができたって呼ばれてきたんやけど?」


「お待たせしてすみません、東亞国の使者様達」


「レティシア姫様!」


声を荒げるローランド卿に向き直る


「ローランド卿、最後の命令です。

セルディア王国第4王女エレナの護衛騎士に任命します。

いついかなる時も、エレナの剣となり盾となりなさい」


「・・・拝命、いたします

この命に代えましても、エレナ王女様をお守りいたします」


「ありがとう、ローランド卿

エレナを、お母様をお願いね」


「では、馬車までご案内します」


差し出された使者の手をとり、部屋をでて城門に向かう


「あの騎士さん、えらい忠誠心をお持ちのようで」


「ローランド卿は、私が物心つく前から護衛騎士として側にいてくれました。

私にとっては年の離れた兄のようなものです」


「へぇ、そうなんですね」


自分から聞いたくせに、面白くないと顔に書いている使者に思わず笑ってしまう

先ほどの話を聞かれていたのだろう


「護衛騎士としては許されないことですが、情が深い故の失言です

・・・・私は良い従者に恵まれました」


あの手を取って逃げることもできたけど、エレナやローランド卿に迷惑をかけたくなかった

それに、私の旦那様(推定)は



「ええ従者やと思いますけど、あんまり信用しすぎたらあかんと思います。

男なんてみーんなオオカミやって話聞いたことありません?

花嫁様はごっつ綺麗なんやから、もっと警戒心をもたなあきませんで」



ぷんぷん、と聞こえてきそうなこの関西弁美男子が想定通り東亞国の江流皇子だとしたら



「そうですね、では手をはなしてもらってもいいですか?

警戒心をもって離れて歩きますね」


「あーーーー、ちゃうちゃう!!

俺は超!安心安全の男やから、側にいても全然大丈夫やで!

というか側にいとかな逆に危ないわ!」


使者様は慌てながら手が離れないように、ぎゅっと握りしめる

その姿がなんだかかわいく見えて、また笑ってしまった



この国を離れたとしても、楽しい結婚生活が送れると思ってしまったのだ。

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